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ママ(フェンリル)の期待は重すぎる!【Web版】  作者: 人紀
第八章

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キングなスライム?

 朝!

 起きた!

 ベッドからそっと抜け出る。

 そして、チラリと振り返る。

 シャーロットちゃんとイメルダちゃんがスヤスヤと眠っている。


 可愛い!


 食堂(中央の部屋)に入ると、ケルちゃんが近寄ってきたので、「おはよう~」と言いつつ、ぎゅっとハグをしてあげる。


 あれ?

 なんか、ケルちゃん、大きくなったかな?


 真っ黒な毛のモフモフ力もアップした気がする。

 ふふふ、良いことだ!

 え?

 はいはい、センちゃんの次はレフちゃんね。

 レフちゃんもモフモフだぁ~

 そんな風に、ケルちゃんを堪能していると、台所からシルク婦人さんが出てきた。

 おはよう!

 あ、卵と山羊ちゃんのお乳ね。

 シルク婦人さんが持ってきた籠と壷を受け取り、妖精メイドのサクラちゃんを肩に乗せ、外に出る。


 う~ん、悪い天気!


 雨こそ降っていないけど、どんよりした雲が空を厚く覆っていて直ぐにでも土砂降りになりそうだ。

 まあ、そんな日もあるよね。

 そんなことを考えながら、飼育小屋に向かう。

 皆元気かな?

 扉を開くと、スライムのルルリンがスルスルと近寄ってきた。

 よしよしと撫でてやる。


 しかし、昨日のあれはなんだったんだろう?


 実は、昨日、スライムのルルリンに枝とかを食べて貰っている時に、物作り妖精のおじいちゃんに呼ばれて一時間ぐらい、この子から離れていたんだけど……。


 戻ったら、山と積まれていた枝や葉っぱが綺麗に無くなっていた。


 え?

 なに?

 どういうこと?

 どう考えても、犯人は……。

 いや、頼んだのはわたしだから、その言い方は良くないか。

 それを成し遂げたのはスライムのルルリンと思ったんだけど……。

 だから、食べ過ぎて、巨大化したか、もしくは、大量に分裂したルルリンがいることを想像したんだけど……。


 そこには変わらぬ、一匹のスライムがいるだけだった。


 いや、体色の白が濃くなってたけど……。

 両手で抱えられるほどのサイズの可愛らしいスライムのままだった。

 むしろ、体は小さくなっていて、イメルダちゃんでも抱えられるぐらいになっていた。


 あれだけの量を食べて、逆に小さくなる?


 わたしも、そばにいたイメルダちゃんも、首を捻ってた。

 後で、ヴェロニカお母さんが「スライムは不思議な生物だから、そういうこともあるかもね」と言ってた。

 生活に無くてはならなくなったスライムには、それを研究する人もそれなりにいるらしいけど、それでも謎の多い生物らしい。

 まあ、頭が好い人が調べても分からないことを考えても仕方がないか。

 それより、卵と山羊ちゃんの乳を頂かなくては。


 ……。


 なんか、赤鶏さん達も山羊ちゃん達も、スライムのルルリンが近づくと、ビクっと震えてるんだけど……。

 なんか、他のスライム達がルルリンの指示に従っているように見えるんだけど……。


 ……キングなスライムになんかなってないよね?


――


 外に出ると気配を感じて視線を向ける。

 あ、蟻さんが来てた。

「ちょっと待ってて!」

と断り、卵と山羊ちゃんの乳をシルク婦人さんに渡すために家に入る。

 戻ると、蟻さんはスモモを前足で差しながら顎をカチカチさせていた。

 スモモが気に入ったのかな?

 蟻さんは例のごとく、鉄鉱石を持ってきた。

 ……これ、貯まる一方なんだけど。

 一度、別な物を持ってきて貰った方がよいかな?

 などと考えていると、そんな心の声を拾ったわけではないだろうけど、別の石を渡してきた。

 ん?

 結構大きい。

 直径三十センチぐらいかな?

 ゴツゴツした半透明の白い石だ。


 これって、魔石かな?


 前世の図鑑か何かで見た、水晶石に似てるんだよね。

 ……魔石イコール水晶石なのかな?

