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  作者: 櫻美
13/32

その十三

その出来事があってから聡太は

学校を休みがちになっていった。

バイトを始めてから身体が疲れるようになり

最初は遅刻が目立つだけだったが、とうとう

来ない日が増えていった。一つ救いだったのが

明美とは毎日会っているらしく、明美の話だと

私が想像するよりずっと元気にしているらしい。

聡太と明美とは前みたく顔を合わせる事は

めっきりなくなり、その代わりに佳代とは

殆ど毎日一緒にいるようになった。

十二月の後半に差し掛かった頃、毎年三家族は

クリスマスに何処かの家で集まるのが決まりだったが

今年は集まらず、そして、年が明けても

何の挨拶もしないままあっという間に正月さえも

簡単に過ぎ去ってしまった。

親同士も何の挨拶もないまま過ごし

近所に住んでいるにも関わらず、外に出歩いても

誰とも会わなかった。今までの関係がまるで

なかったかのように、大きい溝が出来た気がした。

街はいつも通りに時間を進め気がつけば

数ヶ月あっという間に過ぎ去った。

私と明美は高校三年生になり、佳代は無事

志望校に入学する事が出来た。聡太はと言うと

三年に上がるタイミングで辞めてしまった。

明美からの話だけでは物足りなかったので

学校終わり久しぶりに聡太を誘った。

聡太の話では、親父さんの状態があれから

益々悪い方へと向かって行ったので

家族三人で話し合い病院に連れて行く事にした。

医者に診てもらった所、強く入院を勧められたと言う

だが、親父さんがそれを激しく嫌がり

三人はどうしたものかと参っていた所を医者が

「では、飲み薬で一週間様子を見ましょうか」と

言われその日は家へ帰る事になったらしいが

帰り道に見た母の顔は不安そのものであり

聡太はその時見た母の顔を決して、

忘れる事が出来ないと言った。三人が見守る中

親父さんは一週間欠かさず薬を飲んだ。

三人は薬でどうにかならないものかと祈ったが

服薬し始めて二、三日経った頃、三人は

入院させるしか方法はないと悟った。

一週間と言う約束だったが聡太の母は堪らず

家へ来て両親に相談した。

親の命令で子供達は家に居てろと言われたので

病院へは私と聡太の両親の四人だけで向かった。

そして、新年の挨拶もしないまま

数ヶ月があっさり経ち、今に至ると。

大方の話は佳代から聞いていた通りだったが

私が最も気掛かりなのはやはり聡太だった。

久しぶりに会った聡太は血色が悪く目の下には

くっきりと暗い影を持ち、少し痩せていた。


「ところで、大丈夫なのか?」 「何が?」


聡太は不思議そうな目を向け

こっちがそう言った意図を全く分かっていなかった。

「顔色、良くないぞ。寝てないのか?」

「ハハハ、そんな訳ないさ。大丈夫」

聡太の事を本気で心配している私は

軽くあしらわれた様に思い気分が悪かった。

少しムッとなった私を見て気の毒になったのか

「お前は心配性なんだよ。昔から」 「俺がか?」

「ハハ、そうそう、お前は心配性だ。」

ムッとしていたが笑った顔を見た途端に

どうでも良くなり、私も笑った。最近では

落ち着いて二人で話す事もなかったので

久しく思い居心地が良かった。その後は

バイトに出掛けると言うので直ぐに聡太と別れて

その少し後に佳代と会った。佳代が高校に入学後

私達は曖昧な関係からやっと恋人同士になった。

ただ、私達のことは聡太を含め誰にも

知らせていないので窮屈な思いをしながら

ひっそりと過ごさなければならなかった。

そして、漸く梅雨が明けて良く晴れた七月十日。

家で何をする訳でもなくただのんびりとしていた夜に

聡太が亡くなったと知らせがあった。


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