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あの日、空は紫色だった  作者: アナ
18/30

~過去~死

数日後、政府から正式な返事があった。


『公開文化祭は許可する。ただし、条件として、少しでも危険能力を持つ生徒は参加させないこと。』


少しでも危険…

そんなの、多くの能力が当てはまってしまう。

念動力や自然系統の能力の水や風、樹木などは使い方によっては危険だし、火なんかは当然危険能力扱い。

空間移動の能力だって暴走したときのことを考えると危険と言われるだろう…

その他にも多くの能力が…

当然、私も…


この知らせを聞いた私は学校を早退して能学に駆けつけた。

生徒会室には生徒会のメンバーだけでなく、先生たちや、雄介もいた。

誰一人言葉を発していない。

そして、麗衣香さんの姿だけがなかった。

「まっ、言い出しっぺだからな、ショック受けて、部屋で泣いてんじゃねぇーの?

なんせ、あいつ自身が危険能力者だからな」

雄介は元から参加する気は無かったとはいえ、はっきり言われたことに苛立ちを隠せない様子だった。


何か

何か言わなきゃ…


「仕方ないよ。すぐには上手くいかないって。

今回はいつも通りの文化祭にして、またリベンジしよう!」


なんで…


私ってば…


こんなこと言ってるんだろう…


別に能力者が一般社会で共存していけることを望んでるわけじゃない。今のまま、能力を隠して生きていくことに、私はなんの不自由も感じてない。

ただ、みんなの悲しい顔が、苛立った顔が嫌だった。

見ていたくなかった。

だから…

だから何とか和ませようと…

「お前らしくねぇセリフだな。」

雄介が呆れて笑う。

自分でもそう思う。

その時、扉をガリガリと引っ掻く音がした。

扉を開けるとそこにはアルがいた。

「どうしたの?アル…」

私はアルをそっと抱き上げる。

しきりに鳴くアル。

こんなアルは初めてだ。

「待ってて、動物テレパシー持ってる子呼んでくる!」

と夏希先輩。

「待ってください。」

私は先輩を呼び止めた。

嫌な予感が頭をよぎる。

胸が激しく鳴る。


こんな胸騒ぎを感じたのはこの時が初めてだった。

いや、そうじゃない。

いつもはたいてい、夢で見ているから自分で覚悟している。

だから胸騒ぎなんて感じる必要が無かった。

その事に気づいたのは、後になってからだった。


「アル、麗衣香さんのところに連れてって」

アルが走り出す。

その後を必死で追いかける。


アルが連れていった先は閉ざされた地下の能力訓練室だった。


「ここで待っていなさい。」

入口の前で早川先生に止められ、一旦全員の足が止まる。

早川先生と黒田先生、保健の先生が足を踏み入れる。

私がその後に続いて入ると雄介と夏希先輩もついて来た。おにぃは夏希先輩に止められ入って来なかった。


入口から死角になっていたところに目を向ける。

鏡の布がとられ、その前で麗衣香さんが横たわっていた。

体が動かない

声もでない

そんな私とは反対にすぐに能力を使う保健の先生。

と同時に、早川先生が能力を使って扉を閉め、鍵もかけた。

入口で待っていたおにぃや奈子、快斗の姿が一瞬だけ見えた。

涙が流れ始め、止まらなくなる保健の先生。

それでも能力を使い続ける。

「お願い、戻ってきて…」

保健の先生の声が能力訓練室に響き渡る。


「雄介、能力使って!」

やっと我に返り、言葉を発せるようになった私の第一声はこれだった。

「麗衣香さんが鏡の反射を利用して自分の能力を自分にかけたなら、無力の能力で無効化できる!」

「無駄だよ。」

必死になっている私とは反対に、雄介は落ち着いていた。

「わかってんだろう?

時間の経ちすぎだ…

あんたもやめろ!」

雄介が保健の先生を突き飛ばし、能力を止めた。

もう、手遅れだった。

見た瞬間にわかってはいた。

でも、もしかしたら…

生温い涙が頬をつたい、床に落ちるのを感じた。


気持ち悪い…


吐き気がする…


頭も…


「とりあえず、学園長と他の先生たちに知らせよう。」

「そうだな。生徒は1ヶ所に集めて説明しよう。」

「この様子じゃ隠すことはできなさそうだしな。」

「ああ、無理だよ。」

早川先生と黒田先生の震えながらも冷静に話す声が遠のいていく。


麗衣香さん…


なんで…


こんなの夢で見てない…


なんで…




ここで私の記憶は途切れた。

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