槍使い、左遷される(1)
ブルタヴァ国、王都。
「は……、ペトシーン、でありますか?」
「隣国と国境を接した重要な地域だからな。天才に相応しい場所だろう」
ローラン・ブラニークは慇懃に辞令を受け取って、騎士団長の部屋を出た。
「ペトシーン、ね……」
騎士団の詰所に戻る途中に、酒場の中に兵士の鎧がちらりと見えた。
まだ日も高い時間である。
「ちっ……」
辞令には王家の紋章が入っている。
詰所の門をくぐると、ローランを慕う部下が集まってきた。
「連隊長どの、いかがでしたか。騎士団長のお話というのは……」
ローランが投げ捨てるように辞令を見せると、部下たちは口々に文句を言い立てた。
「ペトシーンだなんて!」
「あんな辺境、魔物だって出ないじゃないですか!」
「そもそも住んでる人間だってろくにいない地域ですよ!」
「つまり、そういうことだよ」
ローランは騎士を志した日のことを思い返していた。
強い騎士になって、自分のように困っている人を助けるのだと意気込んでいたのはいつまでだったか。
憧れの騎士団に入団して、真っ先にやらされたのは先輩の酒を買いに行くことだった。
仕事中であることに疑問を呈してみたが、先輩たちの嘲笑にさらされた。
スリを捕まえれば、袖の下を渡された他の兵士が逃がしていた。
商人の禁制の品を取り締まろうとしたら、いつの間にか報告書はうやむやになっていた。
ローランは強くなろうと思った。
槍を振るい、魔物を討伐し、戦果を上げ、やがて小隊を任され、中隊を任されるようになった。
せめて自分の率いる騎士たちには、正しい騎士道を持ってほしかった。




