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「そうなんですか。それなら問題はないですね」



「とはいえ、リスクがないわけではありませんよ。


 超一流のねこアルタチュードを身につけるには、


 1年いじょうの訓練を続ける必要があります。


 そして訓練を始めたばかりのころは、


 自然な走りが崩れてしまって、


 今までよりもスピードを落とすことになります。


 途中で嫌になって訓練を投げ捨てれば、


 崩れた走りだけが残り、


 選手生命にも関わることになります。


 マジメなリリスさんであれば、


 そのような結末には向かわないと信じていますけどね。


 ただ、レースの成績にも関わることなので、


 訓練に進む前に、


 ジョッキーのシャルロットさんに話をつけておいてください」



「わかりました」



 話が済むと、二人はサウナから出た。



 リリスは廊下で携帯を取り出し、シャルロットの番号に電話をかけた。



 電話はすぐにつながった。



「リリス? どうしたの?」



「大事な話があるので、今から会えませんか?」



「ええ。良いわよ」



 シャルロットは暇……オフだったらしい。



 すぐにホテルに来てくれることになった。



 リリスはニャツキと共に、シャルロットが部屋に来るのを待った。



 シャルロットがやって来ると、リリスは彼女に事情を説明した。



「……どうでしょうか?」



「良いと思うわ」



「次のレースでは成績を落とす可能性がありますが、


 それでも構わないのですね?」



 あっさりと了解したシャルロットに、ニャツキが確認を取った。



「ええ。目先の勝利よりも


 将来を見据えて訓練するのは、


 アスリートとして当然のことでしょう?


 けどさすがに、訓練を始めてすぐは、


 レースに出るのは止めて欲しいけど」



「そうですね。次のレースの登録は、


 今までよりも間をあけることにしましょう」



「ええ。それなら文句はないわ。


 話がついたのなら、もう行っても良いかしら?」



「どうぞ」



 シャルロットはソファから立ち上がり、ニャツキにこう尋ねた。



「ちょっとヒナタと話したいんだけど、


 どこに居るかわかるかしら?」



「さて? いつものところではないですかね」



 ニャツキは不機嫌そうに答えた。



「ありがとう。それじゃ」



 ホテルから出たシャルロットは、ねこセンター前に移動した。



 するとヒナタがいつものように、猫を口説いているのが見えた。



「そこをなんとかダメか……?」



「ごめんなさい!」



 説得のかいなく、ヒナタの前から猫が逃げ去っていった。



 がっくりとしたヒナタに、シャルロットが声をかけた。



「あいかわらずね」



「何だ? 俺を笑いに来たのか?」



 ヒナタは噛みつくようなセリフを吐いた。



 だがその声音は穏やかで、本気で怒っているわけでもないようだった。



「そこまで暇じゃないわよ。大事な話があって来たの」



「場所を変えるか?」



「ここで良いわ。すぐに済む話だし。


 ヒナタ……。


 あなたにリリスの鞍を任せたいの」



「……すぐ済む話か? それが」



 平坦だったヒナタの表情が、少し硬くなった。




 ……。




 ニャツキとリリスは、訓練用のコースに移動した。



 ニャツキは猫になったリリスと、人の姿で向かい合った。



「それではねこアルタチュードの訓練を始めましょう」



「はい! よろしくお願いします!」



 この訓練を乗り越えれば、きっともっと速くなれる。



 そう予感しているリリスが、気合に満ちた声を上げた。



 対するニャツキは、自然体でこう尋ねた。



「まず最初に、


 どうして猫の走りの高さに、差が出るのかわかりますか?」



「地面の蹴り方の差じゃないんですか?」



「3点ですね」



「えっ思ったより低い」



 100点満点の3点か、10点満点の3点か。



 どちらにしても胸を張れないほど、ニャツキの採点は辛辣だった。



「猫にはあまり知られていないことですが、


 猫というのは、


 脚力だけで走っているわけではないのです」



「そうなんですか?」



「はい。猫は普通の動物の、


 何倍もの脚力を持っています。


 ジョッキーさんの強化魔術があれば、


 さらに倍率ドンで、


 凄まじいパワーを発揮することになります。


 そんな力で地面を蹴れば、


 いったい猫はどうなってしまうと思いますか?」



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