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ママ(フェンリル)の期待は重すぎる!【Web版】  作者: 人紀
第六章

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お風呂に入ろう!1

 食事が終わり、白いモクモクで手早く食器を洗った後、ゴロゴロルームを覗く。

 ヴェロニカお母さんとイメルダちゃんが、エリザベスちゃんが眠る側でチクチクと刺繍をやっていた。

「道具はそれで良かった?」

と訊ねると、ヴェロニカお母さんは「ええ、とても使いやすいわ」とニッコリ微笑んだ。

 その隣に座ってるシャーロットちゃんが「サリーお姉様、見て見て!」と笑顔で手招きするので、靴を脱いで近づく。


 それを見て思わず「うぁ~すごぉ~い」と感嘆の声を漏らしちゃった。


 ヴェロニカお母さんが持つ丸い枠の中に、色んな種類の花が咲き乱れていたからだ。

 なんだか、見ているだけでパッと明るくなりそうで、それでいて優しげで……。

 美術的素養とかが全くないわたしだけど、凄く感動しちゃった!

「ヴェロニカお母さん、凄いねぇ!

 凄いねぇ~」

と語彙が少ないながらも一生懸命褒めると、ヴェロニカお母さんは「フフフ、ありがとう」と笑ってくれた。

 それを横目でチラリと見たイメルダちゃんが、ちょっと悔しそうに自分の手元を見る。

 それにつられる形でそちらを見たけど――流石にヴェロニカお母さんには敵わないけど、イメルダちゃんのも可愛らしい花が描かれていた。

「イメルダちゃんのも可愛いね!」と伝えたけど、イメルダちゃんは「お母様には全然届かない」とちょっと唇を尖らせた。


 そんな、イメルダちゃんも可愛い!


 二人が刺繍をやっている間に、エリザベスちゃんのお風呂を済ませちゃおうかな?

 二人からちょっと離れてあぐらをかく。

 白いモクモクで赤ちゃんが入れるサイズのお風呂を作る。

 あ、サクラちゃん、タオルありがとう!

 水を張って温める。

 これくらいかな?

 え?

 シャーロットちゃんも手伝う?

 じゃあ、お湯の温かさがこれぐらいで良いか、手を入れてみて?

 ヌルいぐらいが良いのだけど。

 大丈夫?

 ありがとう。

 エリザベスちゃんの服を脱がして、ゆっくりと入れてあげる。

「エリザベスちゃん、気持ちが良い?

 ん?」

 などと、訊ねつつ優しく洗ってあげる。


 しばらくして湯から出してあげると、エリザベスちゃん、うっすらと笑ってた!


「笑ってるね!」

「本当、エリザベス、笑ってる!

 気持ちよかったんだぁ」

 シャーロットちゃんと顔を見合わせて、微笑みあった。

 体を拭いた後、妖精メイドのスイレンちゃんが用意してくれた服を着せてあげる。

 ついでに、湯上がりでポカポカほっぺをツンツンする。

 柔らかくて気持ち良い!

 ふふふ。

「わたし達もお風呂入らないとね」

 昨日は忙しくて入れなかったから、ちょっと落ち着かない。

 白いモクモク浴槽を作り始めてから、ほぼ毎日入ってたからなぁ。

「シャーロットちゃん、一緒に入ろうね」「うん」

とシャーロットちゃんと笑い合った。


――


「浴槽、大きいわね」

とバスタオル一枚のイメルダちゃんが目を丸くする。

 同じ格好のシャーロットちゃんはちょっと嬉しそうだ。

 家の説明の為に回った時に紹介していたけど、湯が入ると見え方も変わるのかな?


 因みに、お湯は白いモクモクから出した物だ。


 イメルダちゃんが言うには、ここのお風呂にも湯が出る魔道具が設置されているとのことだったけど、照明と同じく魔石が無いからね。

「さあ、先ずは掛け湯をしようね」

と白いモクモクを出して、シャーロットちゃん、イメルダちゃんの順で湯を掛けて、浴槽で体を温めて貰う。

 そんなわたしも体にバスタオル――まあ、そんな上等な物ではなく布なんだけど――を付けている。


 この格好は、イメルダちゃんが強硬に主張したからの帰結である。


 初め、脱衣所で素っ裸になったわたしは、皆も同じく裸にしようとした。

 そもそも、フェンリル的我が家では裸が恥ずかしいという意識はなく、前世の日本人的意識からも(集団浴場では皆、裸だよね?)という感覚だったからだ。

 だけど、イメルダちゃんとしては「何で全裸なの!? ほら、湯浴みの時に着るのがあるでしょう!?」と言う事らしかった。

 お風呂で着る物?

