不平等な世界
突然だが、この世界には勇者が存在する。普通ならば実績などを残し、そこの王から称号をもらうのだがここでは違う。
俺たちが住む世界では、18の年になると役職をもらうことが出来る。しかし自分では選ぶ事は出来ず自分に適した職業を勝手に選ばれ、死ぬまでその役を変えることが出来ない
ここまで説明したら分かる人は分かるだろう。そうこの世界は、
『不平等』に出来ている。
勇者になったものは国の英雄として国民を守り、魔王を倒すのが役目であり義務である。
勇者や賢者などの上位職、別の呼び名『王族職』があるのに対し、鍛冶や料理などの下位『下民職』もある。
王族職は街の人からは讃えられ下民職は罵られ、まさに『下民』の扱いだ。
どうして下民職は、こうも卑劣な扱いをされるのかと疑問に思うだろう。それは『人数比率』が関係している。
比率的に、王族職:1 貴族職:7 下民職:2 の比率だ。そのため街の7割は貴族職になると言うこと。
貴族職は戦士、回復師など国に必要な人材だが、生活のため下民職を雇い商売をしている人が多い。
これは、そんな世界で生活する1人の青年の話。
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俺、アルファ・ゼーダスは今年18になる。今は街の中心にある役職提供所に友人のナベルと向かっていた。
「楽しみだな!ゼーダス。」
「そうだな!一緒に騎士になるために頑張ろうぜ!」
騎士とはこの国と王を守るために作られた貴族職の戦士を集めた組織だ。
戦士はこの世界では勇者の次に憧れの役職だ。まぁ勇者の役職を貰えるのは100年に一回と言われているから、皆なれるとは思ってもいない。
提供所に着くと町街中の同年代が集まっており、台の上にはこの街の王が立っていた。
「よくぞ集まってくれた。只今より『役職の儀』を行う。この街から1人でも優秀な人材が増えることを祈る」
王はそう言うと役職を与えると伝えられている神器を天にかざした。
「いよいよだな。楽しみだな」
ナベルが嬉しそうに話しているのを俺はニヤリと笑った。
しばらくすると天から数百の光が落ちてき、ここにいる全員は光に飲まれた。
「まぶしっ…」
光が消えると役職が書いてある紙が目の前にあった。しかし、俺の顔は次第に暗くなる。
「う…嘘だろ…」
書いてあったのは、『占い師』という役職と『下民職』と書いてあった。
俺は絶望し、その場に崩れ落ちる。
なんだが周りが騒がしい。皆さぞ良い職だったのだろうな。そういえば、ナベルはどうなった。
俺はナベルの方を向くと人だかりが出来ている。すると周りの声が聞こえてきた。
「勇者がこの街で生まれたぞ!」
「はっ!」
その瞬間、その勇者がナベルだと言うことが分かった。俺は心底絶望した。
王はこの街で生まれたことに驚きナベルの方へ向かうと手を合わせあった。
「この街で勇者が生まれて我は感激だ。この街のためによろしく頼む」
王がそう言うとナベルは喜びながら首を縦に振った。
そうだ。ナベルはあくまで俺の友人だ。
俺は重たい体をあげ、ナベルの元へ向かい。悲しみを隠した笑顔で言った。
「おめでとう!流石俺の友だ」
俺は手を前に出す。
「ありがとうゼーダス。ところでお前の役職…」
ナベルの笑顔は一転、俺を蹴り飛ばす。
「な、何するんだよ!ナベ…はっ!」
俺はナベルの表情を見て、言葉が詰まった。それはまさに、俺を人間だと思っていないような冷酷な顔だった。
「俺に触れるな…この『下民』が!」
その瞬間、俺は思い出した。
『この世界は不平等だと』