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ママ(フェンリル)の期待は重すぎる!【Web版】  作者: 人紀
第五章

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呼び方論争

 ヴェロニカさんの服について、手芸妖精のおばあちゃんにお願いすると、取りあえず、元々着ていた物に手入れをして、なんとかすると受け合ってくれた!

 頼もしい!

 ヴェロニカさんに紹介後はお任せして、女の子達をテーブルに向かわせる。

 今ある椅子だと、シャーロットちゃんに合わないので、クッションで調整する。

 大丈夫?

 なら良かった!

 イメルダちゃんもちょっとテーブルが高い位置に来てるかな?

 調整する?

 大丈夫?

 無理しないでね。

 そういえば、年齢は幾つぐらいなんだろう?

「二人の年齢は幾つなの?」

 イメルダちゃんが答えてくれた。

 イメルダちゃんは十歳で、シャーロットちゃんは八歳かぁ。

 見立てよりも一つ下だったか。

 え?

 わたし?

「多分、十三歳」って答えたら「多分って何よ」とイメルダちゃんに呆れた顔をされてしまった。

 だって、誕生日なんて分からないから、その辺りはしょうが無い。

 ママと暮らすようになってから、十二回春が来たから、多分、十三歳ぐらいって事だろう。

 あれ?

 ひょっとして、十二歳?

 ま、いいか。

「ごめんね、こんな物しか無くて」

と言いつつ、スープを並べていく。

 イメルダちゃんは「そんなことは無いわ。美味しそう」と言いつつ、少し眉をひそめる。

 あ、ナイフとフォークとかの置く位置が違ったのね。

 失礼しました。

 二人とも、上品にナイフとフォークを使い、スープの中のお肉を切り取り、口に入れる。

 すこし、驚いた顔になった。

 イメルダちゃんが訊ねてくる。

「柔らかくて、美味しいわ。

 何のお肉なの?」

「弱クマさん」

「じゃく?

 熊のお肉なのね、初めて食べたけど美味しいわ」

 シャーロットちゃんもニッコリ微笑みながら頷いてる。

 良い所のお嬢様にも好評を得るとは、弱クマさん、やるなぁ。

 などと感心していると、短髪、赤毛の妖精メイドちゃんが飛んできた。

 この子のことは、梅の花を連想したので、ウメちゃんと呼んでいる。

 どうしたの?

 え?

 もう食べて良いか?

 視線を向けると、切り分けられたケーキを前に妖精ちゃん達がこちらを凝視していた。

 心なしか目が血走っている。

 ちょっと、怖い!

「どうぞ」と言うと、皆一斉に食べ始めた。

 もう、口と言うより、顔面から食べに行っている勢いだった!

 ちょっとどころじゃ無く、怖い!

「えええ……」とイメルダちゃんとシャーロットちゃんもその様子に引いている。

 そりゃ、誰だってそうなるよね。

 あ、今、服を直してくれているお婆ちゃんの分も取っておいてね!

 大丈夫?

 なら良いけど。

 妖精メイドのウメちゃんが一切れずつ乗った皿を二つ、こちらに持ってくる。

 ん?

 ああ、わたし達の分ね。

 ……四人なんだけど。

 いや、まあ、良いけど。

 すると、ゴロゴロルームから「サリーちゃん」と声をかけられた。

「どうしたの?」と入り口まで行き訊ねると、服を着たヴェロニカさんが立っていて、「どう?」と少しポーズを決めていた。

 おお、違和感なく仕上げられている!

 手芸妖精のおばあちゃん、凄い!

 助手の妖精ちゃんと共にヴェロニカさんの周りを飛んでいる本人も、満足げにしている。

「良いと思う」と答えると、ヴェロニカさん、ニッコリ微笑んだ。


 まさに、花が咲くような華やかな笑顔だ。

 本当に美人さんだなぁ。


 多分、前世の女優さんにも、この人以上の人はいないんじゃないかってぐらいだ。

 そんな美人さんが「わたくしもあちらに行って良いかしら?」と訊ねてきた。

「椅子がないんだけど」

「代わりになる物……木の箱とかあればそれで良いんだけど」

 木の箱かぁ。

 それならあるかも。

 荷物置き場になっている部屋に移動して探る。

 石鹸とリンスが入っていたこれで良いかな?

 運びつつ「あったよぉ」と言い設置する。

 視線を向けると、ヴェロニカさん、まだ部屋の中でニコニコしながら立っていた。

 ……あ、靴が履けないのね。

 ゴロゴロルームに戻り、ヴェロニカさんを座らせ靴を履かせてあげる。

「そういえば」と振り返り、赤ちゃんを見る。

 赤ちゃんを目から離しちゃマズいよね。

「座ってて」とヴェロニカさんに指示をすると、右手から白いモクモクを出し、籠ごと持ち上げゆっくりと引き寄せる。

 そして、両手で持つとヴェロニカさんの隣に――あ、妖精メイドのサクラちゃんがもう一箱持ってきてくれた。

 確かに、床に置くのは良くないよね。

「サクラちゃん、ありがとう」とお礼を言いつつ、籠をその上に置く。

 取りあえず、これで良いかな?

 ヴェロニカさんは木の箱に座り、ケーキを一生懸命頬張る妖精ちゃん達を楽しそうに眺めている。

 シャーロットちゃんが「あのう」と声をかけてきた。

「サリーお姉様、シャーロット、スープを食べ終えた」

「サリー……”お姉様”!?」

 え!?

