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「ちょっくらって……。


 ダメよ? レースの後に無理をしたら」



「無理はしていません。軽いクールダウンですよ」



「どうなの? ヒナタくん」



「だいじょうぶだと思いますよ」



 ニャツキはホテルのロビーを見回した。



 三人いがいの人や猫は、この場には見当たらなかった。



「あの、リリスさんたちはまだ帰ってきていないのですかね?」



「そうね。元々そういうスケジュールだったから、


 遅れているわけではないけど」



「そうですか。


 そういえばアキコさん。


 新しく3名ほど、ランニャーを勧誘してきました。


 リリスさんたちと一緒に来ると思うので、


 部屋の手配をお願いします」



「強引ね。こんな寂れたホテルに来ることが、


 その子たちのためになれば良いけど」



「なりますよ。このホテルには俺様という、


 名トレーニャーが居ますからね」



「まったくこの子は……」



 自信満面のニャツキに、アキコは手を伸ばした。



 アキコの両手が、ニャツキの頬をぎゅうっと挟んだ。



「むぎゅ……」



 そうこうしている内に、リリスたちが帰ってきた。



 先頭のミヤが口を開いた。



「ただいま」



「ええ。お帰りなさい」



 それからサクラたち三人が、一団の前に出てきた。



 そしてアキコと向かい合った。



「あんたがボスのボスだな?」



「ボス? 私はこのホテルのオーナーだけど……」



「私はバクエンジ=サクラ。今日から世話になるぜ」



「ムサシっス」



「コジロウです。よろしくお願いします」



 ムサシは親しみやすい笑みを浮かべ、コジロウは礼儀ただしく頭を下げた。



「ええ。よろしくね。サクラちゃん。ムサシちゃん。コジロウちゃん」



「大所帯になってきたね」



 ミヤの言葉に、アキコが同意を見せた。



「そうねぇ。そろそろホテルニャンを雇わないとダメかもしれないわね。


 けどうちには悪評があるから、


 来てくれる人が居れば良いんだけど……」



「あの、私にお手伝いさせてください」



 コジロウがそう申し出た。



 だが、アキコはコジロウの申し出を、良いものだとは思わなかったようだ。



「あなたはランニャーでしょう?


 ホテルの仕事は私たちに任せて、


 あなたたちは走ることに専念していれば良いのよ」



「私は……してはいけないことをやったので……。


 どうか償いをさせてください。お願いします」



 コジロウは、深く頭を下げた。



「けど……」



 強く頼まれても、アキコは承諾のイシを見せなかった。



 そのときニャツキが、コジロウのイシを後押しした。



「やらせてあげてください。アキコさん」



「ニャツキちゃんがそう言うなら……」



 ニャツキには、トレーニャーとしての知識経験がある。



 自身を鍛え上げた確かな実力がある。



 どうやってその能力を得たのかは謎だが、アキコはニャツキのことを認めていた。



 そんなニャツキであれば、コジロウたちを育て損ねることもないだろう。



 信頼に基づいて、アキコは申し出を受け入れた。



「けど、ランニャーの本分は走ることなんだから、


 それを忘れてはダメよ?」



「はい!」



 コジロウが、しっかりと言葉を返した。



 その後エレベーターから、オモリたちが姿を見せた。



 ロビーの面々を確認すると、オモリはニャツキに歩み寄ってきた。



「トレーニャーさん。お帰りなさい。その子たちは……」



「新しくめんどうを見ることになった子たちです」



「また敵をひっかけてきたの?」



「敵? 最強の俺様に、敵など居ませんよ」



「……そう。無理はしないでね」



「先輩。よろしく頼むぜ」



 サクラがオモリたちに声をかけた。



「私は1年目だから、あなたのほうが先輩だと思うけど」



「けど、このホテルじゃ私が新入りだ」



「……好きにすれば良いわ」



「おう」



 話に区切りがついたのを見ると、ヒナタはリリスの方に向かった。



「だいじょうぶか? 妙におとなしいが」



 リリスがニャツキになついていることは、周知の事実だ。



 真っ先にニャツキに駆け寄ってもおかしくはないはずだが。



 妙に俯いているし、体調でも悪いのだろうか?



 ヒナタはそう思い、リリスを心配する様子を見せたのだが……。



「キタカゼ=ヒナタ……」



 ぎょろりと、リリスの眼光がヒナタを見上げてきた。



「何だよ怖いな?」



 いつもとは違うリリスの仕草に、ヒナタは引いた様子を見せた。



「心臓はだいじょうぶなのですか?」




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