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ママ(フェンリル)の期待は重すぎる!【Web版】  作者: 人紀
第二十一章

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皆にお礼を言う!

 結界の外に出て、ワイバーン(偽竜君)の元に行く。

 彼が倒れているだろう辺りから、沢山の気配を感じる。


 うん、あれはいつものだ。


 更に近づくと、恐らく、一族総出でやってきた白狼君達が、わたしが頭を吹き飛ばしたワイバーン(偽竜君)の一匹を(かじ)っていた。


 ……いや、まあ、助けてくれたからね。

 今回は、まあいいけどね……。


 白狼君リーダーが近寄ってきたので『引きつけてくれて、ありがとう! 皆大丈夫だった?』と、がうがう訊ねる。

 それに対して、”大丈夫ですよ、主様!”と言うように白狼君リーダーは吠えた。


 うん、大丈夫なのかな?


『怪我した子は居る?

 治療するよ』

と続けると、白狼君リーダーは群れの方に振り返り「がうがう!」と吠えた。

 すると、何頭かが食べるのを止めて、近寄ってきた。

 やっぱり、無傷とはいかなかったか。

 頭から血を流し、白い毛皮を染めている子や、足を引きずる子など五頭ほどいた。

 なので、『ありがとうね』とお礼を言いつつ、治療魔法をかけた。

 皆、どこか誇らしげだった。



 白狼君達を治療し終えた後、巨大蜂さんの巣の方に歩いて行く。


 途中、近衛兵士妖精の黒風(こくふう)君達が警戒するように飛んでいたので、「白狼君()を守ってくれてありがとう!」と手を振る。

 好青年な近衛兵士妖精君を含む皆は、大したことないというように、ニッコリ微笑んでくれた。

 そして、代表するように黒風(こくふう)君が身振り手振りをする。


 どうやら彼らは、もう少し、周りを見回るとの事らしい。


「巨大蜂さんにお礼を言ったら、わたしも合流するよ」と言うも、黒風(こくふう)君は首を横に振った。


 え?

 家に居た方が良い?

 側に居る?

 あ、イメルダちゃんの側に居て上げた方が良いって事?

 周りは僕らにお任せ?

 優し頼もしい!


 家の方を向く黒風(こくふう)君は悪役妖精同様、心配げだった。

「そうだね。

 わたし、側に居て上げる事にするよ」

と答えると、微笑みつつコクリと頷いた黒風(こくふう)君は手を振って、皆と見回りに戻っていった。



 しばらく行くと、兵隊蜂さん達が羽を鳴らしつつ飛んできた。

 あ!

 いつもの兵隊蜂さん、甲殻が割れ、足の一本がおかしな感じに曲がっている。

「大丈夫!」

と駆け寄ると、”これぐらい平気!”と言うように身振り手振りをする。


 いや!

 どうでもいいけど、その壊れた足を振るの止めなさい!


 急いで、治療魔法で治す。

 かろうじて付いていたのが幸いしてか、何とか治った。

 わたしだと、まだ、欠損したら治せないから本当に良かった。

「引きつけてくれてありがとうね!」

とお礼をしつつ、他の兵隊蜂さんも癒やす。

 皆、”気にしないで!”とか”困った時はお互い様!”とか言うように身振り手振りをしてくる。


 優しい!


「何か、お礼がしたいんだけど」

と言うと、兵隊蜂さんは顔を見合わせる。

 そして、いつもの兵隊蜂さんが巣の方に前足を伸ばした後、そちらに向けて飛んでいった。


 女王蜂さんに訊いてくれって事かな?


 すると、兵隊蜂さんと一緒に女王蜂さんが飛んできた。

 そして、身振り手振りで言う。


 え?

 気にしなくて、大丈夫?

 以前、助けてくれたお礼?

 それより、小さい子――イメルダちゃん? が心配?

 うん、イメルダちゃんはわたしも心配……。

 あ、じゃなく、前に助けた分はお礼を貰ってるから、出来れば何かしたいと思ってるんだけど。


 女王蜂さんは少し考えるそぶりを見せた後、兵隊蜂さんを前足で招く。

 近づいた兵隊蜂さんと触覚を合わせ合い、何やら指示を出しているみたいだ。

 頷いた兵隊蜂さんは、巣の方に飛んでいく。



 兵隊蜂さんは一分もかからず戻ってきた。

 彼が抱えているのは――例の魔木(まぼく)君だ。

 女王蜂さんはそれを指しながら、身振り手振りをする。


 え?

 魔木(まぼく)君をもう少し成長させて欲しい?

 出来れば本数も増やして欲しい?

 そうすれば、害意のある魔獣も近寄りにくくなる?

 え?

 そんなに強いの?

 え?

 強いと言うより、居るだけで多くの魔獣が嫌がる、のね?

 でも、我が家の家族を襲うようだと困るんだけど。

 あと、蟻さんや、白狼君達も……。

 え?

 言って聞かせるから大丈夫?

 なら良いかな?


 相変わらず「ほぉ~ほぉ~」とか声(?)を上げている魔木(まぼく)君に近づく。

 ……そういえば、さっきの時点で成長が止まったように見えたんだけど……。

 でも、女王蜂さんが言うのだから、もう少し、大きくなるのかな?

 白いモクモクを上に被せる。

 そして、魔力を込めた。

「育てぇ~!」

 ……成長しない?

 すると、女王蜂さんが”もっともっと!”と言うように身振り手振りをする。


 いや、正直、スライムのルルリンの件もあるし、ちょっと、怖いんだけど……。


 などと思いつつ、更に力を込めて育てぇ~をする。

 すると、魔木(まぼく)君の幹からバキバキという音が聞こえ始める。


 こ、これは……。

 ひょっとして、女性向けWeb小説で良くある、魔木(まぼく)の殻を破り、見目麗しいイケメン君に生まれ変わるパターンか!?


 などと、しょうも無い事を考えつつ更に魔力を込めると――魔木(まぼく)君が突然、破裂した!?


「わっ!」

と飛び散る樹皮らしきものから、腕で顔を庇う。


 ヤバい、勢いよく魔力を与えすぎたかな!?

 恐る恐る、腕を下ろすと――そこにはイケメン――ではなく、先ほどの顔から強面にバージョンアップした灰色の魔木(まぼく)君が「ほぉぉぉ!」と吠えていた。


 高さは六メートルかな?

 先ほどまでは、どちらかというとノホホとした感じの目(樹洞(じゅどう)?)だったけど……。

 それが尖った感じになり、さらに樹皮がダーク色になった事も有り、ファンタジー作品の魔森にいそうな感じ生まれ変わっていた。

 枝の先に実っている(?)例のレモンっぽいものも大きくなり、意味も無く振っている。


 ……うん、なんとコメントしたら良いのか、分からない!


 ただ、女王蜂さんや兵隊蜂さんは嬉しいのか、そんなダーク魔木(まぼく)君の周りを飛び回っている。


 ……まあ、喜んで貰えたなら、良かった!


――


 家に戻ると、寝室の中に入る。

 いつものベッドにはイメルダちゃんが目を閉じ、横になっていた。


 因みに、魔木(まぼく)君は、女王蜂さんに促されるまま、例の巨大でダークな彼の他に五本ほど育てて上げた。

「ほぉ~ほぉ~」とくぐった声を上げながらうろちょろしている様子は、まさに魔境の森といった感じで、少々後悔した。


 彼らの声を夜とかに聞いたら、凄く怖そうだ。


 いや、それはともかく、ベッドの脇まで行くと、近くに備え付けていた椅子を引き寄せて座る。

 気配に気づいたのか、イメルダちゃんが目を開けた。


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