ひなた王子は今日、恋を知る。
今回の席替えで、僕はよくある窓際の一番後ろの席になった。
……いや違うな
今回も、だ
高二になってからはや3ヶ月、つまり今は七月
僕はずっとこの席だった。
羨ましいか、そうだろうそうだろう(誇らしげ)
晴れの日は窓をあけてそよ風に煽られ+日向ぼっこしながら授業を受け
雨の日はボーと窓のガラスを伝う雨や外でポツポツやらザーザーと降る雨を見ながら授業を受ける。
最近まで梅雨だったから雷がいいアクセントになっててすごく良かった。
とまあ、今回もいつもの席に座ったわけだが、今回は隣にあまり話したことのない女子が座っていた。
あまり?いや、全くかも
いつもは比較的仲の良い男子とか色々なんだが、それと学級委員長か
僕は基本日向ぼっこしててウトウトしてるから他人をあまり知らない
朝来て毎日カバンに入れているクッションを背中と背もたれの間に差し込み、だいぶ腰を机の方にずらし、ホームルームまでウトウトする。
ホームルームか始まったらぼーっとしながら先生の話を聞き、授業が始まったらノートに先生が黒板に書くものを写しながらウトウトし
授業と授業の合間の休み時間も果実系のジュースを少し煽って、またry
休み時間は友達とともに机を窓の方にずらして飯を食べたら、またry(2回目)
放課後は急に元気になり部活であるテニスをやる。
って言うルーチンを毎日繰り返してればそうなるわ
んでまあ、隣に座ったのはそんなよく知らない…女子だった…わけ……だ
「…………すぅ……すぅ……」
そしていつもの如くホームルームで安らかに眠りに落ちた。
……パシャッ
「…………(ブルブル)」
カチャ……パシャッ
パシャッ、パシャッ、パシャッ
「おい、苺乃ー
いくら席が隣になったからって遠慮なくとってんじゃねぇよ〜
没収するぞそのカメラ」
「……(パシャッ、パシャッ、パシャッ、パシャッ)」
「おい?」
「…………(スッ……ババババババババババ)」
カメラからスマホに持ち替え、連写機能で一気に撮り始めた苺乃、通称いちの(ただの略)、又は専属カメラウーマン、専カメともいう
後いちごちゃん
「「「「「……(またかー)」」」」」
クラスメイトの大半は呆れた目で苺乃を見ていた。
残りは本を読んでたり、寝てたり、苺乃を羨ましそうに見てたり、抜け出そうとして先生に捕まってたり、シャーペンで絵画を書いてたり(今日はムンクの叫び)、と俗に言う変な奴らのみ。
「「「「「先生!!俺達変な奴らじゃありません!!」」」」」
「……急にどうしたお前ら」
突然変な宣言をした変人達のうち、三人が立ち上がる
「…いえ、何故か急に──」
一人目は考える人のポーズを机の上でやり、
「──馬鹿にされたような──」
二人目が天に手を伸ばすかのようなポーズをとり
「──気がしたものですからァアアアアーーーー!!!」
三人目は両手をめいっぱい広げ高らかに叫ぶ。
「繋げるなアホども」
ゴッ、ゴッ、ゴスッ
そして3人ともクラス名簿で本気で叩かれた(角で(最後だけ強め))
そのまま本を読んでいた女子の目の前に立つ
「あれ?本を読んでただけなのに私まで巻き込まれてる?」
「ならその本を今すぐ取り上げてやろうか?」
「やめてぇえええ!!これはまだ書き上げてない新作なの!!試し読みしてるだけなの!!先生も読みたいのなら読ませてあげるからぁぁぁぁ!!!」
そう叫びながらその薄い本(意味深)を担任に差し出す女子
「いるかっ!!
十八禁だろそれは!!」
「違いますよ!!今回はBoys─Love!
即ち!!BL!!18禁ではなぁい!!」
「なっななななっ!!
