表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

80/172

2の16の1「リリスと動画」


 リョクチャへの依頼の翌日。



 ホテルヨコヤマの名義で、ヒナタ宛てに小箱が届いた。



 昼過ぎに荷物を受け取ったアキコが、夕食時に荷物を手渡してきた。



 夕食後の食堂で、ヒナタは箱を開封した。



 すると中から、外付けのSSDが出てきた。



「小さいんですね」



 文庫本より小さい小箱を見て、リリスがそう言った。



「技術の進歩ってやつだな。


 これ一個に、むかしの猫の映像も入ってるのか。


 膨大なデータをこんな短時間でまとめてくれるなんて、


 さすがはホテルヨコヤマってところか」



「あんなもの、でかいだけの砂上の楼閣ですよ。


 ところでそのSSD、臭くないですか?


 ファブっておいたほうがよろしいのでは?」



 ニャツキは鼻をつまみ、空気を追い払うような仕草をした。



「はいはい。


 ヤニャギさん。ホテルのパソコンを借りますね」



「ええ。どうぞ」



 ホテルの備品のノートPCに、ヒナタはSSDを繋いだ。



 そしてフォルダ内の動画データをチェックしていった。



「けっこうな数だな。


 とりあえず、頭から見てみるか」



 ヒナタは動画ファイルをダブルクリックした。



 すると動画プレイヤーが立ち上がり、レースの映像が再生された。



 数分動画を見て、次の動画に移った。



 とりあえず10本の動画を見終わると、ヒナタがリリスに話しかけた。



「ニャカメグロ。


 どの猫の体型が自分に似てるかわかるか?」



「そんなこと言われましても……」



 リリスが困っていると、ニャツキが口を開いた。



「リリスさんの映像も取り込んで、


 並べて再生してみれば良いのでは?」



「なるほど」



 リリスの映像であれば、ねこカメラで山ほど撮影してある。



 ヒナタはカメラ内の映像の一つを、ノートPCへと移動させた。



 そして資料と並べて再生していった。



 だが三人とも、ピンと来た様子はなかった。



「気長にやるしかないか」



 ヒナタはノートPCを閉じた。



「キタカゼ=ヒナタ?」



「だいぶ時間がかかりそうだ。


 俺が見つけとくから、


 おまえらは普段の練習でもしてろよ」



「やはり暇人……」



「うるせえ」



「お姉さま。そろそろ次のレースに登録しても良いでしょうか?」



「……そうですね」



 ニャツキはなぜか歯切れの悪さを見せた。



 その理由がわからずに、リリスは疑問符を浮かべた。



「お姉さま?」



 リリスの疑問符の意味がわからなかったのか。



 ニャツキはきょとんとした顔をリリスに向けた。



「何でしょうか?」



 少し違和感があっただけだ。



 深く追求するようなことでもない。



 リリスはそう思い、話を切り上げた。



「いえ。何でも」



「俺様も、そろそろ次のレースを決めましょうかね。


 いっしょに行きましょう」



「はい。ぜひ」



 翌朝。



 リリスはニャツキといっしょに、ねこセンターへと出かけていった。



 ヒナタは自室にこもった。



 ノートPCを使い、淡々と動画をチェックしていった。



 ……その一週間後。



 朝食時の食堂で、ヒナタがリリスにこう言った。



「ニャカメグロ。メシが終わったら、ちょっと良いか?」



「何でしょうか?」



「前に送ってもらった映像、


 おまえに体型が似てる猫を、5人にまで絞ってみた」



「えっ早いですね」



「早いか? 一週間もかかっちまったが」



「それじゃあ、遅かったですね」



「悪うござんした。


 で、一緒に見て、確認してくれるか?」



「わかりました」



 朝食を終えると、ヒナタは自室に向かった。



 リリスもその後ろに続いた。



 ヒナタは部屋の鍵を開け、中に入って行った。



 そしてリリスを外に残し、ドアを閉めようとした。



 リリスがドアの板をがしりと掴んだ。



「あの、入れませんけど、嫌がらせですか?」



「いや。PCはロビーに持ってくから、


 そこで待ってろよ」



「…………そうですか」



「あと、ドアの間に手を入れんな。


 危ないだろうがよ」



「猫だからだいじょうぶですけど」



「とにかく、そこで待ってろ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