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  作者: 櫻美
14/32

その十四

あの日の事は今でも忘れない。

「秀之ー!降りてこい!早くしろ!」

二階に居た私を一階から親父が大きな声で

呼びつけるので慌てて降りた。

一階に降りて二人の様子を目にした私は

一目で只事じゃないとすぐにわかった。

母は顔を両手で覆い泣き崩れ力が入らなかった。

親父は呆然と立っていたが、私の姿を見るなり直ぐに

訃報を知らせた。親父の側には佳代の姿があった。

私の視線が佳代の存在を認めた時、親父が

「佳代ちゃんが知らせに来てくれたんだ。」

それだけ言うと側で泣き崩れる佳代の頭を

優しく撫でた。私達は佳代を連れて家へと向かった。

家の前は警察やら救急車やら騒ぎを嗅ぎつけた

野次馬ばかりで騒がしかった。

両親は聡太の母と父の元へ行き

私と佳代を残して行った。


「ねぇ、ひでちゃん。手を握ってて。」

返事こそしなかったがすぐに強く握りしめた。

佳代は俯いて枯らす事なくひたすら涙を流した。

私達は暫くして家へ帰され両親の帰りを

私の家で二人で待つ事になった。

佳代は今もなお泣き続けた。私自身は

実感が無く、この間最後に会った日の事を

何度も何度も繰り返し思い出していた。

小さい頃からずっと一緒だった聡太は

最後の最後まで私に心を開かなかった。

辛いと言わなかった。苦しいと言わなかった。

私に何も告げずにこの世を去ったと言う事が

何よりも証拠となり、私が思い描く親友と

呼ばれるものとあまりにも大きくかけ離れていて

この数十年、ただ群れていただけだと思うと

悲しくて堪らなかった。最近ではすっかり

顔を合わせる事もなかったが、心が疲れるときっと

私の元へ、その疲れを取り除いて貰いに来るだろう。

自分を頼ってくれなかった事に対して

怒りさえ覚えた。

「ねぇ、ひでちゃん、」

「どうした?」

「どうしてお兄ちゃん死んじゃったんだろう」

わからない。何も答えようがなかった。

返事に困っている私を見て続けて佳代は

「ひでちゃんは絶対どこにも行かないでね。」

白く細い腕で私の腕を不安そうに掴みぽつりと言う。

「行かないさ、一人にしないよ」 「約束よ?」

頷いて見せると佳代は少し落ち着いてきたのか

微笑をみせた。だが、何処までも顔色は暗かった。

お通夜の夜、親父が「ちょっと来い」と

耳元で囁くので親父の後に着いて外に出た。

近くの公園まで行くと顎で座れと合図されたので

ベンチに腰掛けてみたが、ここへ来るまで一言も

口を聞かないもんだから少し緊張してしまった。

「聡太の事だがな、何か聞いたか?」

親父も隣に座り、話始めたかと思ったら

何かを探るような聞き方をされたので

あんまり要領を得ない私は「何が?」と聞き返した。

「自殺だって事は知っているのか」

「あぁ、そうだろうと思ってた」

「聞いたのか、明美ちゃんか?」

「いいや、誰かから聞いた訳じゃないよ」

「そうか」 低い声で親父は返事した。

そこから長い沈黙が続き私は立ち去ろうとしたが

どうしても聞いておきたくなったので

踏みとどまり聡太が犯した過ちを聞いた。

親父は、顔を曇らせながらもすらすらと

私に全てを話した。夕飯の時間になっても

中々部屋から出てこないので聡太の母親が

部屋に様子を見に行ってみると床にうつ伏せになり

倒れた状態の聡太を発見したらしい。

机や床には複数の錠剤が散らばっており

睡眠薬や安定剤や痛み止めなど複数の種類の

薬が混ざっていたと言う。死因はそれらを

大量に摂取したせいだった。散らばった薬を

聡太の父親が手に取り青ざめて自身の部屋に行くと

病院から処方された薬がすっかり無くなっていたそうだ。

「そうか」今度は私が低い声で返事した。

「あのな、秀之。人なんて皆んな簡単に

死んでしまうんだ。ちょっとした事がきっかけで

辛くなりすぐ駄目になっちまう。弱いからな。

だけどな、それを乗り越えないといけないんだ

わかるか?」

「あぁ、そうだな」

「妙な事を考えるなよ。」 「うん、そうする」

それだけ返事をしておいて私は立ち上がり

歩き出した、帰りは親父が私の後に続いた。





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