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公爵令嬢エヴァンジェリン、婚約破棄される(1)

「エヴァンジェリン・ラ・ヴィルヌーヴ! お前との婚約を破棄、国外追放する!!」

舞踏会という衆人環視の前で高らかに宣言したのは、モンテスパン皇国のフランソワ・スフィヤル・ファグラダル皇太子殿下であった。

皇太子の横に寄り添うマリーナ・カトラ子爵令嬢は不安そうな顔でフランソワとエヴァンジェリンを見比べている。

カトラ子爵家は没落寸前だと言うのに、上等なシルクやレースを惜しげもなく使った最高級のドレスや豪華なジュエリーは、彼女に金をかける誰かがいることを示唆している。

そのドレスが皇太子の目の色と同じ鮮やかな青、首元に輝く宝石は皇太子の髪色と同じ燃えるようなオレンジとくれば、"誰か"が誰であるかなど一目瞭然であった。

一方のエヴァンジェリンのドレスや宝石には、オレンジや青は使われていない。

皇太子の衣装にも、エヴァンジェリンの自慢である翡翠色の瞳の色も、玉虫色に輝く黒髪の色のどちらも使われていない。

代わりに、首元を飾るスカーフ留めの宝石は、マリーナの瞳と同じ淡いローズクォーツが使われている。

つまり、そういうことであった。

居並ぶ貴族は、かねてより噂されていた、フランソワの本命が明言されたことに興味本位で成り行きを見物していた。

自分が巻き込まれない醜聞ほど楽しい見世物はないのである。

一方のエヴァンジェリンもただ言われるだけではなかった。

「何故わたくしが咎められなければなりませんの! もとはといえば、そこの身の程知らずが殿下と親しくしたことが悪いのですわ!」

「だからといって、暴力に私物の破壊、他家の令嬢を使った暴言卑語の数々、許せるものではない!」

「わたくしがそのような行為を行った証拠があるとでも?!」

「証拠ならある!」

人垣から進み出て来たのは、エヴァンジェリンのクラスメイトかつ腰巾着の貴族令嬢たちだ。

「あなたたち…!」

「わたしはエヴァンジェリン様に命令されて、マリーナ様の教科書を破り捨てました」

「嫌だと言ったのに、家を楯に命令されて……マリーナ様のドレスにインクを…」

次から次へと暴露される嫌がらせの内容は概ね事実であった。

貴族の子女が通う学校で、人目を忍んで婚約者と逢瀬を重ねるマリーナの存在を知ったエヴァンジェリンは、あの手この手で嫌がらせを重ねていた。

それでも皇太子と会うのをやめようとせず、皇太子自ら逢瀬の場を用意しては、公の婚約者であるエヴァンジェリンを蔑ろにし続けてきた。

「そしてつい先日のことだ。お前はマリーナを階段から突き落とし、殺そうとした!」

「あれはそこの泥棒猫が勝手に足を滑らせただけのこと! 結局"殿下のお友達"が風魔法で助けたではありませんか! 怪我のひとつもないのに大袈裟な! 本当に突き落とすなら校舎の屋上から突き落としますわ!」

エヴァンジェリンの苛烈さに貴族たちも呆れた囁きを隠さない。

「お前のような底意地の悪い女は妃にふさわしくない! 今この時をもって、マリーナが私の婚約者となる! 未来の皇太子妃ならお前の言う身分もマリーナのほうが上だ!」

観客と化した貴族たちからどよめきが上がる。

そこへずっと皇太子の横にいたマリーナが、愛らしいピンクの瞳に涙を溜めて一歩進み出た。

「エヴァンジェリン様! どうか一言でいい、これまでのことを謝ってもらえたら、わたしはあなたのことを許します!」

エヴァンジェリンの手に握られた象牙の扇がみしりと音をたてた。

「ああ、マリーナ、なんて慈悲深い」

「フランソワ……」

見つめ合う二人は完全に恋物語の主役だった。

「この、泥棒猫!!」

振り上げた扇でマリーナを打ち据えようとしたが、それは皇太子の側近に止められた。

「ヴィルヌーヴ公爵令嬢、あなたにはこれから正式な沙汰が下る。屋敷で謹慎するがいい」

「あなた……! たかが侯爵子息の分際で、わたくしに指図する気ですの!?」

「あなたこそ、罪人が皇太子に逆らうつもりか」

「罪人……!?」

いつのまにか騎士が取り囲み、エヴァンジェリンは抵抗むなしく夜会から追い出され、小さな馬車で公爵邸へ追い返されたのだった。

あんまり深いことは考えずにざっくり更新していきます。

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