表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あの日、空は紫色だった  作者: アナ
16/30

~過去~未来へ

次に表グループを味方につけた。

とは言ってもこれはさほど難しいことではなかった。表グループのメンバーの多くは能力者と名乗って一般社会で生きることを望んでおり、その道筋の一つ案として公開文化祭は何度か出てきたものだったからだ。


「問題は‘’裏‘’か~」

麗衣香さんがため息をつく。

fiveグループは麗衣香さん指揮のもと公開文化祭へ向けて表グループと協力しはじめていたし、どこにも属していない子達も少しずつ、味方になっていた。

そう、後は‘’裏‘’だけ…

「手っ取り早いのは雄介くんと直接話すことだけど、絶対、ケンカになるもんなぁ~

やっぱり少しずつ周りから…」

「私にやらせてください」

言ってから慌てた。

私、何言ってるんだ?

麗衣香さんも奈子も快斗もみんな驚いていた。

「いや、えっと説得とかじゃなくて、とりあえず、雄介には私がまずは話をしたいってだけで…」

「ありがとう。」

私がらしくないことをして慌てていたのを察した麗衣香さんが私の手を握った。

少し冷たいけど、奥から温もりを感じる。

「でも、無理はしなくていいからね。

本当はいろんな問題に巻き込まれるの嫌なのは前から知ってたから。

でも、雄介くんのこともあるし、私の教育係になっちゃったから、仕方なく関わってきたんでしょ?

だから、無理はしなくていいからね。」

私はしっかりと頷いた。


雄介は意外と完全に反対しているという状態では無かった。それよりも、私が協力的なことを疑問に思っている方が強いという様子だった。

「夢を見たの」

「予知夢か?」

雄介は前のめりになって聞いてきた。

「わかんない。

でもね、文化祭が近づいてくると毎年見てた。

毎回、違う。

でも、いつもみんなが笑って、仮装したり、踊ったり、ジュース売ったり、能力のパフォーマンスしたり…

そして、必ずそこに知らない人たちがたくさんいて、笑ってるの。

楽しそうにしてるの。」

私は今まで見たきた文化祭の夢を思い出しながら、心が温かくなる感覚を覚えた。

「だけど、今回見てる夢だけはちょっと違う。」

「違う?」

「うん。

内容はその日によって違うんだけど、必ず、麗衣香さんが隣にいて、満足そうな顔をしてるの。」

「満足そう…な…」

雄介が困ったような、呆れたような、でもそこに怒りの感情はなくて、どちらかという優しさを感じる表情で頭を掻いた。


しばらく頭を掻いていた。

「梓」

いきなり真面目な顔。

こっちが緊張してしまう。

「お前はこれでいいと思うか?」

「いいかどうかも、夢が本当に予知夢かどうかもわからない。ただの願望かも知れない。

でも、ちょっとやってみたい。

どうなるか正直怖いよ。

でも、怖がって何もしないよりはずっとワクワクする。」

そう。

ワクワクする。

こんな気持ちは初めてで、このワクワク感が、怖さや不安から来るものなんじゃないかと思うこともある。

でも、ちゃんと違うってわかる。

これから先も私たち能力者は生きていく。

生きてかなくちゃいけない。

だったら、楽しいほうがいい。

笑ってられるほうがいい。

「好きにやれよ」

「え?」

「俺は大人しくしてっからさ。

俺の仲間には協力するよう言っとくよ。

あいつらも、考え方は違うけど、文化祭自体は楽しみにしてるからな。

それに、多少麗衣香には影響され始めてるしな…」

照れ笑いを浮かべる雄介。

でも、どこか寂しげ。

自分が関われば、簡単にはいい方には進まないことをわかってる雄介。

「ありがとう。」

雄介の気持ちを考えると少し悲しくなる。

でも、私は…

「‘’ありがとう‘’…ね…。ったく…」

「んっ…」

自分の唇に柔らかいものが触れる。

雄介の顔が間近にありすぎて、はっきり見えない。

何?

いったい?

雄介の腕が私の体に触れ、引き寄せられる。

驚きながらも抵抗する気は無かった。

私は目を瞑り、雄介の腰に腕を回す。

心を許す誰かと密着すること

こんなに温かい。

温かくて心地いい。

でも、お母さんに抱っこしてもらった時とも、おにぃにおんぶされたとき時とも違う温もり。

不思議な感覚。


「おい!」

慌てて離れ、振り向くとおにぃが入り口に立っていた。

「あ、いや…これは…」

慌てる私。

そんな私を通りすぎておにぃは雄介の前に立つ。

「お前な」

おにぃが雄介を睨む。

「安心してください、能力で決着着けようなんて言いませんから。

それにもう頂いちゃいましたし。」

小さくニヤっと笑い立ち去る雄介。

去り行く後ろ姿を睨み続けるおにぃ。

雄介の姿が見えなくなってしばらくしてから、おにぃはやっと睨むのを止めた。

このときなぜか、おにぃより雄介の方が大人っぽく見えてしまった。

ため息を漏らすおにぃ。

「この、マセガキが…」

おにぃが呆れながらこっちを見た。

「ごめんなさい…」

顔が火照ってる。

「で、文化祭についてあいつはなんて?」

「あっ、その、好きにしろって…

裏のメンバーには協力するよう言っとくって言ってた。」

「そっか…

じゃあ、準備始めるか?」

「え?それって、もしかして?」

「さっき、政府の担当者から回答が有った。

‘’世界でも能力者のことが話し合われてる今、文化祭という形で知ってもらうのは有りかも知れない。前向きに検討する。‘’ってさ!」

おにぃもワクワクを止められらない。

そんな表情だった。

「やったね」

嬉しすぎておにぃに抱きつく。

「お、おい!」

驚いて照れるおにぃ。


これで、進める。

未来が良くても悪くても、これで前に進める。

やろう!




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