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【完結】モノクロの僕と、色づく夏休み  作者: カムナ リオ
第一章
2/20

第2話「電車の旅」

 夏休みだし……やっぱこんなローカル線でも、それなりに混んでるな。


 あ……ラッキー! 席、空いてる!


「相席いいですか?」

「……」


 聞こえなかったのかな?


「あの、相席……」

「……」


 オレが相席を申し出た座の子は、オレを睨むとそっぽを向いた。


 ……ってなんだよ。気づいてるなら返事くらいしろよ!

 何かイラついたのでオレはそのまま、相手の返事を訊かずに空いている席に、ドカッと座った。


 しばらくイライラしながら、車窓の外の流れる景色を見ていた。


 同じように流れる短調な景色に飽きた頃、ちょうどお腹も空いてきた。


 時計を見たらもう十二時を回っていたので、お昼にすることにした。

 昼食用に持たされた、お弁当と麦茶をリュックから取り出そうとして、目の前の相席した子の姿がまた目に入った。


 よく見れば大分小さい子だ。

 背丈からいって小学二、三、いってても四年生ってところだろうか?

 周りを見渡しても、この子の家族らしきものは見当たらない。


 一人旅?


 オレのように、じじばばの家に行くんだろうか?


 こんな小さな子一人で?

 まったく親は何やってるんだろう?


 放任主義もいいところだ。今どき子供を狙う悪質な変質者が、うじゃうじゃいるっていうのに……。


 まあ……あれかな?「はじめてのおつかい」みたいなノリ?


 ずいぶん大きな荷物持ってるな……。


 ……。


 ……家出とかじゃないよな?


 ……。


「あのさ……君一人なの?」

「……」


 また無視かよ……。

 聞こえないってわけじゃないよな?


 ちょっと不安になったけど、オレはもう一度声を掛けてみた。


「もしかして……耳、聞こえないの?」

「!!」


 目の前の少年はムスッとオレを睨むと、抱えていた大きなリュックに、顔をうつ伏せた。


 声は聞こえるわけか……。


 それでなお、無視なわけか……。


 オレの顔も見たくないと……。


 そんなにオレって怪しいか?



 あっそ。もう、どうでもいいや。


 完全にリュックに顔を突っ伏した少年は、寝ているようにも見えた。


 まあさっきの今で、それはないだろうと思ったけど、もう気にしないことに決めて、オレは弁当を開けてパクつき始めた。


 もうどうでもいい……と思う反面、もしかしたら口が聞けない子なのかもと、ぼんやりと考えていた。


 弁当を食べ終えて、水筒に入った麦茶を飲みながら、ぼんやり車窓の外を眺めていると、次第に眠くなってきた。


 祖父の家の最寄駅までは、まだ遠い……。


 オレはうつらうつらと、深い眠りに落ちていった。


***


 オレが目を覚ました時には、周りの乗客は殆どいなかった。


 眠い目をこすりつつ窓の外を眺めると、見知った景色になっていた。


 毎年来ているので、さすがに覚えている。

 ここら辺は時が止まっているかのように、オレが小さな頃から何一つ変わっていない気がする。


 気が付くと、まだ相席少年は座っていた。

 リュックに顔を突っ伏したまま。

 お昼からずっと、この体制なんだろうか?


 あのまま本当に寝てしまったのかもしれないと、ぼーと考えていたら、車内アナウンスが流れた。それとほぼ同時に、少年は勢いよく顔を上げた。


 オレは思わず、ビックリして飛びのきそうになった。

 少年のあまりの鋭い眼差しに、また睨まれているのかと思ったが、それは間違いだとすぐ気がついた。


 少年は目の前のオレのことなど、見ていなかった。


 まるでオレの体を透かして、遠くの何かと、対峙しているようにも見える……そんな眼差しだった。



つづく

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