表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

154/172

2の53の1「ねこ聖杯と開戦」


「パパ!」



 ニャツキは表情を明るくして、ケンイチに近付いていった。



 ケンイチの隣には、ミイナとケンタの姿もあった。



 そしてミイナの腕には、ミャモリが包み込まれていた。



「ミャモリ。お姉ちゃんを応援に来てくれたのですか?」



「あう?」



 可愛らしい妹の姿を見て、ニャツキは思わず笑いを漏らした。



「にゃふふ。格好良い走りを見せてあげます。


 期待していてくださいね」



「ニャツキの妹?」



 鞍の上で、シャルロットがそう尋ねてきた。



「どうも。ニャツキの父のケンイチです」



「母のミイナです」



「……ケンタ」



 ニャツキの両親が、明るくシャルロットに挨拶をした。



 ケンタだけは、妙に照れくさそうな様子だった。



「シャルロット=ニャヴァールよ。よろしく」



 挨拶が終わると、ケンタがニャツキに話しかけた。



「姉ちゃん」



「何ですか?」



「今回は、ヒナタがジョッキーじゃないんだな」



「っ……今回は、ちょっと都合がつかなかったのです」



「ケンカしたのか?」



「してません」



「そう? せっかく応援に来てやったんだから、優勝しろよ」



「……まあ、2位以内には入ると思いますよ」



 珍しく弱気な姉を見て、ケンタは顔をしかめた。



「はぁ? らしくねえの。


 そこはブッチギリで優勝してみせますよって言うところだろ」



「そう言いたいところですが、


 ライバルも手強いですからね」



「ホント、らしくねえな。


 調子でも悪いのか?」



「いえ。体調には問題ありません」



「なら良いけど。


 ミャモリにかっこ悪いところ見せんなよ」



「はい」



 選手入場の時間になり、ニャツキたちはコースに向かった。



「うううぅぅぅ……」



 道中で、リリスは緊張の唸りを見せていた。



「なんかサイレン鳴ってんな」



 鞍の上で、ヒナタが意地悪くからかった。



 リリスは睨み顔になり、視線を上に上げた。



 猫の体型では、目を動かしたくらいで鞍の上は見えない。



 だがなんとなく、それでヒナタを睨んだ気分になれるらしい。



「うるさいですね。


 仕方ないでしょう? これから始まるのは、


 ニャホンで三つしかないSランクレースなんですよ?」



「負けるのが怖いのか?」



「……べつに。


 私ごときがこんな凄いレースで勝てるなんて、


 最初から思ってませんから」



「本当にそうか?」



「え……?」



「絶対に勝てないって思ってる猫が、


 そんなに震えるもんかな。


 もしかしたら自分が……そういう気持ちがあるから、


 体に力が入るんじゃねえのかよ」



「相手はあのお姉さまです。勝ち目なんて……」



「そうかな? 俺は勝てると思ってるぜ」



「あなたは……どうしていつもそうなんですか?」



「俺はなんとなく、猫の凄さがわかるんだ。


 それで、ハヤテは今までスカウトしてきた中で、


 3番目に才能があると思った。


 2番目はカイ。


 そして、1番はおまえだ」



「……そんな都合の良い話、信じると思うんですか?」



「努力してくれるんだろ?」



「そうですね。


 私が1番の猫だと、なるべく思い込むことにします。


 ……それで?


 才能があると思ってたから、私を選んだんですか?」



「違うよ。


 前にも言ったけど、


 おまえとここまで走って来られて、楽しかったよ」



「……私も楽しかったですよ。ちょっとだけ」



「ありがとう。ニャカメグロ」



「何のお礼ですか。そういうのは、勝ってから言ってください」



「それじゃあ勝つか」



「はい。勝ちましょう」



 リリスは自身の集中力が、深く深く研ぎ澄まされるのを感じた。



 今までにない走りができる。



 そんな予感があった。



 足取り軽く、リリスはゲートインした。



 一方のニャツキも、負けずに集中力を高めていった。



(負けませんよ。リリスさん)




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