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ぼくの可愛いアッシュ①

短編です。オムニバス形式でとりあえず3話作ってみました。

 プロローグ


 幼い子供と父親が何組か、森に入って行く。それを心配そうに母親たちが見送っている。

 今年も、もうそんな時期か‥‥。

 今年も「守魔合わせ」のために子供を森に連れて行くのだ。


 この村では毎年春になると、5歳になった子供を森へ連れていく。そして森の中の小屋に、または檻に、一人ずつ閉じ込めて一晩を過ごさせるのだ。

 夜の森の恐ろしさを知っている人ならば、それが幼子にどれほど過酷な事か分かるだろう。飢えたオオカミやクマが出るのは当たり前で、場合によっては魔物が出るかも知れないのだ。なぜそんな酷いことをするのか、って思うだろう。もちろん目的がある。

「守魔合わせ」をするためだ。


 幼い子供たちは5歳くらいまでの間に、早い子供はもっと前からだろう。一人遊びや空想の中で自分の心の中の遊び相手「友達」を創っている場合が多い。

 恐ろしい夜の森で一人ぼっちにさせられて、心細くなった子供たちは大抵、心の中にその「友達」を呼び出すのだ。そして孤独を癒すため、また、恐怖心を払拭するために、より具体的な姿で心の中に呼び出す。

 そして森にはケモノや魔物の他に「木霊こだま」の様な精霊がたくさんいる。子供たちに興味を引かれて集まって来るこれらの精霊たちは、不安定な半身体・半幽体の様なもの達が多い。


 子供達が極限の精神状態で強く助けを求め続ける。そして子供たちの心の中で「友達」は具体化・具現化していく。

 そんな中、森に漂う不安定な半身体・半幽体の者たちは、助けを求める子供の心に強く吸い寄せられる。また、不安定な存在の者達は、常に「宿り木」を求めている性質もある。

「友達」の姿を思い浮かべながら助けを求める子供の心と、宿り木を求める精霊の波長がぴったりと合った時、二つが融合して「守魔」が生み出される。


 子供たちの心の中に創り出された「友達」が精霊と融合した時、命と体を持った「守魔」としてこの世に生み出されるのだ。



 この村は精霊が多く住まう森に接しているため、生まれてくる子供達も特殊な力を持っている場合が多いのであろう。古くから「守魔合わせ」が行われて来た。当たり前のことだが、無理なことをすれば、子供たちに危険が迫ることになる。

 そして、二年前にそれは起こった。


 借金があった父親が、息子に強い守魔を出させるため、守魔合わせで危険な事をしたらしい。結果、強い守魔が出せたのだけれど、その子は父親を捨てて守魔と村を出て行ってしまった。


 風の噂で聞いたが、その子は何処かで冒険者の様な事をやっているらしい。



 第1話  僕のかわいい「アッシュ」



 5歳になったアルは、今年、守魔合わせに行く予定だ。でもちょっと困った事情がある。

 居候している家の伯父さんに「お前のグズな「友達」を守魔にするんじゃねえぞ!」って言われているんだそうだ。


 父ちゃんが死んでしまってから、アルは母ちゃんと2人でバズ伯父さんの家に引き取られた。伯父さんは母ちゃんの兄ちゃんにあたるそうだ。

 伯父さんは、「アルに強い守魔を出させて領主に売り込むんだ。」って言っているが、アルの「友達」は、「ケンカが嫌いな優しい子」なんだそうだ。

 アルの「友達」は、4歳の時に夢に出てからずっと一緒にいる「アッシュ」っていう子だそうだ。アルが淋しい時はいつも一緒に居てくれる。ふさふさの灰色の毛に覆われて、頭に白いたてがみがある「小さな子犬みたいな子」なんだそうだ。

 アルは、「守魔合わせが来たら本物のアッシュに会える。そうしたら、いつでも一緒に居られるんだ。楽しみだなあ。」と言っていた。

 伯父さんには、怒られそうだけど‥‥。


    ◇    


「兄さん、アルは私が連れて行くわ。」

「ダメだ!守魔合わせの付き添いは、男の役目だ。お前は引っ込んでろ!」

 バズはアルの襟首を掴むと、母ちゃんからひったくるようにして自分の側に引き寄せた。

「だいじょうぶだよ、母ちゃん。」

 アルが笑って見せると、母ちゃんはアルをギュッと抱きしめて、

「気を付けてね。今年守魔が出せなくてもいいんだからね。」

 優しく言った。


「じゃあ、行くぞ。」

「はい!」

 アルとバズ伯父さんは村の集会所に向かった。


 村の集会所には既に何組かの親子が集まっていて、村長むらおさと世話役から話を聞いているみたいだ。アル達の姿に気付いた村長が歩み寄って来た。

「おお,アル。よく来たな。」

 そしてバズ伯父さんに向かって、

「バズ。お前、アルに無理な事をさせるんじゃないぞ。」

 日頃から素行の良くないバズに、釘を刺すように注意していた。

「今回、守魔合わせに行くのは、5組の親子・6人の子供達じゃ。みんな気を付けてな。そして、くれぐれも無理をするなよ。」

 アル達は、村長に見送られて森に向かって出発した。


短編ですので、読んでみてください。

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