 わたし、お姉様!?

 そんな呼ばれ方をしたの、前世を含めて初めてなんだけど!

 いや、そもそも、姉と言われたのも初めてなんだけどぉぉぉ!


 ハッとして、視線をイメルダちゃんに向ける。


 もしや、こちらからも”お姉様”!?

 こちらの期待に気づいたのか、顔を強ばらせたイメルダちゃんは、プイッとそっぽを向く。

「サリーさんは”お姉様”って感じじゃないわ」

 えええぇ~ショック……。

 いやまあ、その通りだけどね。

 そもそも、わたし、妹キャラだしね。

「お、綺麗に食べて偉いね!」とシャーロットちゃんを褒めつつ、使用済みのスープ皿やナイフとかを流し台に運ぶ。

 そして、白いモクモクから出した水と、常備していた石鹸で洗う。

 水を流し台にある排水溝に流すと、白いモクモクで乾燥させる。


 ヴェロニカさんの分をよそわなくては。


 スープ皿の上にある程度入れてから、ヴェロニカさんに分量を確認する。

「ヴェロニカさん、これぐらいで良い?」

「ええ、十分よ。

 あと、わたくしのことこそ、”お姉様”と呼んでも構わないのよ?」

「え?

 三児の母なのに?」

「三児の母でも、よ」

 えぇ~……。

 何故か目をキラキラさせているヴェロニカさんは、まあ、綺麗だし、高貴そうだし、三児の母とはいえ若そうだけど……。


 お姉様はちょっと違う気がするなぁ。


 近所にいる同級生とかのお母さんって、何て呼ばれるんだっけ?

 そうそう、漫画とかでは……。

「ヴェロニカおばちゃん?」

「お、おばちゃん!?」

 ヴェロニカさんが、何故かショックを受けた顔になる。

 いや、現実的に仕方がないと思う。

 気にせず、ヴェロニカ”おばちゃん”の前にスープを置くと「サリーさん、サリーさん」とイメルダちゃんが焦った感じで言ってくる。

「せめておば様と呼んで差し上げて!」

「えぇ~

 おば様なんて言うの、恥ずかしいなぁ。

 だったら、ヴェロニカおばさんかな?」

 不満そうなヴェロニカさんはさらに言いつのる。

「であれば、ヴェロニカお姉さんならどう?」

「えぇ~三児の母なのに?」

「三児の母だからこそ!」


 意味が分からない。


 すると、少し悪戯っぽく言う。

「なんなら、お母様でも良いわよ」

 いやいや、わたしのお母さんはママだから!

 ……あれ?

 よく考えたら、わたしってシャーロットちゃんの実の姉でもないのにお姉様と呼ばれたんだよね?

 だったら、ヴェロニカさんをお母さん呼びしてもおかしくないのかな?

 前世って友達がいた記憶が無いし、当然、そのお家にお呼ばれした記憶も無い。

 だから、知らないだけで、友達の母親のことをお母さん呼びしてもおかしくないのかな?

 あれ?

 良く分からなくなっちゃった。

「それって、変じゃないのかな?」

「変じゃないわよ!

 普通のことだわ」

 ニコニコ答えられて、困ってしまった。

 そうなのかな?

 良く分かんない。

 ……まあ、いいか?

「じゃあ、ヴェロニカお母さんってことで」

「え――」

「サリーお姉様!」

 シャーロットちゃんに呼ばれて視線を向けると、ちょっと不機嫌そうな彼女の視線は、先ほど妖精メイドのウメちゃんがよこしたケーキに注がれている。


 ああ、ケーキ待ちなのかな?


 ひょっとして、あれが食べたくてスープを急いで食べたのかもしれない。

「はいはい、ちょっと待っててね」

 キッチンに移動し、ケーキ用フォークを持って戻る。

 これも二本しかない。

 二人分、買い揃えないと。

 ケーキの皿にそれぞれ置き、シャーロットちゃんとスープを食べ終えたイメルダちゃんの前に運ぶ。

 シャーロットちゃんが、困惑気味に見上げてくる。

「お母様とサリーお姉様の分は?」

「わたしは良いの。

 この前食べたし」

 シャーロットちゃん、そういうことを気にすることが出来るなんて、よい子だなぁ。

 なんて感心していると、「わ、わたくしはーー」というイメルダちゃんの声が聞こえてきた。

 そちらに視線を向けると、その隣にいるヴェロニカお母さんがビシっと手を挙げて主張する。

「わたくしの分は!」

 えええぇ~

「ヴェロニカお母さんは大人だから、甘い物は食べないでしょう?」

 至極まっとうなことを言ったのに、ヴェロニカお母さんは何故か、驚愕するように目を見開いた。

「サリーちゃん、大人でも甘い物は食べるわよ!

 特に、ご婦人方にとってはとても大切なーー」

「えぇ~わたしの格好いいママは、甘い物なんて食べないよ!」

 わたしが作った物は食べてくれたけど、あれは母親としての義務感だもんね。

「ヴェロニカお母さんも三児の母なんだから、そんな格好悪いことをしちゃ駄目だよ」

 わたしのありがたい忠告に対して、ヴェロニカお母さん、しばらく俯き、体を震わせていた。

 そして、顔を上げると断言した。

「わたくし、甘い物が食べられないのなら、子供のままで良いわ!」


 キリっとした顔でお馬鹿なことを言うヴェロニカお母さん、無駄に格好良かった。


 えええぇ~

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