 前世で水晶の原石自体を実際に見たこと無いから、よく分かんない。

 ただ、蟻さんが持ってきてくれたこの石に関して言えば……。


 うん、魔力が混じってる。


 普通の鉱石には感じられないから、これが特殊なんだと思う。

 そう考えるとやっぱり、魔石という特別な石なのかな?

 そんなことを考えていると、蟻さんが顎をカチカチ鳴らしながら、前足をスモモに向ける。

 あれと交換ってことだろうけど……。


 いやこれ、使えるの?


 店で買った魔石は精々直径三センチほどのサイズだ。

 そして、そのサイズだからこそ家にある魔道具に使用できる。

 前世で考えれば、単三、単四電池を求めている所に、車用のバッテリーを売りつけられそうになっている。

 そんな感じじゃないかな?

 いや、魔石って特殊な処置をしないといけないって聞いたから、車用のバッテリーとしての機能も疑問な物だ。


 う~ん……。


 わたしが悩んでいると感じたのか、蟻さん達がどことなく不安そうにこちらを見る。

 そんな様子を見ると、ちょっと可哀想になってきた。

 なので、「これは今回だけでいいから」と釘を差しつつ、スモモを育て、持たせて上げた。

 あと、鉄鉱石の分に林檎とかオレンジを渡して上げた。

 蟻さん、嬉しそうに顎をカチカチさせている。

 良かったね!

 え?

 種もあるの?

 蟻さんが二粒、渡してくる。


 お楽しみの種ガチャのお時間がやって参りました!


 何となくだけど、そろそろキャベツが来るんじゃないかなぁ~って思っている。

 来るよね!

 ね!

 ね!

 植えようとして、妖精メイドのサクラちゃんに止められる。

 え?

 もっと向こう?

 花壇から離される。

 でも、これも悪い話でない。

 つまりこれは花ではない。

 緑色の丸い奴って事だよね!

 などと、根拠のないことを思いつつ、地面に種を一つ埋め、白いモクモクで覆いつつ唱える。

「キャベツぅぅぅ!」

 あ、間違えた。

 とはいえ、台詞がいつもと違おうが関係なく、ニョキニョキと育っていく。

 ……。


 パセリだった。


 思わず地面に膝を突き、ガックリと両手を地に付けた。


 それ、ピーマン以上に嫌いな奴!

 ピーマン以上に食べられない奴だから!


 そうだ、わたし前世で時々、叔母さんのお宅でご飯を食べさせて貰っていたんだ。

 普段食べているものとは比べものにならない美味しい料理にいつも心躍っていたんだけど、何故か、その一品一品にパセリが一房、置かれていたの。

 わたしとしては、ご迷惑をおかけしているという意識があるから、正直嫌だったけど、それも残さず食べていた……。

 だけど、なにを勘違いしたか、お邪魔させて貰った回数を重ねる内に、パセリの量が増えていったの!

 え!? って感じよね!

 もう、え!? って!

 でも、そんなの要らないなんて、食べさせて貰っているわたしが言えるわけ無いじゃない!

 だから、いつものように何とかかんとか食べていると、叔母さん、言ったの。

「パセリが好きなんて、変わっているわね!

 わたし、それ食べられないのよ」

 もう、はぁぁぁ!? って感じよね!

 で、気づくの。

 叔母さん夫妻の皿にはパセリが無いことに……。


 ふがぁぁぁ!

 誰が好き好んでパセリなんか食べるかぁぁぁ!

 こんなの、ただの葉っぱじゃないかぁぁぁ!

 いや、キャベツだって、葉っぱだけどぉぉぉ!


 カチカチカチという音で我に返った。

 視線を向けると、蟻さんが結界の外で心配そうに見下ろしている。

「……大丈夫」

と声をかけて、よろよろと立ち上がる。

 問題は――こんなただの葉っぱなパセリでも、現時点では貴重な野菜ということだ。

 シルク婦人さんがなんとかしてくれるかな?

 う~ん……。

 もう一つに期待かな。

 土に埋めて、白いモクモクで覆う。

 さっきのはあれだ。

 いわゆる、物欲センサーに引っかかったんだよね。

 引っかかって、トラウマを刺激する物が出てきちゃったんだよね。

 ここは無心!

 無心で行こう!

 両手をぐうにして、下から上に力一杯持ち上げる!

「育てぇ~!」


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