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「病院に居るのかもしれませんね。


 ちょっと電話してみましょうか。


 あっ、病院で携帯ってアリなんでしたっけ?」



「最近は、個室ならオッケーとかそんな感じだと思うが」



 うろおぼえな様子で、ヒナタはそう答えた。



「なるほど? とりあえずかけてみましょうか。


 その前に、人の姿にならないといけませんね」



 ねこバリアフリーがうたわれる昨今だが、ねこスマートフォンはまだ発売されていない。



 関係各社の尽力が期待されるところだ。



「家に入りたいので、荷物から鍵を出していただけますか?」



「ああ」



 ニャツキの指示に従い、ヒナタが荷物を漁った。



 すぐに家の鍵を見つけて、彼は玄関を開けた。



「それでは電話してきますね」



「ああ」



 家に入ったニャツキは、自分の部屋に歩いていった。



 そこで人の姿に戻ると、彼女は裸で荷物を漁った。



 そして携帯を手にすると、父親の番号にかけた。



 すぐに電話は繋がった。



「もしもしにゃん」



「ニャツキ?」



 聞き慣れた父親の声が、電話の向こうから返ってきた。



「はい。あのですね、俺様は今、家の前に居るのですが、


 パパたちは病院ですか?」



「うん。念のために様子を見てるだけだから、


 心配することはないけどな。


 それにしても早いな。


 今日がレースだったのに、もう帰ってきてるなんて」



「俺様ですからね。


 今からそちらへ行くので、


 病室などを教えてもらえますか?」



「わかった」



 ニャツキはケンイチから、彼らの居場所を聞き出した。



「それではすぐに向かいます」



「うん。慌てて事故をしないようにね」



「わかってますよ」



 ニャツキは通話を終えた。



 そして携帯をしまうと、ねこ服を身につけて猫になった。



 彼女は外れてしまった鞍をくわえると、家の外まで運んでいった。



「ヒニャタさん。病院に向かうので、


 また鞍をとりつけていただけますか?」



「タクシーで行けば良くないか?」



「こっちの方が速いですから」



「わかったよ」



「それと、家の鍵をお願いします」



「あいよ」



 ヒナタはニャツキに鞍をとりつけ、玄関の鍵をかけた。



 ニャツキはまたヒナタを乗せると、東にある病院へと駆けていった。



 中に入ったニャツキは、聞かされていた病室に、早足で向かった。



 病室に入ると、家族三人の姿が見えた。



 父のケンイチ、母親のミイナ、弟のケンタ。



「ママ!」



 ニャツキは出産の当事者である母親に声をかけた。



「ニャツキ」



 ミイナがニャツキに笑みを向けた。



 特に弱った様子は見えない。



 元気そうないつもの母の姿が、ニャツキを安心させた。



「ママは元気そうですね。それで、赤ちゃんは……」



 ニャツキは病室を見回したが、赤ん坊は見当たらなかった。



「新生児室よ」



 すぐにミイナがそう答えた。



「なるほど? そんな場所があったような……?」



「一緒に赤ちゃんを見に行きましょうか」



「はい」



「ねーちゃん、そのヒト誰?」



 ケンタがヒナタを見て言った。



 室内のみんなの視線が、ヒナタへと向けられた。



 ニャツキは嬉しそうに、ヒナタをこう紹介した。



「この方は、俺様のパートニャーです」



「あらあら。綺麗な人ねえ」



「ニャツキ……まさか都会でホストにハマって……!?」



 ケンイチが動揺を見せた。



 冷静に考えれば、ホストにドハマりしたとして、病室に連れてくる理由はない。



 ヒナタのジョッキーらしからぬ美貌が、ケンイチを混乱させているようだった。



「ハマってません」



「俺はキタカゼ=ヒナタ。一応は、ハヤテのジョッキーです。


 はじめまして」



 ヒナタは礼儀正しく頭を下げた。



「まあ。あなたがあの……」



(どの?)



 家族から、どんな話が飛び出るかわからない。



 そんな気配を感じ取ったニャツキは、話を切り替えることに決めた。



「あの、そんなことよりも、早く赤ちゃんを見に行きませんか?」



「そうね。行きましょうか」



 しっかりとした足取りで、ミイナはベッドから立ち上がった。



 ケンタはニャツキの鞍に乗った。



 慣れているのか、ニャツキは文句を言わなかった。



 ケンタを乗せたまま、ニャツキは新生児室の前に移動した。



 そこでケンタはニャツキからおりた。



 部屋の前はガラス張りになっていて、そこから室内が見えた。



 ニャツキは猫のまま背伸びして、部屋を覗き込んだ。



 部屋の中には、新生児用のキャリーベッドがいくつも並べられていた。



 そのそれぞれに、赤ん坊の姿が見えた。



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