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【完結】モノクロの僕と、色づく夏休み  作者: カムナ リオ
第一章
3/20

第3話「終着駅」

 毎年思うことだけど、同じ日本か⁉︎ と思うくらいの過疎(かそ)っぷり……。

 

 駅前に、店一つないなんて……。


 ぽつんと立っているバス停の存在が、奇跡に思える。

 この時間だと一時間に一本のペースで、なんとかバスがある。

 時刻表を見たら、もうすぐバスが来るようで安心した。

 というか、このバスの時間に合わせて、電車を選んで来たんだけどさ。


 そう言えば一緒の駅に降りた、デカリュック少年はどうしたんだろう?

 田舎は車移動が基本なので、だれかが迎えに来るのかもしれない。


 ちょっと駅周辺を見渡して見た。

 人気もないので、モスグリーンのデカリュックはすぐ目に入った。

 

 少年は駅の周辺案内板をしばらく眺めていたが、だれかの迎えを待つことなく、駅前の微妙に舗装された道を、一人で歩きだした。


 ……歩き?


 オレがデカリュック少年の行動にあっけに取られていると、クラクションが鳴った。

 すぐそこまでバスが来ていた。


 歩いて行った少年のことが少し気になったが、オレはバスに乗り込んだ。

 空いている席に適当に座ると、ドアが閉まりバスがゆっくり発進した。


***


 心地よい早さで、窓の景色が流れて行った。

 車内には、オレと運転手以外だれもいない。バスのエンジン音や、外から微かに聞こえて来る虫や鳥の声以外、何も聞こえない。


 静かだ……。


 平穏な静かさって、こういうことを言うのかもしれないと、流れる景色を眺めながらぼんやり思った。


 電車内で眠ったせいか、バスの中ではあまり眠くならなかった。

 スマホの電波も入りづらく、することがなくて暇なので余計なことが頭をよぎる。


 このあたりは、観光名所も特にない静かな土地だ。

 あの少年が歩いて行った先に、民家なんかあっただろうか?


 あるのは、山くらいじゃなかったか?

 あいつ……何しに行くんだろう?


 ……。



 どうでもいいか……。オレには関係ないし。


 ……。


 ……。


 山か……。

 

 ……最近流行ってる、虫捕りか?


 あんな小さな子供が一人で、こんなところまで来て?


 もうそろそろ、陽も傾き始めるのに?


 ……。




 ……まさか自殺とかじゃ、ないよな?


 リストラされた未来に明るい希望もなくなってしまった、サラリーマンじゃあるまいし……。


 オレは親が観ていた、ドラマの内容をフッと思い出した。

 

 それにあんなに大きなリュックを背負って、自殺はないだろ。


 オレは何だか必死になって、自殺説を否定しようとした。

 でもあの方向に子供が一人で歩いて行くほかの理由は、なかなか思い当たらなかった。


(……)




 どうしよう……?


 いや、別に関係ないんだけど。


 どうせもう、会うこともないだろうし。


 ……。


 ……。



 オレは少年のことを、振り切るかのように頭を振って目を閉じた。

 そのまま全て忘れて、眠ってしまいたかった。


 ……もしここでバスを降りたら、バスに再び乗れるのは一時間以上先になってしまう。


 関係ないじゃん、あんなやつ。別にどうなったっていい……。


 ……。


 ……。


 オレはそう自分に言い聞かせながら、バスの車窓の外を流れて行く景色を、黙って見つめていた。



つづく

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