 湯浴み着――だっけ?

 そんな物は当然用意してある訳も無く、後日用意すると言う事で、バスタオルスタイルになったのだ。

 シャーロットちゃん達のお世話をするので直ぐにズレてきそうで(わずら)わしいと思い、わたしだけは腰だけ巻く方向で行こうとしたけど、顔を真っ赤にしたイメルダちゃんに「胸も隠しなさい!」と怒られた。


 ヴェロニカお母さんのならともかく、わたしの薄い胸なんて無いに等しいと思うけどなぁ。


 わたしは浴槽の外で石鹸などを用意する。

 さて、どうせ体も自分で洗ったことないだろうから、わたしがシャキシャキ洗ってあげよう。

「体を洗おうね」と言いつつ、お湯の熱で肌が上気してきたシャーロットちゃんを湯船から持ち上げ、お風呂椅子(名前あってるかな?)に座らせる。

 その背後に立ち、白いモクモクを使い石鹸を泡立てる。

「その石鹸、何か良い匂いがするわね」

「本当だぁ」

 二人の賞賛の声に、わたしは胸を張る。

「エルフのお姉さんとわたしの合作なんだよ」

「エルフのお姉さん?

 さっきも言ってたけど、サリーさん、エルフと知り合いなの?」

「うん、お姉さん一人だけだけどね」

と言いつつ、タオルを外したシャーロットちゃんの背中を見る。


 傷一つ無い、なめらかお肌がそこにあった。


 うむ、ママ達みたいに思いっきりゴシゴシやったら、流石に駄目だよね。

「この肌は、わたしが守らねば!」などと使命感に燃えつつ、白いモコモコでシャーロットちゃんの体を撫でるように洗い始める。

 とたん、シャーロットちゃんが身をねじり始めた。

「ひゃ!

 サリーお姉様!

 ひゃひゃ!

 くすぐったい!」

 あれ?

 ママ達からはこんな反応が返ってきたことないんだけどな?

「くすぐったぁ~い!」

と言いながら、ついにはお風呂椅子から落ちそうになり、白いモクモクで慌てて支えた。


 う~ん、おかしいなぁ。


 仕方が無く、タオルで洗ってあげることに。

 ただ、タオルというか布だから、肌が痛まないか心配だ。


 それが終わると、髪に取りかかる。


 はじめに、左手で白いモクモクを出すとシャーロットちゃんの目の上に(ひさし)を作る。

 目の中にお湯が入らないようにするための対策だ。

 続いて「お湯を頭から掛けるよ」と断りつつ右手で出した白いモクモクからお湯を流す。

 髪が十二分に濡れたら、石鹸と同じくエルフのお姉さんとの合作ローズマリーリンスで丁寧に洗う。

 こちらは手でやってあげているから、くすぐったいとは言わなかった。

 それにしても、シャーロットちゃんの髪――これぞ金髪ってほどの黄金色でキラキラしている。

 ヴェロニカお母さんも同じなので、その血を受け継いでいるのだろう。


 因みに、イメルダちゃんは焦げ茶っぽい色をしている。


 お父さんの血が強いのかな?

 でも、イメルダちゃんは目鼻立ちがくっきりと整っているから、地味な印象を受けない。

 多分、大人になったらとてつもない美人さんになるだろう。

 などと思いつつ、最初の手順と同じ要領で、シャーロットちゃんの髪に付いたリンスをお湯で流す。

「じゃあ、イメルダちゃんと交代」

 シャーロットちゃんは「うん」と答えつつ立ち上がると、浴槽に戻る。

 入れ替わりにイメルダちゃんが、なにやら少し警戒しつつお風呂椅子に座った。

「じゃあ、体を洗うよ」と言いつつ、白いモクモクで泡を立てる。

 すると、イメルダちゃんがなぜか待ったをかける。

「ちょちょっと、それはくすぐったいんじゃないの!?」

「え?

 だって、シャーロットちゃんが駄目でも、イメルダちゃんは平気かもしれないじゃない」

 それに、肌に悪そうなのであのタオル(というか布)は出来れば使いたくないのだ。

 あと、白いモクモクに比べて時間がかかる。

 ヴェロニカお母さんも後に控えているので、速やかに終わらせたいのだ。

「いやいやいや、あのね!

 わたくし――」

 などと、イメルダちゃんはなにやら言い始めたけど、気にせず、手でイメルダちゃんが巻いているタオルを外すと、白いモクモクで背中から脇を洗い始めた。

「ヒャハヤ!

 ヒャハハハハハ!」

 イメルダちゃんの奇っ怪な笑い声が、浴室内に響きわたった。


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