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ママ(フェンリル)の期待は重すぎる!【Web版】  作者: 人紀
第二十章

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我が家に待望のレモンがやって――来る?

 とはいえ、それ以外は特に何かする訳でもなく、ただただ、白色羊さんとイチャイチャしてるだけなので別に問題は起こす訳ではないから、良いんだけどね。


 有るとしたら、山羊さんが新参者を少々敵視してる事ぐらいか。


 もっとも、金色羊さんの方が格上らしく、山羊さんは表だって攻撃はしないし、金色羊さんは相手にしていない。

 それも、山羊さんは不満らしく、わたしに八つ当たりをしてきてるんだろうけどね。

「後で、大麦を上げるから、乳を搾らせて!」

 山羊さんを(なだ)めつつ、乳を頂く。


 そして、大麦を食べさせて上げる。


 機嫌良く、雄の山羊さんと共に大麦に食らいついていた山羊さんだったが、我らにも寄越せとメェ~メェ~言いつつ、金色羊さんが近づいてきたので、不満そうに顔を振った。

 もう、この子達は!

「はいはい、羊さん達は向こうに出して上げるから、そっちを食べて!

 もう、喧嘩をしない!」


 飼育って、なかなか面倒だ! 


 山羊さんや羊さんらを外に出して上げる。

 嬉しそうに駆ける姿を眺めていると、柵の向こうから何かが近寄ってくる気配を感じた。

 視線を向けると、黒色の彼ら、蟻さんだった。

 なにやら、持っているらしき前足を振っていた。


 お!

 ひょっとしたら、レモンかな!?


 急いで戻ると、山羊乳と卵をシルク婦人さんに渡し「ちょっと、蟻さんの所に行ってくる」と声を掛けた後、玄関を出ようとする。

 あ、イメルダちゃんが中央の部屋(食堂)に入ってきた。

「イメルダちゃん!

 蟻さんが来てる!」

と声を掛けると「そうなの? 今日は何かしら?」と興味深げに付いてきた。

「多分、レモンだよ!」

「ああ、頼んでいたわね」

 そんな事を言いつつ、玄関から出て、階段を下りる。

 蟻さんが結界の外で、顎をカチカチ鳴らして立っていた。

「蟻さん、レモンの種を持ってきてくれたの?」

 声を掛けつつ近寄る。


 レモンだったら、凄く嬉しい。

 ポン酢も作れるのもそうだけど、単純に色んな料理にかけるだけで凄く美味しいのだ。

 鶏肉、お魚もそうだけど、サラダにかけるのも良い。

 夏が近いからレモン水とかも良いかもしれない。

 あ、はちみつレモンってのもあった。


 すると、蟻さんは勿論だというように、胸(?)を反らす。

 そして、わたしに向かって前足を伸ばした。

「わ~い!

 ありが……とう?」

 蟻さんの前足に乗っている物に小首を捻った。


 あれ?

 わたしの知ってるレモンの種と違う。


 それは、前世ゴルフボールぐらいの大きさだった。

 まん丸で焦げ茶色で、なんだか、前世里芋っぽい感じがした。

 困惑しながら受け取ると、見た目よりずっしりと重い。

 そして、何というか、薄らだが魔力を感じた。


 え?

 何これ……。


 だが、蟻さんに視線を戻しても、自慢げな彼は”手に入れるの、大変だった”と言うように身振り手振りをしている。

 いや、え?

 これ、レモンなの?

 前世は勿論、今世で見たレモンの種とも、ずいぶん違うんだけど?

 イメルダちゃんも「それ、レモンの種」と訝しげにしている。

 だけど、蟻さんは何故か自信満々な態度で”早く育てて!”と身振り手振りで言ってくる。


 えぇ~


 ま、まあ、物は試しか。

 わたしが受け取ったそれを、地面に落とそうとするも、飛んできた妖精姫ちゃんに止められる。

 そして、外で育てるように身振り手振りで言われる。


 えぇ~


「いや、蟻さん。

 これ、絶対レモンじゃないよ?」

と言うも、早く早くと急かされる。

 同時に、妖精姫ちゃんにもっと遠くに行くよう指示を出される。


 えぇ~


 正直、九分九厘レモンじゃない。

 だけど、一厘だけの望みにかけてレモン(?)の種を地面に落とす。

 その上に土を被せると、白いモクモクで覆い植物育成魔法をかける。

「育てぇ~!」

 ニョキニョキと育って――木? かな?

 少し、後ろに下がると、ニョキニョキと高さにしてはやけに太い幹になって育っていき……。

 成長が止まった。


 ……え?

 なにこれ?


 高さは一メートルより少し大きいぐらい?

