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ママ(フェンリル)の期待は重すぎる!【Web版】  作者: 人紀
第十四章

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我が家に到着すると……。2

 大ウサギ君のお肉がお預けになり、残念がるシャーロットちゃんを宥めつつ、食料庫に向かう。

 入れて戻ると、中央の部屋(食堂)手前でイメルダちゃんが待ち構えていた。

 イメルダちゃんは中央の部屋(食堂)を気にしつつ、言う。

「サリーさん、ごめんなさい。

 サリーさんのお母様からの大切な寝具を汚してしまって」

 ん?

 ずいぶん、律儀だなぁ。

 さらに、イメルダちゃんがいうには、シルク婦人さんと一緒に洗おうと思ったけど、布団のシーツの大きさに対して、洗濯板のサイズや、そもそも洗い場が狭いなどの問題で上手くいかず、そのままになっているらしい。

 まあ、一応で買ってきた洗濯板だから、大体服が洗えれば良いぐらいのサイズだしね。

 そもそも、こんな真冬の中、手で洗うなんて、下手をしたら風邪を引いてしまう。

 だから、わたしを待ったのは正しい。

「大丈夫だよ。

 白いモクモクで洗えば、あっという間だし、凄く綺麗になるしね」

「でも、洗ったら中の毛が悪くなってしまわない?」

 ああ、確かに動物の毛だとそういうのもあるか。

「大丈夫!

 ママから貰った毛は、何十回も洗ってもくたびれたりしない、最高のものだから!」

 実際、ママの毛で編んだ服は、毎日洗ってもへたった事はない。

 体が大きくなった場合はともかく、古くなったからという理由で新調した事はない。

 流石、ママ! である。

「だから、気にしないで」と言ってあげると、ようやく安心したのか、イメルダちゃんは「それなら良かったわ」と微笑んでくれた。


 中央の部屋(食堂)に戻ると、テーブルの上にある席に座る妖精姫ちゃんに「留守の間、家や皆を守ってくれてありがとう」とお礼を言っていると、シャーロットちゃんがくっ付いてきたのでいつもの席に座りつつ、家での話を聞く。

 同じく、いつもの――わたしの隣の席に座ったシャーロットちゃんは少し考えた後「お母様とエリザベスと一緒に居たの」と言った。

 それなら、特に問題は無いかな?

と思いつつ「イメルダちゃんはどうだったの?」と話を振る。

 上の妹ちゃんもいつもの席に座りつつため息をついた。

「サリーさんがやっている通りの事をしようと思ったけど、上手くいかないって事がよく分かったわ」

「白いモクモクの事?」

「それ以外もよ」

「あら、イメルダは良くやっていたと思うけど?」

とヴェロニカお母さんも椅子に座りつつ言う。

 それに対して、イメルダちゃんは苦笑しつつ、首を横に振った。

「サリーさんはわたくしが想像しているよりも、ずっと凄いんだと実感しただけ、良い経験が出来たと思います」


 えぇ~?

 一体何があったの?


 でも、余り話したくなさそうなので、とりあえずはそのままに、ヴェロニカお母さんに視線を向けた。

「ヴェロニカお母さんは何してたの?」

「わたくしはいつも通りね。

 エリザベスの様子を見つつ、刺繍をしていたわ。

 後は、シャーロットとお話ししたり、お昼寝したりかしら」

「ふ~ん」

 確かに、いつも通りか。

 まあ、たった一晩でそうは変わった事なんて起きないよね。

「サリーちゃんはどうだったの?」

とヴェロニカお母さんから訊ねられる。

 妖精メイドのサクラちゃん達がお茶を入れてくれたので、皆とそれを飲みつつ、白大猿君討伐について話をした。

 主力の男性冒険者を引きつけている隙に、村を襲った白大猿君に対して、イメルダちゃんは凄く驚いた顔で言う。

「ずいぶん、賢いのね。

 聞く限り、かなり恐ろしい相手に思えるんだけど」

「まあ、確かにね。

 だけど、戦う力ははっきり言ってかなり弱いから、さほど脅威には感じなかったけどね」

「弱いの?」

「う~ん?

