表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ママ(フェンリル)の期待は重すぎる!【Web版】  作者: 人紀
第二十一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

200/230

雄叫びの後の~

 ……。


 しばらくすると、むくむくと羞恥心が湧いてきた。

 たかだか、ワイバーン(偽竜君)相手に、まるでドラゴンでも仕留めたかのような雄叫び――これは実に恥ずかしい!


「あああぁ~!」

 羞恥の余り、顔を両手で押さえた。

 完全なる黒歴史――ママ達に見られていなかったのは、ほんと、幸いだ!


 だって、相手はどこまで行ってもワイバーン(偽竜君)だよ!

 大きい(クー)兄ちゃんなんて、”威嚇の一吠え”でやっつける、あのワイバーン(偽竜君)だよ!

 もし、ママが側に居たら『サリー(小さい娘)……。流石にその程度の相手にそんなに喜ぶのはちょっと……』と呆れた様に目を細められていただろう。


 近衛兵士妖精の白雪ちゃんが”どうしたの? 大丈夫?”と心配するように飛んできたので「大丈夫」と弱々しくながらも答えておいた。


――


 荷車と共に、家に戻る。

 一応、妖精ちゃん達に毒のチェックをして貰った後「ただいまぁ~」

と家に入る。

 そこに、シャーロットちゃんが抱きついてきた。

 わたしをぎゅっと抱きしめる妹ちゃんを見ながら、シャーロットちゃんにも心配をかけてしまったようだと反省する。

「心配かけてごめんね。

 もう、やっつけたから」

と背中を撫でて上げると、「うん!」と笑顔を向けてくれた。


 寝室の方から気配を感じ、視線を向けるとヴェロニカお母さんが部屋から出てきた。

 そして、わたしに気づくと心配そうに近づいてきた。

「サリーちゃん、大丈夫だった?」

「うん。

 ……イメルダちゃんは?」

「イメルダは一応、寝かせたわ」

「そうなんだ……」

 目の縁がジンジン痛くなり、唇を噛んだ。


 情けない。

 わたし、情けない。


「ヴェロニカお母さん、ごめんね。

 イメルダちゃんに怖い思いをさせて、ごめんね……」

「何言ってるの、サリーちゃん!

 サリーちゃんは何も悪くは無いでしょう?」

 ぽろぽろ涙を流すわたしを、ヴェロニカお母さんは駆け寄り、優しく抱きしめてくれる。

「でも……」

 涙が溢れて止まらない。


 わたしは油断してた。


 前回も大丈夫だったからって……。

 今回も大丈夫だって……。

 どこか油断していた。

 イメルダちゃんを守るために、やれる事は多分、沢山有った。

 それこそ、お願いして潮ちゃんだけでなく、白雪ちゃんや黒風(こくふう)君達にも来て貰う事だって出来たかもしれない。

 全員は無理でも、何人かは来てくれたかもしれない。


 でもしなかった。


 情けない……。

 本当に情けない……。

「でも、サリーお姉さまは、お姉さまを守ってくれた!」

 視線を下ろすと、シャーロットちゃんが目に涙を浮かべながら言ってくれた。

「そうよ!

 シャーロットの言う通り、サリーちゃんはイメルダを守ってくれたわ。 それに……」

 ヴェロニカお母さんは抱きしめる力を少し緩め、ニッコリ微笑んだ顔をこちらに向けながら言う。

「それに、サリーちゃんも帰ってきてくれた。

 わたくし、それ以上、何も言う事は無いわ」

 わたしはそれに対して「うん……」と答える事しか出来なかった。


――


 ワイバーン(偽竜君)を片付けるためと断り、外に出る。

 結界の外に、置きっぱなしなのだ。

 とはいえ、正直、彼らの処分については少し悩ましい。

 例えば、フェンリルファミリーであれば、普通に食べてしまえるワイバーン(偽竜君)であったが、彼らは毒持ちである。

 人間の――しかも女性や女の子達である、ヴェロニカお母さんら親子にそんなもの食べさせて良いのかという問題だってある。

 毒の検査をしてくれた魔法使いっぽいローブを着た妖精ちゃん(よく見ると大人のお姉さん)に訊ねると、偽竜君(彼ら)の毒は、彼らが死んだ後、放置すると無毒になるらしいから大丈夫なのでは? って事だったけど……。

 一応、組合長のアーロンさんや解体所の所長グラハムさんにも相談した方が無難かな?


 因みに、ワイバーン(偽竜君)を全て倒したと言ったら、ヴェロニカお母さんは目を丸くして驚いてた。

 追い払ったと思ったみたいだ。


 でも、ワイバーン(偽竜君)は集団で行動するから、下手に逃すと、仲間を連れて戻ってくる可能性があるのだ。

 その辺りの説明をしていると、シャーロットちゃんが「ワイバーン、見てみたい!」とか言い出した。


 いや、R十五指定になる程度には、グロテスクな有様になっているんだけどなぁ~


 悪役妖精が倒した奴なら、上手い具合冷凍にして、くっ付ければ、見れるものになるのも有るかな?

「今、外に出しっぱなしにしてあるから、ひょっとしたら、他の魔獣に食べられちゃったかも」とか何とか言っておいたけど……。

 この辺りも、悩みどころだ。

 そんな事を考えていると、結界に沿って飛ぶ妖精の姿が見えた。


 悪役妖精だった。


 警戒しているのか、外の様子を見ている。


 ……うん、そうだよね。

 倒したワイバーン(偽竜君)が全てと考えるのは早計だよね。

 わたしも見回らなくちゃね。


 軽く駆けて近づき「さっきはありがとう!」と改めてお礼を言うと、それに気づいた悪役妖精はその場に止まり、”あれぐらい余裕だ”と言うように、キザっぽく髪をかき上げた。

 そして、”仕方が無いので、今度、イメルダちゃん()を連れて行く時は付いて行ってやろう”などと身振り手振りをしてくる。


 今度、か……。

 でも、あれだけ怖い目に遭ったのだ。

 イメルダちゃんはもう、行きたいとは思わないんじゃないかな?


 そのことを話すと、悪役妖精はチラリと家の方を見た。

 その目からは、どこか案ずる色が見えた。


 そして、何故か視線を上空に移した。


 まさか、ワイバーン(偽竜君)!?

 わたしもそちらを見たが、そこには大木があるだけだった。


 紛らわしい!


 少し、ムッとしながら視線を戻すと、悪役妖精が身振り手振り言う。


 え?

 すぐには無理だが、悪役妖精(自分)と近衛兵士妖精を二十人ぐらいで護衛できる?

 それなら、安心だろう?

 いや、それは心強いけど、そんな数は流石に無理じゃない?

 姫ちゃんや大木(ここ)の護衛も必要でしょう?

 え?

 それ以上の戦力を持つ妖精が動けるようになるから大丈夫?

 え?

 それって、どういうこと?


 わたしが訊ねているのに、悪役妖精は手を振り、離れていく。


 ちょっとぉ~!


 視線を大木に向け直す。

 悪役妖精と近衛兵士妖精の皆が二十人分て……。

 下手すると、大きい(クー)兄ちゃんを超える戦力じゃないかな?

 そんな強キャラな妖精ちゃんが、あの大木にはいるの?

 え?

 ひょっとして、姉姫ちゃん?

 いやいや、流石にあんなほっそりして綺麗な人が――。

 まさか、ね?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書籍版、『ママ(フェンリル)の期待は重すぎる!』好評発売中!

html>
↓書籍紹介ページ
ママ(フェンリル)の期待は重すぎる!(ツギクルブックス様)
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