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あの日、空は紫色だった  作者: アナ
15/30

~過去~公開文化祭

それは、麗衣香さんの素朴な疑問から始まった。

「ねぇここって文化祭とか無いの?」

「有るよ!

今年もすっごく楽しみ!

みんなも何しようかもう考え始めてるよ!」

奈子がウキウキしながら答えた。

毎年、クラスや部活ごとに展示、飲食物や小物の販売、ステージパフォーマンスを2日にわけて行っている。

他に大きな行事があまりない能学では、みんなが楽しみにしている行事で、このときばかりは団結力も高まる。

「なーんだ、じゃあもう能力を知ってもらう活動してたんじゃん?」

「……………なに言ってるの?」

麗衣香さんの発言に奈子がきょとんとしてしまう。

それを見た麗衣香さんもきょとんとしてしまった。

麗衣香さんの言いたいことがわかっていた私はため息をつくしかなかった。

「ここの文化祭は一般公開はしないんです。」

「え~!!それじゃ楽しくないじゃん?」

「楽しいか楽しくないかは問題じゃないんです。能力者、能力学園の存在を公開するしないが問題なんです。」

確かにせめて保護者にだけでも公開しないかという案は何度か出たことがある。

でも、保護者の中でも、能力に対する見方は様々。

自分の子供が能力者にも関わらず。

だから毎回ボツになってきた。

「ねえ、あーちゃん先輩?‘’イッパンコウカイ’‘って何?」

そりゃそうだ。

生まれた時から能力者の世界しか知らない奈子にとって聞き慣れない言葉だ。

私は奈子に説明をする。

と、いきなり立ち上がる麗衣香さん。

「もったいないよ!」

真剣で張り切っている目。

はあ~

嫌な予感しかしない。


麗衣香さんはそれから私が予想していた通りのことをし始めた。

まず、一週間に一回の全体朝礼の最後にいきなりステージに上った。

「私は今年の文化祭を一般の人たちも公開する、公開文化祭にすることを提案します!」

この大胆な行動にはさすがの雄介もただ呆れていた。

そのせいか、裏グループのメンバーも暴動には走れず。

しかし、体育館全体はざわついていた。

まず、奈子と同じように、一般公開の意味がわからない子達が聞き合う声。

それから、「そんなことできるわけないじゃん」「無理だよね」「嫌だよ」という声があちらこちらから溢れだした。

そんな雑音が麗衣香さんが再び話し出すと止んだ。

「いつか、必ず能力者の存在は知られる。」

綺麗な声だ…

「かつて能力者が共存していたという歴史。そして、迫害されたという歴史。その歴史は事実で、隠すことはできても消すことはできない。

いつか、その歴史を調べようとする人は必ず現れる。

てか、もういる。

あとはそれが発表されるかされないかということだけ。

そして今、能力者の中には自分たちの存在を知ってもらいたいと思ってる人たちがいるのはみんなも知ってると思う。みんなの中にもそう思っている人はたくさんいる。そういう人たちがいる限り、能力をずっと隠し通すなんて絶対に無理。

いつか知られる。

そしてそのいつかの時、怖がられるような知られ方になるなら、今、能力は怖いものじゃない。

こんな使い方もある。

こんな楽しいこともできる。

怖い能力があっても私たちはちゃんと使いこなせる。

いつ誰に能力が出現するかわからない。あなたもそうなるかも知れない。

そういう風に知ってもらいたい。

そういう風に伝えたい。

私はそう思う。

その方が、これから私たちは生きやすくなる。

そう…思いませんか?…」

麗衣香さんは凛々しい姿に誰もが目を奪われた。

でも、当の本人はかなり緊張していたのだろう。

前の方にいた私には麗衣香さんの肩が激しく上がり下がりするのが見えていた。

それでも、かっこいいと思った。

それ以外何も思い浮かばなかった。




このいきなり始まった演説は何年も何十年も語り継がれることになる。


ただ、そのことを本人が知ることはなかった…






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