なんてものを持って来てるんだこのアホ!!」
計算式1
黒髪美人+純情(噂では処ry)+モデル体型+禁断の愛を所望(重要)=『担任』
「ぼぼぼぼっしゅうだ!!あ、いや私が読みたいとかじゃないから!!違うから!!目を輝かせて渡そうとしないで!!
本当に違うの!」
「ほらほら!先生も遠慮なんかしないで没収してくださいよ!!!」
「うぅーー!!違う!違うんだからな!!うわーーん!!」
そこから逃げるように教室の扉を開け、走ろうとしたら足が引っかかりベチャッと擬音が聞こえそうな倒れ方をした。
さて、突然ですがここまでで問題です。
先ほどの計算式1を正しく作り直しなさい。
式
黒髪美人+純情(噂では処ry)+モデル体型+禁断の愛を所望(重要)=『担任』
ヒント 担任=美鳴愛夢=あめちゃん
答え
黒髪美人×純情×モデル体型×禁断のry×ドジっ娘÷5=あめちゃん
分かったかな?
わかった人はあめちゃんのフィギュアをプレゼント!(作 さっきの腐女子(私はなんでもイケルわよ!))
あめちゃんだけに飴で出来てるぞ
これを機に愛しのあめちゃんを食べしまおう!(意味深?)
「よーし、今日もあめちゃんが行っちゃったからホームルーム終わり!
今日は朝から体育だからみんな着替えてテニスコートに早く集まってね!」
そう言いながら仕切るさっきのなんでも女子、実は学級委員長
桜木紗狸彩
「いちごちゃん、かー君を起こしてくれる?」
「嫌よ!!
あたしはこの心の楽園を自らの手で壊したりなんかしない!!」
「ぅ……うぅん」
「ああっ!!?」
苺乃が騒いだことによってぐっすりだった『かー君』が起きてしまう。
「ふぁぁああ……おはよぅ…次は…なに……?」
「ふぁぁああ……おはよぅ…次は…なに……?」
うまく開かない目を人差し指で擦りクラスの誰かに問いかける。
パシャッ
何か機械音が聞こえたけど睡魔に負けて目を閉じつつある僕には瞼の裏の光景しか見えない。
「ほら、かー君、次は体育だから着替えて?」
……体育?
「…わかったぁ…」
相変わらず寝惚けた頭と身体を起こし、ブレザー、ネクタイ、ワイシャツと脱いでいく。
ババババババババババババババババババババババババババババババ
「驚きの30連写ね、いちごちゃん
それにかー君、一応私達もいるんだけど?」
「……?
何でダメなの?」
「駄目ではないわ
私の目も保養になるし色々と需要があるからね」
「……保養?需要?」
コテンと頭を傾げる『かー君』
ワイシャツのボタンはすべて外れ、Tシャツが見えている
そのTシャツの真ん中には『ふにぁあ』とデカデカと描かれていた
体育がある日はいつも変わるこのTシャツが何かと楽しみにしている人も決して少なくないだろう
「でもやっぱり駄目よ、かー君の安売りは勿体ないわ」
「……相変わらずさりあの言うことは全然わかんないなぁ」
「着替えるのなら空き教室に行きなさい?」
「わかったぁ……」
さりあの言うことに返事をして、そのまま廊下に出ようと……
ガシッ
「何処に行くつもり?」
「えっと………体育館?」
「……はぁ、まだ着替えてないよ?」
「流石に僕もそこまで寝ぼけてないよ…?
さっき着替えたじゃないかぁ
ほら……」
「ほら?」
「あれぇ?着替えてない……」
「あーもう!
皆は一旦出なさい!
かー君を着替えさせるから!
ほらっ!!いちごちゃんも!!
