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ママ(フェンリル)の期待は重すぎる!【Web版】  作者: 人紀
第十九章

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大河に行こう!1

 わたしがケルちゃんに跨がると、イメルダちゃんが「荷車は持って行かないの?」と訊ねてくる。

「まだどこにあるか分からないから、身軽な状態で見つけようと思ってる」


 荷車があると、森の中とか移動しにくいもんね。


 そのことを話すと、イメルダちゃんが合点がいったという顔で頷いた。

 ん?


「それはそうと、イメルダちゃん、顔、赤くない?」

「え?

 そう?」

 熱でもあるのかと思って掌でおでこを触る。

 イメルダちゃんは少し恥ずかしそうにしたけど、大事な事だと分かっているからか、避けなかった。

「熱は無い、かな?

 ひょっとして、日焼けした?」

「え?

 あ、そうかも」


 お嬢様として、それはよろしくない。


 見送りに来てくれてた妖精メイドのサクラちゃんに「手芸妖精のおばあちゃんにツバの広い帽子、作って貰えないかな?」と訊ねてみる。

 ニッコリした妖精ちゃん、頼んでおくと身振り手振りをしてくれる。


 ありがたい!


 フェンリル帽子にはツバが無いからね。

「汗が出たらきちんと拭いてね。

 体を冷やしちゃう場合もあるし。

 あと、水や塩分も定期的に取ってね」


 熱中症は恐ろしいのだ。

 下手をしたら、命を落とす事だって有るし。

 まあ、前世の受け売りだけどね。

 わたしの説明に、イメルダちゃんは「分かったわ」と神妙な顔で頷いて見せた。


 そういえば、お嬢様は日焼けをしてはいけないって聞いた事があったなぁ。

 そうすると、帽子だけでは足りないかな?

 日傘とかもあると良いかな?

 後、日焼け止めとか……。

 なんか、Web小説にいくつか書いてあったから、作ってみるかな?

 因みに、前世は記憶に無いから分からないけど、今世のわたしは何故か日焼けをした事が無い。

 前世で、日焼けをしにくい人がいると聞いた事があった気がするので、恐らく今世のわたしはそれなのだろう。


――


 ケルちゃんに乗って、東に向かう。

 森を進み、沼地を越え、再度、森に突入し、木々を抜けると、目の前に巨大な川が広がっていた。


「うぁ~大きいね!」

 わたしが声を上げると、センちゃんの頭の上にいる青空君が振り返り、コクコク肯定してくれる。

 ケルちゃんも、初めて見る大河に驚いているのか、川岸で止まり嬉しそうに「がうがう!」言っている。


 う~ん、ここまで来るのに地味に疲れちゃった。


 まあ、移動はそれほどでも無い。

 ケルちゃんに乗っていたしね。

 前世、ライオンサイズな上、三つ首だけど、彼女は器用に森の木々を縫うように駆けて行った。

 途中、前世ゴリラを一回り大きくした魔物が五匹ほど木の上から襲ってきて、白いモクモクシールドで弾き飛ばしたんだけど……。

 近衛兵士妖精の青空君に、”僕の仕事を取らないで!”という様にプリプリしながら身振り手振りで言われてしまった。

 なので、次に赤斑巨大蛇君が飛びかかってきた時にはお任せしようとしたの。

 近衛兵士妖精の青空君も意気揚々と飛び上がろうとしたんだけど……。

 赤斑巨大蛇君、近衛兵士妖精の黒風(こくふう)君が出した、黒い刃で両断されてしまった。


 ”絶対わざとだ!”、”わざとじゃ無い!”とケルちゃんの上でじゃれ合う二人を見て、男子って奴は……と遠い目になっちゃったよ。


 そんなしょうも無いやり取りを何度かやりつつだったので、少々疲れてしまったのだ。


 向こう岸が見えないってほどではないけど、かなり大きい。

 青色に輝く水がゆったりと流れている。

 魔物は……いるのかな?

