ヒロイン追加のお知らせ
第4話です!
よろしくお願いします!
「おいスピカ、煙、出てるぞ煙!」
朝。窓から差し込む日差しとともに目を覚ました俺――フィータル・エレン・アルクスは、焦げ臭さに思わずベッドから飛び起きた。
やっとホームレス生活から抜け出せた俺は、スピカと同居を初めて1週間ほど経った。
だいぶ生活には慣れて...........きていなかった!!!!
台所からは、フライパンを振る音と、なにやら必死なスピカの声が聞こえる。
「ま、まだいける! これは……ちょっと黒くなっただけの卵焼き!」
「それはもう炭なんだよ!お前は“黒焦げたまご錬成術士”か!」
駆け込んだキッチンでは、スピカが真っ赤な顔でフライパンと格闘していた。朝から元気なのはいいけど、元気が火力に変換されるのはどうなんだ。
「今日はアルクスにちゃんとした朝ごはんを食べさせたいって思って、頑張ったんだからね!」
スピカはエプロン姿のままふんっと胸を張った。まるで失敗してないみたいな顔で。
「その気持ちはありがたいけどさ……料理スキルが反映されてないのが問題なんだよ」
結局、焦げた卵焼きと、かろうじて焼き目だけで済んだパンを食べながら、俺たちはいつものように朝食を取った。
ちなみに、スピカが作ってくれたお茶は完璧だった。なぜそこだけ安定してるのか謎だが。
「それでさ、今日から庶民学校では“図書館実習”が始まるらしいよ?アルクスも見学に行く?」
「図書館、か。静かな場所は好きだぞ。……少なくとも、ここよりは静かそうだしな」
「え、なにそれ、失礼!」
ムッとするスピカを横目に、俺はパンをかじった。
庶民の暮らしは予想以上に騒がしくて、でも――なんというか、心地よい。
***
学校の昼休み。俺は図書館へ足を運んでいた。噂によると、ここには「静かなる本の番人」と呼ばれる凄腕の生徒がいるらしい。名前は――リューシャ。
入ってすぐに視線を感じた。棚の向こう、ひっそりと座って本を読んでいる銀髪の少女がいた。
「……君、転校生のアルクスだろう」
彼女は本から顔を上げると、こちらを一瞥した。落ち着いた声に冷たい雰囲気。まるで氷のような佇まいだ。
「噂通り、頭のてっぺんから庶民感が抜けてないな」
「いや、悪口だよなそれ? 初対面の挨拶がそれ?」
「でも……あのスピカと暮らしてるなら、すぐに慣れるかもしれないな。あれはもう、騒音レベルの生活音だ」
図星だった。
「……君も、スピカのこと知ってるのか?」
「もちろん。彼女は“庶民界のトラブルメーカー”として有名だからな。けど、少しだけ……羨ましい」
リューシャは静かに、しかし確かにそう言った。
その目に映るのは、本ではなく俺だった。氷の奥に隠された熱。これは……ちょっと、面倒な気配がする。
でもまぁ、本の番人と聞いていたから少しビビっていたけど、なんだかんだ良い奴?っぽいよな.....
***
その日の帰り道、家の前で何かを待つように立っていたのは――元気そうな女の子だった。
「アルクスーっ!」
「うわっ、誰だお前!?」
「隣の部屋に住んでるミーナだよー。自己紹介、忘れたの? ほら、前にカップ麺貸したじゃん!」
「ああ、あのときの……って、あれは貸すっていうか、勝手に鍋ごと置いてっただけじゃ……」
「ま、それは置いといて! 今度、スピカちゃんと料理勝負するから、ジャッジお願いね!」
「勝手に話が進んでるーッ!?」
ミーナは明るく笑って、まるで旧知の友人のように俺の腕を取ってきた。スピカがその場にいたら確実にむすっとしてただろう。
そして玄関を開けたそのとき――
「おっかえりー! 晩ごはん、今日は……たぶん成功してるよ!」
出迎えたのは、三角巾をつけたスピカだった。包丁を手にした彼女の後ろには、湯気を立てる大鍋。
「待って、なんで鍋から火が出てるの!?」
「ちょっとだけ、熱しすぎただけだからっ!」
今日もこの家は、騒がしく、そして――なんだか少しだけ、幸せだった。
(つづく)
第4話、どうだったでしょうか?
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次回も楽しみにー!