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首をつっている浩太朗の姿が幻影のように浮かんだ。遺書を読んでみたがそこには摩利子のことは何も書かれていなかった。
「暗い森」という小説を読んだ。浩太朗と摩利子の関係が赤裸々に書いてあった。摩利子は浩太朗の最後のメッセージだと思い、これを闇に葬ることは人として許されないことだと思った。
「暗い森」を郡司家の人々と秋子のもとに送るために摩利子が考えた方法は突拍子もないものだった。架空の文芸誌を一冊だけ作りこれを浩太朗宛てに送るという方法だった。そのために黒木慶秋に助言を求めた。文芸誌に掲載された無名作家の小説に架空の作家名をつけて浩太朗の小説と一緒に掲載した。これを小さな印刷屋に持ち込んで一冊だけ印刷してもらった。
それを郵送すると摩利子は日本を脱出しヨーロッパに向かった。
一年後、
摩利子は山梨県の山荘で一人で絵をかいて暮らしていた。たまに訪ねてくるのは宅配の運転手か画商だけだった。
その日の朝あたりには霧に閉ざされていた。普段なら見えるはずの南アルプスの峰々も近くの山々も見えなかった。
摩利子は思った。
自分の人生は幻の花を求めて霧の中を彷徨っていたものだと。花は見つからないかもしれない。それでも摩利子は自分自身の花を求めて生きていくつもりだ。




