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 ニャツキは軽々と木々を回避した。



 そして前から来た枝に飛び乗り、道代わりにしてみせた。



「大魔獣ならこれで倒せるかもしれませんが、


 ランニャーには通用しませんよ。


 こんなモノは競ニャの本質ではない。


 ウェイトトレーニングをして出直すのですね」



 ニャツキはそのまま、太い枝の上を駆け去っていった。



「……参った」



 あれでダメなら、もう追いつけない。



 白旗を上げたジュジュは、ガーデンカースを解除することに決めた。



 徐々に周囲の景色が、通常のコースに戻っていく。



(リリスさんは……?)



 森の中で、どれだけ距離をはなせただろうか?



 ニャツキはそれを確認するため、後ろへと振り向いた。



 ニャツキのかなり後ろを、ジュジュが走っていた。



 その次の猫とは、さらなる大差がついてしまっていた。



 ニャツキ以外の猫に対し、ジュジュのガーデンは大きな効果を上げたようだ。



(どうやら……森の攻略にかなりの差があったようですね。


 コースでの走りに特化したランニャーに、


 森を走れと言うのは酷だったのでしょうか。


 まあ俺様は完璧なランニャーですから、


 どんなことでも完璧にこなしてしまうのですが。


 これだけ差がつけば、


 リリスさんのカースも恐るるに足りませんね。しかし……)



 ニャツキは左70度のコーナーを曲がり、右曲がりのカーブに入った。



 そしてこんな疑問を抱いた。



「カゲトラさんはどこに……?」



 優勝候補の姿が、どこにも見当たらない。



 カゲトラは、あの程度の森で脱落するような猫だったのか。



 ニャツキが答えを求めたとき、声が聞こえてきた。



「呼んだ?」



 ニャツキの後ろに、カゲトラがニュッと姿を見せた。



「ニャッ!?」



 いきなりの気配に、ニャツキはホラーねこ映画じみた声を漏らした。



「カースでキミの影に潜ませてもらったよ。ごめんね」



「人の走りにタダ乗りですか。


 タクシー代を請求しますよ」



「タダじゃないよ。


 けっこう魔力も使うし、ふだんなら普通に走った方が速い。


 だけどボク、森を走るのって慣れてないからさ。


 それより、余所見してて良いの?」



「みゃ?」







「そろそろ前に出ないと、あの子に追いつけなくなるよ」







「っ……!?」



 ニャツキは視線を走らせた。



 すると右方の柵を超えた先に、小さくヒナタの姿が見えた。



「ヒニャタさん……!」



 ジュジュのガーデンを利用し、リリスを突き放した。



 そんなニャツキの幻想が、ぼろぼろに砕け散っていった。




 ……。




 ニャツキより先を行くリリスは、穏やかに口を開いた。



「あの森を無事に抜けられるなんて、凄いですね」



「ガキのころは、


 ミヤねえと森の中を走り回ってたからな。


 病気なのにムチャするなって、


 マニャねえに怒られたりして。


 なあ、ひょっとしてさ……」



「はい?」



「俺たちいま、トップなんじゃないか?」



「ええっ……!? そんなまさか……!?」



「けど、前に誰も居ないし、


 あのガーデンで、だいぶ周りが崩れたらしいな」



「ど、どどど、どうしたら……!?」



 トップだということは、勝つかもしれないということ。



 自分のような猫が、Sランクレースに。



 その事実が、リリスを挙動不審にさせた。



「慌てるなよ。


 良いコースで、せっかく邪魔者が居ないんだ。


 楽しく走ろうぜ」



 ヒナタの言葉は虚勢ではない。



 長く一緒に走った経験から、リリスはそのことに気付いた。



「まったく……あなたという人は……」



 リリスの肩から力が抜けた。



 彼女は軽やかに駆けていった。



 その姿を、空中のねこカメラが捉えている。



 カメラが映した猫の姿は、客席にまで届いていた。



「母さん。姉さんがトップだよ」



「……うん。見えてるよ」



 観客席の親子が、娘の勇姿を見守っていた。




 ……。




 リリスよりも遅れた位置を、ニャツキが駆けていた。



 今、ニャツキの速度はリリスより速い。



 少しずつ、両者の距離は縮まってはいる。



 ……それではダメだ。



 その程度では、ニャツキが勝利条件を満たすことはできない。



(スパートまでにリリスさんを追い抜かないと……。


 けど、これ以上ペースを上げるわけには……。


 どうしたら……?)


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