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少女達の王冠  作者: かなん
2/2

少女の事情

読んでいただけたら嬉しいです。


 平日の真昼間から、喫茶店でダラけている高校生くらいの男を見て人々はどう思うだろうか。

 あまり良い印象は抱かないだろう。不良だとか、サボりだとか・・・まあ、色々あるだろうが、この現代日本において、まさか、高校すら行ってない奴だとは思うまい。


「・・・暇だとどうでもいいことばっか考えるな」


 2人用ソファーを一人で占領しながらがらんとした店内を見回す。居るのはOL的女性と、大学生らしき三人グループのみ、どちらもスマホやらパソコンやらを操作していて、そもそも俺の事など見てもいない。


「・・・誰か呼ぶか」


 寂しい訳ではないが、一人で居座るのも店側に迷惑だろうと近くに住んでる知り合いに片っ端からチャットアプリで連絡する・・・決して寂しくなった訳ではないが。


『暇人、駅前の珈琲店までカモン!』


 すると、暇人1号はすぐに既読を付けてくる。

 だが。


『死ね』


 どうやら、コミュニケーション能力に障害があるらしかった。言語野の問題かも知れないが。

 当然、ブロックである。ちなみに四度目だ。


「何だこいつ・・・次だ」


『暇なのはあんただけや、阿呆』

『暇じゃないくせにわざわざありがとう。馬鹿』


 暇人2号もブロックだ。次に会っても無視してやろうと心に決める。

 暇人は5号まで居る、一人や二人くらい痛くも痒くもない。

 そうして、3号の返信を見ようとすると、いきなりスマホが震え出した。


 優しい暇人の誰かかと思ったが、俺の電話番号を知っている奴は居ないし、そもそもこの番号はーー。


「何?」

「ヨォー、久しぶりだな。ユウ!」

「久しぶり、叔父さん」


 電話越しにも分かる陽気な声は、俺の母親の弟である宮沢雅史のものだった。


「お前の活躍、見てるぜ。こっちの新聞じゃ一面に夜羽ユウの名前があるもんだから、俺も鼻が高えよ」

「そっちのって・・・叔父さん、今どこにいるの?」

「ん?今はどこだっけな・・・多分デンマーク辺りじゃねえか?」


 叔父さんは、カメラマンだ。

 世界中を旅して、その土地と人を撮っている。あまり稼げては居ないようだけど。


「相変わらずだね。で、何の用?」

「そうだった。お前さ、今一人暮らしだよな?」

「うん、それがどうかした?」

「いやー、実は子供預かって欲しいんだわ」


 その言葉を一瞬、理解できなかった。

 そしてーー。


「ハァ!?」


 僅かな間を開けて、思わず大きな声が出てしまう。

 店内だと言うことを思い出し、すぐに声を潜める。


「どういうこと?」


 叔父さんは俺の反応を予想していたのか、楽しそうに笑いながら事情を教えてくれた。

 簡単に言うと、知人が事故で亡くなり、その子供の引き取り人が居ないということらしい。


「どうだ?預かってくれねえか?」

「悪いけど無理」


 即答する。


「高校すら出てない奴が子供を預かれる訳ないでしょ」


 そう、俺は高校に行ってない。

 別にその事を後悔している訳ではないが、自分が誰かに誇れるような人生を歩んでいない事は自覚してる。

 だが、叔父さんはまるで引かない。


「そこを何とか、お願い出来ねえか?お前以外、引き取り手が居ないんだよ」

「・・・俺に預けるくらいなら施設の方が良いと思うけど?」

「いや、それがなぁ・・・まあ、ちょっとその子人見知りというか・・・ぶっちゃけると引きこもりなんだわ」

「引きこもりって・・・それこそ俺みたいな奴に預けちゃダメでしょ。偶々上手くいってるだけで、引きこもりの亜種みたいなもんだよ?」

「だからだよ。原因は別でも、同種の悩みを抱えてる奴同士、分かる事もあるだろ?」


 言われて、少し昔の事を思い出す。

 

「・・・カウンセラーでもやれって?」

「いやいや、一緒に居てやってくれるだけで良いんだよ。ただ、少しでも人に触れる機会と、引きこもって自分と向き合う時間を与えてやって欲しいんだ」

「・・・ハァ」


 一度ため息を吐く。

 叔父さんには色々と恩がある。というか、もし彼が居なかったら俺も良くて引きこもり、悪ければ自殺していただろう。

 そんな彼からここまで頼まれて、不可能でも無いのに断る訳にはいかない。


「分かったよ」

「おお、そうか!やっぱ優しいな、お前は」

「・・・そうでもないよ」


 その後、その子の名前と連絡先、待ち合わせ場所と日時を聞いて電話を切る。

 すると、連絡を送った暇人共全員から返事が来ていた。

 

 全員ブロックした。

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