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ヒューマン他色々

二兎は捕らわれ母の出番です

作者: めみあ

※不揃いな部分を揃えました。内容は変えていません


 買い物から帰ると家の前に息子の彼女がいた。

 うちはオートロックのマンション住まいだ。だからドアの前にいるということは、息子が中に入れたのだろう。


 ならばなぜ、彼女は我が家のドアの前に座りこみ泣いているのか。

 1、ケンカ

 2、一方的な暴力

 3、ただ泣きたくなるの


 3、と言いたいところだが、女の子が泣いているのにふざけるのはダメだろう。息子の性格からして2はない。十中八九喧嘩なのだろうが……


 アピールしすぎで怖い。こんな所で泣かれたら、隣の冬木さんちにどんな噂されることやら。


「のぞみちゃん?」

「……お母さん……!」

 目を真っ赤にさせて顔をあげる彼女。

 

 あなたのお母さんではない、と毎回思う。ではなんと呼ばせるべきか。

 1、今まで通りお母さん

 2、亘(息子の名前)さんのお母さん

 3、明美さん(私の名前)


 3はない。2も長いし面倒。それなら1か。


「何があったの?」

「わ…わたると約束してたけど、約束の場所に来なくて……携帯も繋がらないからここに来たんです。そしたら中で亘と美咲が!!」

 「ん?」


 私は彼女の言葉に眉を寄せる。何が私の気分を害したのだろうか。

 1、約束を忘れて彼女を待ちぼうけさせた亘

 2、彼女はどうやってオートロックのマンションに入り、どうやって家の中に入ったのか

 3、たぶん、浮気をした息子

 

 2!! 一確だ。

 息子はこまめに戸締りをするタイプ。オートロックはなんとか入りこんだとしても、家の鍵はどうしたのか。


 1、閉め忘れ

 2、合鍵

 3、美咲さんがあえて開けておいた


 ……2かと思ってカッとなったけど、3の線もありだ。


 そこで私はハッと気づく。アイスが溶けてしまうと。

 

 ――携帯は繋がらないって言ってたな……私も息子の濡れ場なんて見たくないから、とりあえずピンポンならすか


 ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン

 連打してみる。

 10回ほど鳴らすと中でドタバタ音が聞こえ、ドアが開けられた。


 慌てて服を着たのだろう。裏返しのTシャツに短パン姿だ。玄関には女物の靴。私の背後にいるのぞみちゃんの姿に目を丸くする。


 息子はどうする?

 1、急いで美咲さんをクローゼットに隠しに戻る

 2、のぞみちゃんだけ帰ってもらう

 3、私とのぞみちゃんを中に入れない


 多分、3なのだろう。中に入れないよう体でブロックしている。

 だがもう手遅れだ。亘の背後に美咲さんがいた。この子もアピールするタイプか。しかもシャワーを浴びたばかりのようだ。


「おばさま! はじめまして! 勝手にお邪魔してすみません。私は間中美咲と申します!」

「おい、美咲!」

「あっ! のぞみ!これは違うの!!」

「違うんだ!のぞみ!」

「何が違うのよ! 私見たんだから!」

 騒ぎ出す3人。


 私がイラッとしたのはどこでしょうか。

 1、我が物顔でシャワーまで使われたところ

 2、初対面でおばさま、と呼ばれたところ

 3、息子が、お粗末すぎるところ


 全部、だな。なんだこれ。  

 

 私は玄関に置かれていた靴べらで3人の頭を軽くはたく。考える間もなかった。言い合いをしていた3人が驚いた顔で私を見る。

 

「亘、あんたが全部悪い。誠意がなさすぎる。あと、うちには金輪際彼女を呼ばないで。以上。のぞみちゃんと美咲さんはさようなら」

 

 私は2人を玄関に押し出し、そのまま帰らせた。


 

「……ごめん」 

 亘が先に口を開いた。

「なんなの本当に」

「好きな子ができたんだ」

「ん?」

「あの2人が邪魔になったから……」

「おっ……お前っ!!」

 思わず息子をお前呼ばわりしてしまった。

 全部計画的犯行だったということだ。

「これでスッキリ別れられた」

 

 私は息子の悪行に開いた口がふさがらない。

 なぜこんなろくでなしに育ったのか


 1、夫が育児に参加しなかったから

 2、夫が息子に甘いから

 3、私もほんのちょっとだけ息子に甘いから


 1と2だな。私はしつけが厳しいから。



「お母さん、運動したからお腹すいた」

「今ちょうどアイス買ってきたから一緒にたべよっか。リンゴも切ってあげるから待っててね」

「さっきのお母さんカッコよかったよ」

「そう?」

 


 その後、亘は本命に振られたと泣いて帰ってきた。マザコン男、と不名誉な噂を立てられていて、そのせいだという。きっとのぞみちゃんが逆恨みして噂を流したのだろう。


 本当に意味がわからない。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 最後の最後で、息子がむしろ一途になって、期待を裏切られました笑 憎めない、、 好きになったのは仕方ないし、互いに振られるのも仕方ないし、息子はモテそうなのでそれを存分に活かして多少ずる賢く…
[良い点] 各登場人物の意志のパワーが濁流のように迸ってて楽しい! 全て息子の計画だったっていう展開にはびっくりしました。
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