表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/13

ぼくの可愛いアッシュ④

 そのケモノは、灰色の毛で覆われ、頭から背中にかけて白いたてがみを持っているが、見た目は絵本に出てくる狼男のようだった。絵本の狼男との違いは、顔が小さく掌が大きい。そしてその大きな掌を振り回すためなのか、肩幅が広かった。

 アルは、自分の置かれている状況も忘れて、

「カッコイイ! アッシュ、すごくカッコイイよーっ!!」

 はしゃいでいる。


 そんなアルに、今の状況を思い出させるように、

 グルルル、

 オオカミが唸り声を上げた。そして出現したケモノにお構いなしに、アルに向かって助走をつけて飛びかかった。

「助けてアッシュ!助けてーっ!!」


 アッシュはしゃがみ込んだと思うと、アルに噛みつこうとしているオオカミに飛びかかり、首を掴むと、そのまま檻の壁に叩きつけた。


 ギャウン!!

 オオカミが悲鳴をあげながら床に落ちたが、あまり大きなダメージは無さそうだ。その証拠に直ぐに戦闘態勢を取って来た。飛びかかる機会を窺うように体制を低くしている。


「アッシュ! 気を付けて!」

 アルが声をかけた瞬間に、オオカミはアッシュに飛びかかった。それに対してアッシュは、体制を低くしながらオオカミの下に潜り込むと、掌に力を込めた。

 その瞬間、アッシュの指先から鋭い鍵爪が、ニュッ、と伸びた。


 ガウ!

 アッシュは、低く咆哮しながらオオカミの喉笛を鋭い爪で横殴りにした。

 ザクッ!

 ギャウ‥‥

 オオカミは悲鳴をあげ続けることも出来なかった。アッシュの鋭い爪により、オオカミは喉笛と言うより、首を大きく抉られて横に倒れると、そまま動かなくなった。


「す、すごい‥‥、強いんだね。アッシュ。」

 感心するアルを見上げたアッシュは、しゃがみ込んだかと思うと、アルめがけて飛び上った。

 ガシッ

 檻の天井にしがみつくと、指一本にだけ鋭い爪を伸ばして、アルを天井から吊っている縄を、ブツッ、と切った。

「わぁ!」

 落ちそうになったアルを、優しく受け止めると、自らも天井から飛び降りた。


 スタッ。

 アルに衝撃が伝わらないように、膝を大きく屈伸させて着地した。


「ありがとうアッシュ!」

 アルが首に抱きついて来ると、アッシュは檻の壁にもたれてゆっくり腰を下ろしてから、アルを優しく抱きしめた。

「アッシュは、あったかいんだね。」

 アルが温もりにウトウトしていると、光が差し込んできた。

 朝日が昇って来たのだ。


    ◇


「おい、アル! すげえのが、出たじゃねえか!」

 朝になると、バズが興奮しながら檻に入って来た。既に目を覚ましていたアルは、バズが来たら言ってやろうと思っていたことがあった。

「‥‥なんか、きらい‥だ。」

「ああん? なんか言ったか?」

 アッシュに抱かれて、何か口ごもったようにしていたアルが、意を決した様にすくっと立ち上がって叫んだ。

「おまえなんかキライだーっ!」


 すると、「ほう」と呟きながらバズが表情を変えた。

 「いい度胸してるじゃねえか! でも後悔するなよ!」

 アルに向かって、拳を振り上げた。

 「わぁ!!」

 アルが頭を抱えた瞬間だった。


 アッシュがアルを抱き寄せながら音もなく振り出した腕が、バズの顔面をかすめた。

 次の瞬間、バズの顔面に3本の筋が入り、そこから血がほとばしった。アッシュの爪が顔面を切ったのだ。

 「ぎゃあっ! いでぇ! いてえよう!」

 バズが叫び声を上げながら尻もちを付くと、アッシュはバズを睨み付けた後で、その視線をオカミの死体の方に向けた。

 まるで「あんな風になりたく無かったら、アルに手を出すな。」とでも言っているようだ。


 「ちくしょう。覚えてやがれ!」

 バズは尻もちを付いたまま立ち上がれずに、四つん這いのまま檻から出て行った。


 「ありがとう。アッシュ!」

 抱き着いてくるアルを、アッシュは大きな手で優しく抱き上げた。

そして勇気を振り絞ったアルを愛しむ様に頬ずりをした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