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「俺?」



「はい。キタカゼさんは、フリーのジョッキーなんですよね?」



「そうだけど」



「良かった。あの……」



 猫が何かを言おうとしたそのとき。



 ニャツキがぎろりと猫を睨んだ。



「ヒッ!?」



 猫は悲鳴を上げた。



 ニャツキの表情に気付かないヒナタが、猫を気遣う様子を見せた。



「どうした?」



「いえ、その、すいませんでした……」



 しょんぼりと縮こまり、黄色い猫はたぬきのように去っていった。



「ひょっとしたら騎乗依頼かもと思ったのに……何だったんだ……?」



「雷を落としたことの詫びに来たのではないですかね」



 そしらぬ顔で、ニャツキがそう言った。



「レースでのことなんだから、恨みっこなしだと思うんだが」



「そう思わない人も居ますからね」



「ふ~ん……?」



(ちょっと殺意を見せたくらいで逃げ去るとは、


 なんとまあ、肝の細い猫でしょうか。


 あの程度の猫では、


 ヒニャタさんにはふさわしくありませんね)




 ……。




 レースを終えた一行は、ホテルヤニャギに帰還した。



 天晴れたる勝利をおさめたニャツキたちを、アキコが温かく出迎えた。



 その翌日の朝。



 ヒナタが食堂で、アキコにこう尋ねた。



「あの……騎乗依頼の電話とか来てませんかね?」



「来てないわねぇ」



「なぜだ……」



「にゃふふ」


 

(ヒニャタさんもこれで3連勝。


 新人のジョッキーとしては目覚ましい戦績です。


 そろそろ競ニャ界が、


 ヒニャタさんの価値に気付いておかしくない頃ですが、


 レースの最初にジョッキーとしての仕事をサボって、


 俺様への攻撃を許してしまったことが


 減点されているのかもしれませんね。


 いけませんね。


 お仕事をサボっては。


 何にせよ、俺様にとっては好都合です)



 ニヤニヤと朝食を終えた後、ニャツキはリリスの練習を見ることになった。



 シャルロットも連れて、ニャツキたちは練習用コースに向かった。



 そこでシャルロットに乗ってもらい、リリスの走行タイムを計測した。



 ねこストップウォッチのタイムを見ると、ニャツキはこう言った。



「そろそろ次のレースにエントリーしても


 良いころかもしれませんね」



 するとリリスが意外そうな顔を見せた。



「えっ? まだ走りは形になってないと思うのですが」



「そうですね。


 あなたの走りの完成度は、まだまだといったところでしょう。


 ですが、完璧でなければレースに出てはいけない……


 なんて道理はありません。


 それにあなたのタイムは、


 ねこダウンフォースの訓練を始める前と


 同等くらいにはなっています。


 これから半月かけて仕上げれば、


 Eランクくらいのレースであれば、


 それなりの勝負ができると思いますよ」



「前と同じ……そうなんでしょうか?


 まだまだ走りがぎこちないような気がするんですが……」



「それはその通りです。


 ですがあなたの筋力は日に日に上昇していますし、


 魔石によるねこレベルの上昇もあります。


 なのでフォームには問題があっても、


 総合的には前と同じくらいの走りになっているのです」



「不完全な走りでレースに出て、


 怪我をする心配はないの?」



 シャルロットがそう尋ねてきた。



「はい。今の走りであれば問題はないと思いますよ」



「そう」



「……どうしましょうか?」



 リリスがシャルロットに視線を向け、彼女の反応をうかがった。



「良いと思うけど」



「それでは……エントリーしてみます」



 練習を終えたリリスたちはねこセンターに向かい、エントリーを済ませた。



 それから20日後。



 ニャゴヤねこフロートのコースを、リリスは駆けることになった。



「リリスさ~ん! がんばってくださ~い!」



 レース終盤。



 応援慣れしてきたニャツキは、観客席から声援を送った。



「みゃみゃみゃみゃみゃみゃっ!」



 ゴール前の直線で、リリスがスパートをかけた。



 だが……。



「あぁ……惜しい……」



 ニャツキが残念そうに声を漏らした。



 最後の競り合いに勝てず、リリスは4位という結果に終わった。


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