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ママ(フェンリル)の期待は重すぎる!【Web版】  作者: 人紀
第八章

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ママへの贈り物1

 朝!

 起きた!

 寝ているイメルダちゃんやシャーロットちゃんを起こさないように、そっとベッドから抜けでる。

 近寄ってきたケルちゃんをワシャワシャしつつ、ゴロゴロルームを覗く。

 ヴェロニカお母さんとエリザベスちゃんはすやすや眠っている。

 問題なし!

 ん?


 シルク婦人さんが台所から出て来た。


 昨日被っていた婦人用帽子(ボネット)を外し、白に近い銀色の髪を後ろで束ねている。

 そして、白いエプロンを付けていた。

 そんな、シルク婦人さんが籠を差し出してくる。

 え?

 ああ、卵ね。

 あ、山羊の乳も貰ってこないと。

 でも入れる容器がない。

 買ってこなくては……。

 そんなことを呟いていると、シルク婦人さんは台所に入ると、壷を持って戻って来た。

 え?

 ここに入れるの?

 無骨なただの壷だけど……。


 まあ、いいか。


 妖精メイドのサクラちゃんが肩に乗ってきたけど、ここ最近、毎朝のことなので気にせず外に出る。

 天気は曇り。

 国歌を歌いつつ、飼育小屋に入る。

 今朝は卵は~

 お、産んでくれてる!

 ありがとう!

 壺を脇に置き、卵を籠に入れていく。

 ん?

 視線を感じてそちらを見たら、なぜか、山羊ちゃんが攻撃態勢だった。


 ……昨日の扱いが不満だったのかな?


 山羊君はオロオロしている。

 ふむ。

 卵を妖精メイドのサクラちゃんに預けつつ、仁王立ちをして睨む。

『かかってきなさい!』

 ガウガウ! との言葉に、山羊ちゃん、ビクっと震える。


 そして、先ほど脇に置いた壺の側にスススと寄ると、(どうしたの? 乳、搾るんでしょう?)と言うように上目遣いでこちらを見てきた。


 全くもう……。


 赤鶏さんの側では何なので、山羊エリアに移動して、乳搾りの準備をする。

 白いモクモクを出して、しっかり手を洗う。

 う~ん、小さな女の子がいる現状、やはりアルコールの消毒液が欲しいなぁ。

 山羊ちゃんの乳房も念のために軽く洗う。

 使用した水をスライム君達がいる場所に流しつつ、乳搾りを行う。

 やり方は一応、牧場主のおじさんに教えて貰ったので、拙いながらも何とか出来た!


 乳を取り終えた後、大麦を与える。


 大麦ばかりだと余り良くないって、牧場主のおじさんが言ってたから牧草も育てないとなぁ。

 その種は、牧場主のおじさんから購入済みだ。

 おじさん、「今からじゃ、間に合わないから、牧草も買うか?」とか言ってたけど、それはお断りをした。

 種さえ有れば、いくらでも育てられるしね。


 始め、警戒していた山羊ちゃん達だが、一口食べると、もっともっとと催促し始めた。


 いいよ、いいよ。

 沢山お食べ。

 ん?


 山羊君の体にスライムがくっついてた。


 恐らく、この子は牧場にいたスライム君だろう。

 昨日はシルク婦人さんがやってきた事もあり、慌ただしく山羊ちゃんやスライム君をここに入れたが、冷静に考えると今までいたスライムとの区別が付かなくなる危険性があったんだよね。

 でも、他のスライムは家畜に近づかないから、必然、この子が銀貨三枚のスライム君だろう。


 ……そういえば、魔力を込めてやると良いって言ってたなぁ。


 白いモクモクを出すと、それでスライム君を持ち上げる。

 そして、少し魔力を込めてみた。

 ん?

 ちょっと大きくなったかな?

 色も、なんか透明だったのが少し白っぽくなってきたし。

 まあ、沢山やりすぎて変な進化をされても困るので、少しだけにしよう。

 ん?

 スライム君がポヨポヨとアピールする。

 え?

 もっと、魔力が欲しい?

 仕方がないなぁ。

 もうちょっと魔力を流して終了する。


 ふむ。


 家畜さんや掃除用スライム君達に名前を付けるのは正直キリが無いと思うので止めるけど、このスライム君だけには命名してあげようかな?

 ……何が良いかな?

 スライム君をじっと見つめる。


 う~ん、思いつかないや。


 イメルダちゃんとかに、相談してみよう。

「後はよろしくね」

と声をかけてから、卵と山羊の乳を手に飼育小屋を出た。


 家に戻って、籠と壺をシルク婦人さんに渡す。


 え?

 他の食料も?

 ちょっと待ってて!

 手をしっかり洗った後、食料庫から野菜、芋、お肉などを色々と持ってくる。

 お任せして大丈夫?

 シルク婦人さんは受け取り、コクコクと頷くと台所に入ってく。


 なら、わたしはパン作りかな。


 パン生地を白いモクモクに投入して焼き始める。

 台所はシルク婦人さんが使用しているから、入り口前で作業をする。

 台所の中から、シルク婦人さんに訝しげな顔をされた。

「パンを焼いてるの」

と説明をしたら、眉をさらに寄せて、しばらく硬直してた。

 そして、オーブンを指さし「こちら」と言った。

 あ、シルク婦人さんは話せるんだ。

 平坦だけど綺麗な声だった。

「こっちの焼き方しか分かんないの」

と答えると、奇抜な髪型の子供を見つけた老婦人の様な渋い顔で、首を捻られてしまった。


 解せぬ。


 パンについてはこちらに任せたのか、それとも諦めたのか、シルク婦人さんはスープを作り始めた。

 美味しそう。

 それに、作るの早い!

