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2の49の1「ダンジョンと地震」


 二人はジムに入った。



 そこにはマニャ宅から輸送された器具が並んでいた。



 ナツキが開発した魔導ウェイトの複製品だ。



 ニャツキはいくつかの器具を、軽く動かしてみた。



「コピーにしては上手くできていますね」



 ちゃんと負荷はかかるし、不具合も見当たらない。



 しっかりと機能しているように思われた。



「機械のことはよくわからないけど、


 お金はかかってるはずだよ。


 なにせ三冠ニャのために作られたんだからね」



「もと三冠ニャでしょう」



「拘るねぇ。それじゃあ始めようか」



 お互いを補助しながら、二人は交互にトレーニングを進めた。



 1時間半後には、予定していたトレーニングメニューが終わった。



「ふぃ~疲れた」



 しっかりと体を追い込んだカゲトラが、深く息を吐いた。



 ニャツキのほうも、息が荒くなっていた。



「お疲れさまでした。


 それでは俺様は、ダンジョンに行ってきます」



「こんなに頑張ったのに、もうダンジョンなの?」



 マニャに後を託されてがんばっているが、カゲトラは元来ナマケモノだ。



 ハードスケジュールをこなそうとするニャツキに、驚き顔を向けた。



「ねこ聖杯のために、


 一つでもねこレベルを上げなくてはなりません。


 無駄にできる時間は1秒もないのですよ」



「それって、


 レベルを上げないとボクに負けるかもしれないって


 思ってるってこと?」



「そうかもしれませんね」



 カゲトラのほうは見ずに、ニャツキはそう答えた。



 カゲトラは無邪気に笑った。



「ふふっ。嬉しいな。


 負けっぱなしのボクのために


 ニャツキが本気になってくれるなんて」



(まあ、ヒニャタさんさえ戻ってくれば、


 あなたなど俺様の敵ではありませんが)



「それでは、きちんと指示どおりに


 トレーニングを進めてくださいね」



「うん。がんばるよ」



 ニャツキの言葉でやる気を出したのか。



 さきほどまでの怠惰な雰囲気は、既に一掃されていた。



「ニャツキもがんばってね」



「はい」




 ……。




 用意を整えて、ニャツキは馴染みのダンジョンに向かった。



 ねこ王杯の賞金で、装備はかなり強化されている。



 手にした剣は鋭く、動きやすく頑丈な防具は、かすり傷すら許さない。



 順調に足を進めたニャツキは、あっという間に深層に到達した。



 ニャツキはいつものように、魔獣を探して狩っていった。



 大量の魔獣を倒し、死に際に放出されるEXPを吸収する。



 さらに魔石を食らい、それからもEXPを獲得する。



 倒し、食らい、倒し、食らう。



 ひたすらにEXPを得ていく。



 夜遅くまで戦い、レベルが上がらないまま、ニャツキはホテルに戻った。



 カゲトラの様子を見た後、ニャツキはSNSをチェックした。



 そうして猫たちの状態を確認していった。



 猫たちの多くは、ニャツキを気遣うメッセージを送ってきていた。



 ニャツキはそれに事務的に返答し、トレーニャーとしての意見を送った。



 翌日も、その翌日も、ニャツキは魔獣を倒し続けた。



「ふ……ふふ……勝ちます。


 こんなに努力をしているのだから、


 きっと俺様が勝ちますよ」



 そう言うニャツキのねこレベルは、まだ一つも上がっていない。



 そしてある日。



 ニャツキが居るダンジョンが、激しく揺れた。




 ……。




 ダンジョンを震源地とした地震は、ホテルヤニャギにまで届いた。



 ヒナタは自分の部屋に居るときに、その地震に襲われた。



 強い揺れを受け、ヒナタは身構えた。



 やがて揺れがおさまると、ヒナタは肩の力を抜いた。



(かなり揺れたな。


 だいじょうぶだとは思うが、


 一応みんなの無事を確認しに行くか)



 建物が崩れるほどの地震ではなかった。



 ホテルヤニャギの利用者たちは、ヒナタ以外はみんな猫だ。



 ちょっと物が落ちてきたくらいで怪我をすることはないはずだが。



 それでも念のため、ヒナタは部屋から出た。



 するとすぐ、リリスが駆けてくるのが見えた。



 彼女は焦った顔でこう尋ねてきた。



「キタカゼ=ヒナタ……!


 だいじょうぶですか……!?」



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