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  作者: 櫻美
3/32

その三

店から出て、再び家に帰ってくると

明美は少し酔ったらしくソファーにどかっと座り

そのまま動こうとしなかった。


「水持ってこようか」


「うん、ほしい」


「そんなにお酒弱かった?」


呑んだお酒はジョッキ二杯分と

あんまりたくさん呑んだようには

思わなかったが、目が今にも閉じそうなぐらい

とろんとしており、ほっぺも薄ら赤い様に見える。

水が入ったコップを渡すと何も言わないで

それを手に取り一気に飲み干した。

無言で飲み終えたコップを受け取りキッチンに

行こうとしたら、腕を優しく掴まれた。

お酒を身体に取り入れた明美の手は熱く

掴んだ私の腕まで熱を伝えてくる。

腕を掴んだまま、そして黙ったまま

足元を見ていたので「どうかした?」と聞くと

下を向いたまま何か答えた。だが、小さい声で

聞き取れず、要領を得なかった。

再度私から呼びかけるとやっと顔を上げて

声を出さないかわりに手で招かれたので

仕方なく明美の近くに寄り屈み「どうした?」と

聞くと、そっと目を閉じキスされた。

顔を近づけた瞬間に体温を感じ、アルコールの

匂いがぷんと私の鼻についた。

掴んだ手を離して私の首に絡みつく様に

腕を回し、ぎゅっと力が入る。

暫くそのまま好きにさせて置いたが

寝息をたてて、私の胸に体を預け

ぐったりとし始めたので寝室まで運び

布団を掛けてそっと扉を閉めた。

静まり返ったリビングに戻ってきた私は

そのままベランダに出て煙草に火をつけた。

煙草を吹かしながら、「あぁ、消えたい」と

激しく思った。生まれ変われるなら次は、そうだな、

鳥がいいかな。猫も自由でいいな。いや、

人間以外ならもう何だっていい。服に着いた

この、ボタンでもいい。

時刻は午後七時半頃。ベランダから

空一面に果てしなく広がる暗闇の空を見ていると

不安な気持ちがどことなく込み上げてくる。

だが、夜空で星が輝くのは好きだった。

昔、まだ私が小学生だった頃のこと

叔母の家によく夏休みになると遊びに行った。

周りは何にもなかった。車が無いとどうにも出来ず

コンビニ一つ行くだけでも苦労するような所で

辺りは田んぼや山ばかりで街頭も無いので

夜になるとすっかり自分が何処にいるのか

方向さえも判断ができず、真っ暗闇に包まれ

まだ、子供だった私は怖くて仕方がなかった。

だが、叔母の家で退屈にしていた私を気にかけ

叔母が

「つまんない顔しないで、見てみな。」と

縁側でうつ伏せになり寝そべっていた私の頭を

優しく撫で、促された。

どうせそんなもの見たってと思っていた私は

空を見上げた瞬間に、幼いながらに凄く感動した。

真っ暗な空の一面に細かな結晶が散りばめられ

一つ一つ、違う光り方をする。

飽きずに、暫く空に釘付けになったもんだ。

それが、都会に染まってしまうとすっかり

空を見る事さえなくなってしまった。

思い出して見上げてみても都会の空は真っ暗闇で

見たって何にも価値のあるものでは決してない。

都会の空の下、ベランダで一人涼みながら

田舎を恋しく思った。明美には悪いが都合をつけて

一人でまた、同じ空を求めて旅行にでも行こうと。

煙草を吸い終え灰皿を見ると、今朝片付けた筈の

灰皿には吸い殻がたんまり溜まっていた。

少し、涼み過ぎたらしい。部屋に戻り

時間を確認したところまもなく午後十時に

なろうとしていた。明美はまだ眠ったままだった。



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