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16 隣国王子は逃がさない

オリバーとヘイゼルがサロンに着くと当時に、リィンとアレックスが飛び出してきた。


「あら~! ヘイゼルさんじゃないですかぁ~! 最近あんまりお話できなかったから、寂しかったですわぁ。あたしたちもご一緒していいかしらぁ?」

「ア、アレックス嬢。ええと、私は構いませんが……」


アレックスの突撃にたじろぎつつ、ヘイゼルがオリバーに視線を向ける。

オリバーは笑顔でアレックスの肩に手を置いた。


「……アレックス。こっそりはどうした?」

「密室に入られちゃったらこっそりも何もないでしょうが。あんた馬鹿なの?」

「……仕方ない。同席を許可しよう」


お互いだけに聞こえるようにヒソヒソ話す二人。その距離の近さにヘイゼルは、やはりアレックスの本命はオリバーなのかもしれないと思った。

……ほんの少しだけ、胸がざわめいたのはどうしてだろう。

ヘイゼルは自分の胸に手を当て、首を傾げた。


「さ、さあさあ! せっかくですから皆でお茶にしましょう!」


リィンが取り仕切り、全員をサロンに押し込む。ついでにお茶を入れ、オリバーが用意していた大量の茶菓子をこれでもかと大皿に盛りつけた。お好きな物を食べ放題スタイルだ。


「あたしスコーンにしよっと」


アレックスがスコーンを手に取り、クロテッドクリームを大量に乗せてかぶりつく。それを横目にリィンはフィナンシェを3つほど自分の皿へ取り分けた。


「君たちは遠慮がないな……」

「美味しい物は皆で食べてこそですわよぉ~? ヘイゼルさんは何がお好きかしら?」


しれっとヘイゼルの好みを聞き出そうとするアレックス。オリバーはその作戦にまんまと乗せられ、アレックスからヘイゼルへと興味を移した。


「わ、私はマドレーヌが好きですね」

「そうか! では、次回はもっと美味しいマドレーヌをたくさん用意しよう!」

「え? じ、次回、ですか……?」

「嫌かい?」

「いえ! そんなことはありませんが……」

「では、約束だ」


キラキラの王子様スマイルで接近されたヘイゼルは、しっかりと次の約束をさせられた。

獲物と捕食者にしか見えない構図に、リィンとアレックスが同情する。


「これ、逃げられないわね」

「オリバーって本命には粘着質だったのね。うざいわ」

「そこ! 悪口が聞こえてるぞ!」


三人の取り繕わない関係を目にして、ヘイゼルは目をぱりくちさせた。


「み、皆さん、仲がよろしいのですね」

「まあ、あたしとオリバーは幼馴染みたいなもんだしね~」


そう言いながら、アレックスが紅茶でスコーンを流し込む。


「……アレックス嬢とオリバー様には、婚約のご予定が?」


ゴフッとアレックスがむせた。オリバーがずるりと椅子から落ちかける。


「「冗談じゃないっっっ!!」」


奇しくも揃ってしまった一言に、アレックスとオリバーが互いを嫌そうな目で見た。


「こーんな俺様な王子様なんて絶対嫌よ! それに、あたしには世界一愛する人がいるんだから!」

「俺だってこんな性格捻くれたヤツはごめんだ!」


ぎゃいぎゃい言い合うアレックスとオリバー。だがそれは傍目には仲が良さそうに映るのだった。

戸惑うような視線を向けるヘイゼルの手を、オリバーがギュッと握る。


「お、俺が恋をしているのは……君だ!!」

「えっ……?」


顔を真っ赤にしながらの、オリバーの必死な告白。

リィンとアレックスは、おぉ~! と素直に感動した。頑張れ頑張れと小さな拳を作って見守っている。

――見つめ合う、オリバーとヘイゼル。


「あ、あの、わたしっ……!」


真っ青になって慌てふためくヘイゼルに、オリバーが優しく語りかけた。


「急に驚かせてしまってすまない。ただ、どうしても君に伝えたくて……」

「で、でも、あの、そのっ! わ、わたしでは、ダメです!」


きっぱりと言い切られたオリバーが顔色を無くす。


「……君にはもう、愛する人がいるのか……」


今にも消えてしまいそうな呟きに、ヘイゼルがぶんぶんと首を振る。


「ち、違いますっ! そんな人いませんっ!」

「……では、俺が生理的に無理ということなんだな……」

「そそそ、そうでもありませんっ!!」


かわいそうなくらい、ヘイゼルが首振り人形のようになっている。

オリバーの往生際の悪いフラれ男っぷりに呆れたアレックスとリィンが割って入ろうとすると――


「わ、わたし……私は、実は……女なんですっ……!!」


ヘイゼルの叫びに、オリバー、リィン、アレックスが硬直した。


(((あ……そういえば、彼女の性別を知ってること、話してなかった……)))


騙していてごめんなさいと泣きながら謝るヘイゼル。

同性愛者だと誤解されてしまったオリバーは、大急ぎでこれまでの経緯を事細かくヘイゼルへ説明したのだった。


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