元公爵令嬢とお荷物、出会う(2)
「まずは話をしたいわ。どこか、静かな場所を知りませんこと?」
男は悩んだ末に、街中の広場にエヴァンジェリンを案内した。
レンガ造りの広場は、昼間には人々の憩いの場として親しまれているが、夜になれば人通りはすっかり絶える。
高い木が少ないので星が良く見え、月明かりだけでも辺りが見渡せるほど明るい。
エヴァンジェリンはベンチに腰掛けると、男にも隣に座るよう促した。
「話がしたいと言ったでしょう。座ってくださる?」
「はあ……」
一人分の隙間を開けて男が座ると、エヴァンジェリンは早速訊ねた。
「まずあなたの名前を聞いてもよろしくて?」
「あ……アレン、です。今はフリーで……少し前まで、勇者ニコラスのパーティーに所属していました」
徐々にアレンの口元に自嘲の笑みが浮かぶ。
「所属……していたと、思っていたのは俺だけで……役立たずだったから、追い出されたんです」
「あらそう」
どうでもいいと言わんばかりの返事に、さすがにアレンも気色ばんだ。
「そんな軽々しく」
「冒険者ということは、あなた、お金の使い方は知っていますわよね?」
「は?」
「冒険者になる方法とか、働き口を見付ける方法でも構いませんわ」
「ちょっと待ってください。なんなんですかあなた。貴族の遊びに俺を巻き込まないでくださいよ!」
「真面目な話をしておりますわ」
立ち上がろうしたアレンを引き留めて、エヴァンジェリンはアイテムボックスから取り出した金貨を見せた。
「アレンさん、あなた、まだ冒険者なのですわよね? なら、お金で雇うことが出来ますわね?」
「そりゃ、そうですけど……」
「単的に言えば、今わたくしには、わたくしに一般常識を教えてくれる信頼出来る相手が必要なのですわ」
腰を浮かせたままぽかんと口を開けているアレンに、エヴァンジェリンはにっこりと、だが圧力のある微笑みを見せた。
「詳しく説明しますから、お座りになって?」
システムや世界観などは基本的にご都合主義で適当に進みます。