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元公爵令嬢、冒険者になる(2)

翌朝、アレンとギルドを訪れたエヴァンジェリンは冒険者登録として、職業適性検査を受けた。

「あなたの適正は剣士ですね」

ギルド職員に言われるまま水晶玉に手を置くと、職員は淡々と小さなカードに剣士と書き込み、冒険者証なるものを渡してくれた。

カードにはGの字が書かれていた。

「最初に登録すると全員Gランクになります。ひとつふたつ簡単な依頼をこなせばすぐにFランクになれるので、実質Fランクが最下位といってもおかしくありません」

しげしげと冒険者証の表と裏を矯めつ眇めつしていたエヴァンジェリンに、さらにギルド職員が訊ねる。

「登録名はどうされますか?」

「名前?」

「ええ。冒険者として登録するお名前は、人によっては本名ではない名前にしたりしますから」

家名第一の世界で生きていたエヴァンジェリンにとっては、名前を変えるというのはとても新鮮なことに感じられた。

けれども、考えてみれば自分自身も、すでに実家の姓は名乗れない身だった。

「……エヴァ。エヴァでお願いしますわ」

こうしてエヴァンジェリンは冒険者エヴァになった。

貴族の嗜みとして剣術の経験もあったので、剣士というのは存外しっくりきていた。

そのままアレンとパーティー登録を済ませ、武器屋で装備を整える。

エヴァの財布はすっかりアレンが管理している。

中身はまだ十分にあったけれど、アレンは武器屋でもしっかり価格交渉をして、エヴァの使いやすい剣や篭手など細々したものを揃えた。

「やっぱりわたくしには金銭管理をしてくれる人が必要でしたわね」

使った金額を帳面に書き留めるアレンを見ながら、エヴァはアイテムボックスの中を確認する。

「お金の使い方も覚えてきたとは思いますけれど、いまだに適正な価格というものがわかりませんもの。わたくし、もしこの宿が一泊金貨一枚と言われたら、言われるままに払っていましたわ」

「前のパーティーでは出来ることはなんでもやっていたからね。金勘定とか武器やアイテムの管理とか、そういうのって意外と面倒だし、苦手な人も多くて」

すっかりエヴァと打ち解けたアレンは、自分の事情も簡単にエヴァに説明した。

魔王や魔物もほとんど未知の存在だったエヴァにとって、勇者の価値も勇者パーティーの重みもわからなかったので、やっぱり「あらそう」と言っただけだった。

「その人たち、勿体ないことをしましたわね」

「え?」

「だって、あなたのいう面倒なことを、あなたがやっていたのでしょう? わたくしにはまだパーティーやギルドのシステムはよくわかっていませんけれど、貴族のお茶会だって、たった半日のために何日もかけてテーブルの花を選んだり、カーテンの色やお茶の種類、お菓子だって選んで決めないといけないのですもの。万全の状態にするには入念な下準備が欠かせませんわ。そういうことではありませんの?」

アレンはいつも、仲間たちがすっかり酒に酔って寝た後に、薄暗い部屋で荷物の確認をしていた。

仲間たちが快適に旅をするためにやっていたことが、仲間たちからは無駄だと切り捨てられたのに、全く違う生き方をしていた相手から理解されるなんて思ってもみなかった。

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