15 男装女子の憂鬱
ヘイゼルは、ふと窓ガラスに映る自分の姿を見てため息をついた。もういい加減、吹っ切れたと思っていたのに。
「私は、いつまで……」
いつまで、こんなことを続けるのだろう。性別を偽ることは、自分が望んだことではない。
自分がこうなったすべての原因はハワードにあるのだが――彼には何一つ罪はなかった。
数日前にハワード、イアンとちょっとした衝突をして以降、ヘイゼルは一人で行動する時間が増えた。
ハワード達とはケンカをしたわけではないが、結果的にギクシャクするようになったので、今は距離を置いた方がいいと思ったのだ。
ぼんやりと窓ガラスを眺めながら思考にふけるヘイゼル。
するといきなりポンと肩を叩かれ、飛び上がって振り返った。
「あ、すまない。おどかすつもりはなかったんだが……」
そこにいたのはオリバーだった。最近、よく話すようになり、気さくに声をかけられるようになった。
ヘイゼルにとって、友人として親しくしているのはハワードとイアンくらいだったので、新たに親しくしてくれるオリバーには好意を感じていた。
オリバーはハワードと同様に女性によく声をかけるが、自分に興味のない女性を追い回すような真似はしない。来るもの拒まず去る者追わずといった姿勢にヘイゼルは感心していた。
比較する対象がハワードではオリバーに失礼かもしれないが。
「し、失礼しました。少し考え事をしていたもので……」
「……何か悩み事かな? 俺でよければ相談にのるが」
「いっ! いえいえ! そんな、王族の方に相談など……!」
「ハワード殿とは常に一緒にいるのに? 同じ王族でも俺では頼りないということかな?」
「まさか! けっしてそのようなことはっ!」
「では、せっかくだからお茶にしよう。ちょうど俺の専用サロンを用意してもらったんだ」
にこりと微笑み、ヘイゼルの肩に手を回すオリバー。
それを物陰から見ていたリィンとアレックスは、こそこそと囁き合った。
「オリバー様、手馴れてるわね……」
「上手いこと丸め込んじゃって……ヘイゼル嬢かわいそう。リィンも危ないからオリバーと二人きりになっちゃダメよ?」
「はいはい」
オリバーの専用サロンへ移動する二人をこっそり尾行するアレックスとリィン。覗きのような行為に罪悪感を覚えつつも、若い男女を二人きりにするのはよろしくないだろうとオリバーに事前に許可を得た上での行動だった。
最近、ヘイゼルが物思いにふけっていることが多いとオリバーに相談されたのが数日前のことだ。
ハワードやイアンと距離を置いているらしいことはリィンたちも気づいていたので、おそらく仲違いをしたのではないかと三人の意見が一致した。
そこで、オリバーはヘイゼルを慰めたいと言い出し、二人きりになるのはまずいのでリィンとアレックスにこっそり様子を見ていてほしいと頼んだのだ。
「さすがにここからはこっそりってわけにはいかないわよね?」
「二人がサロンに着いたら突撃しましょ」




