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2の28の1「ニャツキとミストのカース」


「何事ですか……?」



 姿勢を崩すことによる減速も気にせず、ニャツキは後ろを見た。



 すると猫の一人に、半透明の植物らしきものが刺さっているのが見えた。



 その形状は、ヤドリギに似通っている。



「あれは……?」



 ニャツキより前から状況を見ていたヒナタが、現状を解説した。



「テンジョウインのカース攻撃みたいだな」



「そのとおりですわ!」



 ミストが大声を上げた。



 魔力がこもったその声は、周囲によく響いた。



「これぞわたくしのカース、


 『世枯らし-よがらし-』の力!」



 調子に乗った顔で、ミストはさらにカースを発動した。



 細い枝のようなものが、別の猫に突き刺さった。



 半透明の薄ぼんやりとした枝だが、刺されれば痛みがあるのか。



 尻を突き刺され、猫は悲鳴を上げた。



「みゃぅっ!?」



 猫に刺さった枝は、発射された時より膨れ上がり、大きく成長した。



「おれさま以外の猫にカースを……?


 どうして……?」



 ニャツキは疑問を抱いた。



 ミストのライバルは自分のはず。



 そして自分は今、突出した位置を走っている。



 どうして自分を妨害してこないのだろうか……?



 その疑問に、ヒナタが答えた。



「猫に刺さった枝から、


 テンジョウインに力が流れ込んでるように見えるな」



「にゃ……!?」



「そのとおり!


 わたくしのヤドリギをもらった猫は、


 私に少しずつ、魔力を献上することになるのですわ!


 カースの欠点である魔力の消耗は、


 わたくしには存在しません!


 これこそがキタカゼ=マニャさまにも通用しうる最強の力、


 王者のカースなのです!


 さあ、あなたにもお見舞いしてさしあげましょう!」



 ついにニャツキにも、ヤドリギが飛来してきた。



「みゃっ!?」



 ずっと後ろを見ていたニャツキは、なんとかカースを回避することができた。



「うまく避けましたわね。


 けどわたくしは、ヤドリギから献上された魔力で、


 いくらでもカースをはなてますのよ。


 さあ、いつまで避けられますか!」



「にゃ……!?」



 今までにないタイプのカースを前に、ニャツキは動揺を見せた。



 それに気付いたヒナタが、即座に念話を送った。



(落ち着け。食らったらやばいが、


 射撃のスピードはそこまででもない。


 しっかり見ていれば避けられる)



(猫は振り向きながら走るようには


 できていないのですけど!?


 そう仰るのでしたら、


 あなたが手綱を取ったらどうなのですか!?)



(良いのか?)



(緊急事態ですから!)



 またヒナタに手綱を預ける口実ができた。



 ニャツキの尻尾が、いつもより強く揺れた。



 ヒナタは手綱に魔力を通した。



「よし来い」



 ヒナタはコース後方に意識を集中した。



 コースの形状は、頭に叩き込んである。



 前を見なくても、ニャツキを正確に走らせることができた。



 ヒナタはミストをじっと見て、彼女の挙動に集中した。



 ミストの頭上に、枝が出現するのが見えた。



 枝がニャツキに飛ぶ。



 それを見切ったヒナタは、最低限の操猫で攻撃を回避してみせた。



「動きが変わった……?」



 先ほどよりも洗練された回避を見て、ミストは疑問符を浮かべた。



 さらに追加の攻撃が来た。



 それを回避すると、また次の攻撃が。



 ニャツキは回避を挟みながら、直線を駆けていった。



 最初の直線を終え、左100度のコーナーを曲がった。



 さらに次の直線を抜けると、右100度のコーナーがあった。



 その先の直線の終わりを右に曲がると、S字カーブに入った。



「向こうは回避動作を挟んでいるのに


 距離を詰められない……!


 なんて速さですの……!?」



 最短距離を進むミストに対し、ニャツキは回避によって遠回りをしている。



 だというのに二人の距離は、一向に縮まらなかった。



 思わず唸らされたミストだが、前を行くニャツキの表情も渋い。



(ずっと攻撃を避けながら走るなんて、


 窮屈が過ぎますね)



 念で不満を漏らしたニャツキに、ヒナタが答えた。



(だったらもっと、シンプルに行くか)



「みゃ?」



 ヒナタはニャツキを後退させた。



 そしてミストと並走させた。



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