 もちろん、一般人での対処は難しいかもしれないけど、中堅冒険者なら倒す事が出来ると思うよ」

 小白鳥の皆も、不意打ちやだまし討ちが無ければ、十分戦えていたし。

 まあ、最も、それらを含めて対処してこそ何だろうけどね。


 わたしは、近くを飛んでいた近衛兵士妖精君を一瞥しつつ言う。

「わたしはもちろん、多分、一緒に付いてきてくれた白雪(しらゆき)ちゃんの実力を見せても良い状況なら……。

 あの程度が数百匹いた所で、さほど時間をかけずに退治できたと思う」

 イメルダちゃんも近衛兵士妖精君を見つつ訊ねてくる。

「それ、白大猿が弱いのか、白雪ちゃんが強いのか、分からないんだけど」

「どっちもかな?

 近衛兵士妖精”君”も”ちゃん”も見た目は小さいけど、凄く強いからね」

「へ~」と感心したように声を上げるシャーロットちゃんの前に、近衛兵士妖精の(うしお)ちゃんがすーっと飛んできて、ドヤっと胸を張る。

 その姿が可愛かったからか、シャーロットちゃんは「凄いねぇ~」と表情を緩めた。


 それを横目に、イメルダちゃんが訊ねてくる。


「ねえ、サリーさん。

 あの、サリーさんがいつも悪役妖精と呼んでいる人がいるじゃない。

 あの人も強いんじゃないの?」

「え?

 悪役妖精?」

 いや、そんな事、考えた事もなかったなぁ。

 偉そうだとは思ったけど。

 リンゴのドライフルーツをご満悦な表情で食べている、妖精姫ちゃんに視線を向けた。

「ねえねえ、姫ちゃん。

 悪役妖精って強いの?」

 妖精姫ちゃんは”ん?”という様に視線をこちらに向け、こくりと頷いた。


 強い?

 え?

 近衛兵士妖精君達より強い?

 あんなにへっぽこなのに?


 へっぽこの部分に苦笑しつつ、妖精姫ちゃんは強いとアピールしてくる。

 そうなると、やっぱりそこそこ強いのかな?


 ん?

 でも、なんで悪役妖精の話なんか出てきたんだろう?


「悪役妖精と何かあったの?」

「え?

 ううん、ちょっと気になっただけ」

「そうなの?」

「ええ」

 う~ん、答えるイメルダちゃん、なんか目が泳いでる気がするんだけど……。

 あの悪役妖精、何かやらかしたのかな?

 だったら、許してはおけないんだけど……。

 チラリと妖精姫ちゃんに視線を向ける。

 それに気づいた姫ちゃんは、問題ないと言うようにジェスチャーをしてくる。


 う~ん、大丈夫なのかな?

 まあ、少し、注意はしておこう。


 あと、床で寝転がって眠ったって話に、皆凄く驚いていた。

「寝台じゃなく、床で何て、よく眠れたわね」

とヴェロニカお母さんに何やら凄く感心されたし、イメルダちゃんには「サリーさんも、大変だったのね」と何やら同情するように見られてしまった。

 何だか、前世日本人としては、ちょっと嫌な反応だったので、少し反撃してみる。

「いや、ゴロゴロルームだって同じでしょう?」

「でも、あの部屋は大きな寝台なんでしょう?」

 イメルダちゃんにアッサリ返された。

 ま、まあ、ゴロゴロルームは床が柔らかく出来てるしね。

 分が悪いと感じて、話を進める。

「魔法のやり方を教えたり、気になった魔術を習ったりしてたの」

と言うと、イメルダちゃんが食いついてきた。

「サリーさんの魔法!?

 わたくしも使えるようになりたいわ!

 どのようにするの!?」

 だから、「シューッ、ぐわっ! と出す感じ!」とちゃんと説明したら、「そんなので、分かる訳ないでしょう!」と怒られてしまった。

 しかも、シャーロットちゃんに笑いながら「サリーお姉さま、変!」とか言われてしまった。


 えぇ~そんなに変かなぁ?


 あと、ヴェロニカお母さんなんて、両手で顔を押さえながら、テーブルに伏せつつプルプル震えていて、ちょっとムカついてしまった。


 笑うんだったら、声を上げて笑ってよ!

 もう!


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