 人参や芋とかの皮がサクサク剥かれ、サクサク切られ、スープに投入されていく。

 一切の迷いが無い。

 あ、ケルちゃんの食事用のお肉も焼いてくれる?

 三首に用意する必要があるんだけど……。

 うん、塩コショウを少しかけてあげると喜ぶの。

 あと、シャーロットちゃんがお肉を食べたがるから。

 大丈夫?

 よろしく!


 台所はシルク婦人さんが使用しているから、焼きあがったパンは中央の部屋(食堂)のテーブルで切ることに。


 テーブルのそばでは寝間着から着替えたシャーロットちゃんが、ニコニコしながらケルちゃんと朝の挨拶をしてた!

 仲良しになったのかな?

 ケルちゃんも嬉しそうにガウガウとシャーロットちゃんに頬ずりをしている。


 可愛い!


 和んでいると、部屋から出てきたイメルダちゃんが「手伝うわ」と近寄ってきた。

「じゃあ、切ったパンを皿に置いて並べてくれる?」

と言いつつ、白いモクモクをパン切りナイフの形にして耳の部分を落とす。


 すると、台所からシルク婦人さんがやってきた。


 そして、完成したパンをためつすがめつ眺め出す。

 突然の行動にわたし達は手を止めて、様子を見ていると、シルク婦人さんはわたしの方を向いて言う。

「一口」

 ん?

 イメルダちゃんが「一口食べたいって事じゃない?」と指摘してくれたので、ちょうど切った耳を渡す。

 え?

 大きい。

 少し千切って渡すと、シルク婦人さんはそれを口に入れてモグモグする。

 そして、わたしに頷いてみせると、台所に戻っていった。

「……合格って事?」

「そうじゃない?」

 もうちょっと、言葉を増やして欲しい。

「あ、そういえば、シルク婦人さんの分の食器が足りない」

「そうね。

 食べる順番とか考えないと」

とイメルダちゃんと話していると、ゴロゴロルームからヴェロニカお母さんが出てきた。

「大丈夫よ。

 シルク婦人には夜に山羊か牛の乳を一杯、出来れば砂糖を少し入れて暖炉の上に置いておいてあげれば良いの」

「えぇ~そんなので良いの?」

「ええ。

 彼女、味見は出来るけど、食事は必要としてないみたい」

 妖精だからかな?

 そういえば、妖精姫ちゃんも甘い物は好きだけど、食事は不要とのことだから、シルク婦人さんも同じなのかな?

 そんなことを考えていると、妖精姫ちゃんがリンゴジャムの瓶を持って飛んできた。


 あ、こら!

 勝手に食べちゃだめ!

 え?

 違う?

 妖精姫ちゃんが転送部屋の方を指さし、何かを言っている。

 え?

 ママにパンとジャムを送る?

 ママは格好いいから甘い物なんていらないよ?

 すると、ヴェロニカお母さんが「どういうこと?」と訊ねてきた。

 だから、時々ママに狩りで得た物を転送陣で送っていると説明したら、ヴェロニカお母さんもイメルダちゃんも目を丸くしてた。

「転送陣って……。

 サリーちゃんのお母様、魔術師なの?」

とヴェロニカお母さんが訊ねてきた。

 ママが魔術師?

 どちらかというと、魔法使いかな?

「よく分からないけど、わたしの魔法はママから習ったものだよ」

と説明をすると、「そうなのね」とヴェロニカお母さんは少し考える素振りを見せる。

 そして、「その転送陣っていうの見てみたいわ!」って言い始めた。

「え~

 そういうの、人に見せちゃ駄目だって言ってた」

と答えたら、ヴェロニカお母さん「そうよねぇ」と残念そうにする。

 妖精姫ちゃんがジャムの瓶を持ち上げて、急かすように何か言っている。


 何でそんなに、ジャムをママに送らせようとしてるのかよく分からない。


「だから、転送するのはママの好物を送るのであって、甘い物なんて送ったって困らせるだけだって!」

 ケリーお姉ちゃんがいればともかく、ママが全部食べなくちゃならないんだし。

 そんなことを思っていると、ヴェロニカお母さんが少し考えて言う。

「お母様は好物を送るようにおっしゃってたの?」

「え?

 んん?」

 少し考える。

 あれ?

 どうだったっけ?

「確か、”手に入れた獲物”って言ってた」

「だったら、送って差し上げたら?

 母親は、娘が作った物は仮に好みでなくても見てみたいし、食べてみたいと思うものよ」

「え~

 そんなものかな?」

「そんなものよ。

 好物でなくても、食べられない物でも無いでしょう?

 それに、同じようなものばかりだと、成長してるのか分からないわよ」

「まあ、確かに……」

 一応、納得がいったのでリンゴジャムを送ることにした。

 え?

 パンも?

 そうだね。


 なにやら、満足げな妖精姫ちゃんが戻っていった。


 ……何で妖精姫ちゃんがあんなに熱心にジャムを送らせようとしたのかが謎なんだけど。

 ヴェロニカお母さんが言ってたような事を懸念してくれたのかな?

 なかなか、心遣いが出来る素晴らしい姫ちゃんだ!

 後で、姫ちゃん用に甘いジャムを作ってあげよう。


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