 中途半端に育った枝には中途半端な葉が付いている。

 幹の直径は一メートル弱ぐらいなので、ずんぐりとした印象を受ける。

 なんか、大木を中途半端な高さで切り、その上に葉っぱの付いた枝を突き刺した――そんなアンバランスさがあった。

 レモンどころか、前世の植物に思い当たる物がなかった。


 いや、何なの!?


 すると、突然、木が裂けるような乾いた音を立てつつ、その木ががくがく揺れ始めた。

 結界の中でイメルダちゃんが「だ、大丈夫なの!?」と言ってるけど、よく分かんない。

 視線を向けると、警戒してか近衛兵士妖精の白雪ちゃんや近衛兵士妖精の黒風(こくふう)君達がイメルダちゃんの周りで飛んでいる。


 これなら安心かな?


 視線を戻すと、バキバキ言いながら幹を震わせたその木(?)はブチブチ音を立てながら、足を振り上げるように地面から己の根っこを引き抜いた!?

 さらに、幹の中心辺りにひび割れる。

 それは大きく三つほど裂けて、まるで目と口のようだった。


 えぇ~!


 ついでに、口の位置にある裂け目から「ほぉ~!」とかいうくぐもった音(声?)が聞こえてくる。


 えぇ~!


 魔木(まぼく)じゃん!

 これのどこに、レモン要素があるの!?


 そんな事を思っていると、幹の脇からなにやらニョキニョキと太い蔓のようなものが伸びてきた。

 その先が何やら膨らんできた――と思う間に黄色い実を付けた。


 え?

 レモン?


 その実がパカッと半分に割れ、蛇の口の様なそれがパクパクと開け閉めしている。


 ……。


 ついでに、その口から漏れているのか、酸っぱ(くさ)い空気が辺りに漂い始める。


 ……。


 その口が蟻さん達の方に伸びるので、怯えた彼らは、わたしの後ろに逃げようとする。


 ……。


 わたしはいつもの代表っぽい蟻さんを左手で止めると、その背を魔木(まぼく)の方に押しやる。

 ”えっ! ちょ! 何!?”と言うように足をバタバタさせる蟻さんに「レモンなんでしょう? 何で逃げるの?」と更に押す。

 結界の中から、困った感じのイメルダちゃんが「止めて上げなさい!」と言うから、許して上げるけど、もう……。

「がっかりだよ!

 もう、蟻さん、がっかりだよ!」

 わたしは膝に両手を乗せて叫んだ。


「これ?

 どうすれば良いの?」

 わたしはこめかみに指を当てながら言うと、イメルダちゃんが「う~ん……。そうね……」と悩ましげに言った。

 そんなわたし達の前で魔木(まぼく)君は「ほぉ~! ほぉ~!」とか言いつつ、根をわにゃわにゃ動かし移動しつつ、辺りを見渡している。

 因みに蟻さんには、約束通りメープルバターが入った壺を渡して帰らせた。

 よくよく考えたら、わたしの説明も不明瞭だったし、それに対して蟻さんなりに見つけてくれたのが”魔木(これ)”だと思い直したからだ。

「ごめんね、蟻さんは悪くない。

 わたしが蟻さんに期待しすぎていたのが悪いよね」

と壺を渡し、「もう、レモンは不要だからね」と言っておいた。

 蟻さんは何やら困惑している感じだったけど「大丈夫! 蟻さんはいつも通りで良いよ」と言っておいた。


 いや、それはともかくだ。


「困ったなぁ~

 魔木(まぼく)君なんて近くにいて貰っても困るんだけど。

 かといって、ここまで育てておきながら倒すのもなぁ~」

「そうね、そうよね……。

 どこか、離れた場所に連れて行って、解放する――というのはどう?」

「それ、良いのかなぁ~」

 前世の知識が有る身としては、授業で習った外来種、在来種問題について考えちゃうんだけど……。

 う~ん、かといって魔木(まぼく)君なんて飼えるものなのか?

 悩ましいなぁ~


 なんて考えていると、ブ~ンとの音と共に、何かが飛んでくる気配を感じた。


 視線を向けると、お隣さんの兵隊蜂さんがこちらに向かって飛んできた。

 そして、魔木(まぼく)君の上に止まった。


 え?

 いいの?


 驚いていると、兵隊蜂さんは顎をカチカチ鳴らしながら身振り手振り言う。


 え?

 魔木(この子)は倒さないで?

 我らと生活する?


 結界から出てきた妖精姫ちゃんと共に身振り手振りするには、巨大蜂さんと魔木(まぼく)君は共存共栄の間らしい。


 それは良いけど、うちの家族を襲うような事は止めてよ?

 え?

 人間なんて食べない?

 小動物が主食なのね。

 我が家に害を与えないなら、問題ないかな?


 兵隊蜂さんは嬉しそうに魔木(まぼく)君を持ち上げ、飛んでいった。

 ま、まあ、近くにいればある程度管理できるし、大丈夫――だよね。


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