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あの日、空は紫色だった  作者: アナ
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あいつの気持ち

明日はデートという浮かれた気持ちで過ごしてた私のスマホが着信音とともにバイブで揺れる

画面に映し出された名前を見て私の心は激しく鳴った

心臓が飛び出たのではないかというぐらい、はっきりと聞こえた

それは“あいつ”からの電話だった。


「もしもし」

あまりにも自分の耳にはっきり響く鼓動を相手に聞かれないように、そっと声を出した。

「…梓か?久しぶりだな」

「久しぶり、雄介。」

間違えなくあいつの声だった。


私と雄介の関係…

それは今でも正直わからない。



雄介は無力の能力の持ち主。

無力の能力とは、その無力の気に触れたモノ全てを無力にし、長い時間触れれば、その力を奪い取ってしまうという能力。機械が触れれば少しずつ故障し、最後には2度と動くことはなく、飛んでくる弾丸が触れれば、その場でただの玉となって落ちる。人間や動物の体が触れれば少しずつ動かなくなり、最後には壊死した状態と同じになる。つまり、心臓が長い時間触れれば止まり、脳が長い時間触れれば一切の信号を送れなくなるのだ。

無力の能力は危険能力の中でもかなり危険な能力である。

そんな能力をコントロールするのは至難の技。能力のほうがその能力を持つ者より精神力や体力が上回っていれば、能力者のほうが体を蝕まれてしまう。能力が能力者を使うことになってしまうのだ。

そんな能力と対になって生まれた能力。それこそが私の持つもう一つの能力だ。基本的には無力の気に触れても平気で有り、無力の気に触れてしまったモノの力を回復させることもできる。そして、無力の能力をコントロールしたり、その能力者の体力を回復させることもできる。しかし、能力が暴走している場合、無力の気に触れると能力を受けてしまったり、コントロールできなくなることがある。また、完全に失った力を回復させることもできない。

それでもコントロールができるため、無力の能力と共にある限り、危険能力扱いになるのだ。


10才を過ぎるぐらいまでの雄介は無力の能力をまともにコントロールすることができず、その上、イライラした状態で使うことが多かった。

自分のことなのに自分ではコントロールしきれないこと

能力者ということで家族に捨てられた過去

私と出会うまで、人として生活できていなかったこと

それが全てイライラ原因となり、周囲、特に能力を持たない教師に当たり散らしていた。

私がそばにいないと何をするかわからず、小学生の頃は通常の学校よりも能学にいる時間のほうが長かった。

雄介は私がいないと能力をコントロールできない。

相手や自分の命すら危うくしてしまいかねない。

私は雄介のそばにいることで、他の人とは違う特別な存在でいられる。

良い意味で特別扱いされるのは小学生なり嬉しかったんだと思う。だからそばに居続けた。


本当に?


そんな思いを本当にあの頃の私は持っていたんだろうか?

考えていたのだろうか?


ただ、あいつと…雄介といる時間が楽しかった

心地よかった

それだけのような気もする。


いやもっと深い?

好きだった?

いや、なんで私があいつを好きにならなきゃいけない?

自分の能力をコントロールできず、周りを傷つけるような男を…


それでも私はなぜか雄介のそばにいた。

雄介がある程度能力をコントロールできるようになってからも…

あの事件の後、あいつに

「もう、そばに居なくていい」

と言われるまでずっと…



「どうしたの?急に電話なんかしてきて…」

「元気かなぁって思ってさ」

雄介は落ち着いたトーンで話していた。

「元気だよ」

「良かった。いやさ、能力者差別解消法のことで、いろいろ騒がしくなってるから、お前がまた、余計なこと考えてるじゃないかなぁって思ってよ!」


余計なことってなんだよ…


「心配するなよ。お前の兄貴含めてみんなで頑張ってるからさ…」


雄介、何を考えてる?


「別に心配なんかしてないよ。そもそも興味ないし…。いろいろ能力者に不利な状況になっても、その都度生き方を変えていけばいいだけのことだし…」

「そっか…。さすがだな。じゃあな。」

そう言って一方的に電話が切れる。


電話が切れた後の「プー、プー」という音が数回して、自動的にスマホの画面が切り替わる。


あいつはいったい何を考えてる?


整理できていない、呆然とした頭のまま目に入った窓からの景色

それは…

恐ろしいほど、空が紫色に輝いていた…

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