 よく分からない。

 水中にいる場合は探りにくいんだよね。


 ケルちゃんから下りる。


 足下は砂だ。

 確か、下流に行くに従い、砂や石が小さくなるって前世で習った気がする。

 異世界だって、その辺りは多分一緒だろう。

 そうすると、ここは下流って事になるのかな?

 でも、粒が荒い気もするから、下流に近い、中流なのかもしれない。

 下流……ってことはその先は海って事かな?

 近いなら行ってみたい気もするけど、今はそんな事をやっている場合じゃない。

「おじいちゃん、ここら辺の土で良い?」

 ケルちゃんの上にいる物作り妖精のおじいちゃんに訊ねると、おじいちゃんは身軽な感じに地面に下りた。

 そして、地面を触る。


 どう?

 え?

 粘土質だけど、不満?

 岸沿いに歩くの?

 はいはい、了解しました。


 物作り妖精のおじいちゃんをケルちゃんに乗せ直し、わたしはケルちゃんの横を歩く形で進む。

 すると、赤褐色の土が向き出ている所で、物作り妖精のおじいちゃんが身振り手振りをする。


 え?

 これが良いの?

 掘れば良いのね?

 でも、ちょっと待っててね。


 わたしはケルちゃんと川の間に入ると、白いモクモク盾を展開する。

 同時に、水中から巨大な口が飛びかかってきた。


 口というか、鰐さんだ。


 まあ、いくら水中にいても、あそこまで露骨にタイミングを計るためにうろちょろされたら、そりゃ、分かるよ。

 ガン! とぶつかってきた鰐さんを、本当は怖いスライム張りに、白いモクモクを大きく広げ、がっちり捕まえる。


 鰐って美味しいんだっけ?


 白いモクモクの中で暴れる鰐さんの首を、左手で出した白いモクモク刀で引き裂きつつ考えていると、物作り妖精のおじいちゃんが身振り手振りをしてくる。


 え?

 欲しい?

 鰐肉が欲しいの?

 違う?

 ああ、皮ね。

 色んな物に使えるから、保管しておきたい?

 構わないけど、おじいちゃん、(なめ)せるの?

 わたし、(じゃく)クマさんとかならともかく、鰐さんなんてやった事ないよ?

 え?

 おじいちゃん達も無理?

 町でやって貰うのね、はいはい。


 すると、青空君が目の前に飛んでくると、プリプリ怒りながら身振り手振りをしてくる。


 え?

 僕も気づいていた?

 やっつけようとしてた?

 ごめんごめん、今度はお願いするから。

 うんうん、土を掘らせて貰うから、その間はよろしくね!


 わたしは白いモクモクをシャベル型にすると、物作り妖精のおじいちゃんの指示の元、ザクザク粘土を掘る。

 気配を感じたので、左手を後ろに伸ばし、がっしりと”黒風(こくふう)君を”掴む。


 ”え? 何?”って顔を向ける黒風君に「揉めるから、横からかっさらおうとするの止めなさい!」と注意する。


 その間に、川から飛び出てきた巨大ピラニアみたいな魚を、青空君がサーベルで切り裂いた。

 ようやく、仕事が出来た事に満足なんだろう青空君は、爽やかな笑顔をこちらに向けてきた。


 ふむ、男子って、本当に面倒くさい。



 粘土をある程度掘ってから考える。

 出来れば、魚も捕っておきたいなぁ。

 そこまで遠い訳では無いから、もう一度来れば良いと言えば良いんだけど――おじいちゃんの(げん)じゃ無いけど、川を見ると口が魚を食べるモードになってしまった。

 もっとも、ママの洞窟近辺にある川は、こんなに大きくなかったから、上手く捕れるか分からないけど。

 そのことを近衛兵士妖精君達に話すと、青空君が”だったら、さっきのを逃すんじゃ無かったぁ~! 失敗したぁ~!”みたいに身振り手振りをしている。

 いや、どちらにしても、あんな巨大ピラニアみたいなのは、いらなかったけどね。

 あれ?

 でも、前世の世界でもピラニアって食べられてたんだっけ?

 ……今度捕まえたら、試してみるのも悪くないかな?


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