元公爵令嬢、キレる(2)
「すみません、美味しくなかったですか?」
「今日も美味しいですわよ! そういうことではなく!」
ハンカチで口元をぬぐうと、エヴァは鍋を指さした。
「サラ、あなた聖女としての力は失ったと言ったではありませんの! だったらこの料理はどういうことですの!?」
「料理?」
アレンはなるほどとうなずいた。
「確かに、サラの料理を食べると体力がみなぎるというか、元気になる感じがするよね」
「アレン! 他人事のように言っていますけれど、あなたもですわよ!」
「えっ」
エヴァは自分の冒険者証を突き出して言った。
「ずっと言おう言おうと思って機会を逃してましたけど、あなた、わたくしになにか魔法をかけていますでしょう!?」
「魔法……? …………あ」
「あ、じゃありませんわ!」
エヴァの冒険者証はすでにDランクになっている。
「あなたがた二人のおかげで、わたくしどんどんレベルアップしてしまいますわ!」
ステータスに表示されるレベルはすでに30を超えている。
冒険者になってひと月足らずの新人にしてはかなりの早さだ。
「もっと苦労すると思っていたんですのよ! それなのにこんな快適な旅が出来てしまって……もう他の誰かとパーティーを組める気がしません!」
このエリアも通常であれば時折大雨に見舞われる地域だった。
だから街でも雨対策の装備を追加してきたというのに、エリアに入って数日、小雨程度の雨が一度降ったきりだ。
「サラ、あなた、なにか幸運のスキルがあるのではなくて?」
じっとりねめつけられて、サラは視線を逸らす。
「ええと……聖女なら、神の加護があるとかないとか……?」
「実は聖女の力も戻っているのではありませんの? 使えないと思っているだけで」
「ど、どうなんですかね……。やっていないのでわかりませんが……」
エヴァと目が合うと、アレンも居心地が悪そうに身じろぎする。
「あなたも、わたくしになんの魔法をかけたのか、包み隠さずお話しなさい」