というか!だれかいちごちゃんを連れていきなさい!!」
「っ!!?離してぇ!!これから!これからじゃないですかぁ!!」
愛用カメラを持っていたこともあって一瞬で捕まった苺乃は暴れながらもずるずると廊下の方に連れてかれペイっとされたのだった。
「ほらっ!そのワイシャツもさっさと脱ぎなさい!」
言葉遣いは多少荒いがその実、とても優しく脱がしていく。
そして、その脱がしたワイシャツを丁寧に畳むと次はそのTシャツに手をかけていく
僕は一切の抵抗はせずなすがままだ
だが、Tシャツが胴体を抜け後は手だけとなった時にTシャツに手が引っかかり、一切の力を抜いている僕は慣性のまま前のめりに倒れた。
さりあと一緒に
「キャッ!!」
咄嗟にさりあの体に手を回し僕達の身体ごと反転させた。
要は猫の逆バージョンである
「うぐっ」
だが、受け身も取れない状態なため背中から地面に倒れ、ちょっと強めの衝撃が僕を襲う。
「っぅ〜〜!!」
痛みで寝惚けていた頭も冴えてきた。
「あぅ…だ、大丈夫?さりあ?」
「……(ボソッ)」
「…へ?」
まさか何処かを打ったのか
「だ…大丈夫じゃないって…
どこ?どこ打ったの?」
ペタペタとさりあの頭や肩、腕や手などを触れていく、が、頭では無いようだ
でも安心は出来ない。
僕のせいでさりあが怪我をしたかもしれないのだ。
僕のせいで
「……そんな格好で、そんなかっこよく助けちゃってさ……
しかも、ちゃんと聞き取っちゃったりしてさ
耳が遠くない系の主人公め……」
「……ん?さりあ?
やっぱり頭とかぶつけた……かな……?」
さっきより言ってる意味がわからない
まさか打ちどころが悪かったのか──
「ねぇ、かー君」
「え?」
「私を落とした責任、とってもらうからね?」
「…………え?」
やはり、彼女の打ちどころは最悪だったようだ。
後頭部か、それとも横か、いや、前でも危険だったな。
「責任って……?
治るまで面倒を見ろってこと?
僕が悪いんだから、そんなの当たりま──」
「違うよ」
ち・が・う
……おう?
「えっと………え?どういう事?」
「いや、そろそろかー君を私のモノにしようかなって…ね」
「……ごめん、僕の頭では君が訂正してくれた言葉すら分からなかった」
モノ?
者?
MONO?
モノ……もの?
物?
「えっと……僕を今日からさりあの所有物的にする的な意味?」
「私がかー君を所有する的な権利を主張する的な意味」
ダメだ、もう手遅れだ
「…俺は誰かに所有されるってこと…だよね?
一応俺も人間だから人権だけは保証してほしいなぁ」
「……かー君もズレてるね
まあ、私が回りくどい言い方をしたのが悪いのかな」
さっきからさりあが自己完結するから話についていけてない
「んじゃあ、ちゃんと言うね
かー君、私を君の彼女にしてくれない──」
バァアアアアァァァァン!!!!
そんな音が俺ら以外誰もいない教室に響いた。
決して俺の心の音とかではない
いや、漏れてたら下手したらなってたかもしれないけど。
どっちにしろ半端なくびっくりした。
だが、その音(物理的)はどうやら教室の後ろの扉が思いっきり開かれた音のようだ。
もはや扉外れてる
「何あたしの被写体を独占しようとしてんじゃぁああああ!!!」
その怒号はどうやら僕に向けられてる訳では無いようで──
──ん?
かー様?……だれ?
「あっ!ちょ、いちごちゃん!?」
そう、目の前で扉を蹴破った(蹴破ってない)のは今日、初めて隣の席になった女の子だった。どうやらいちごちゃんと言うらしい
「委員長でもそれは絶対に許さないんだから!!!」
「……これは私とかー君の問題なのだけど?」
「ダメよ!!かー様に恋愛疑惑なんてかけられたら炎上しちゃうじゃない!!!」
恋愛疑惑?炎上?
「だったらかー君は誰とも恋愛をしてはいけないっていうの!?」
「いいに決まってる!!むしろ推奨!!」
「なら──」
「でも今じゃない
それに、羨ましい!|」
「そっちがメインか」
うーん、頭の中がピヨってるみたいだ。
えっとさっきのさりあのは──
──あれ?あれってよく言う所の告白とか言うやつで……は?
つまり今話してる事の意味が──
私とかー君の問題=告白
恋愛疑惑なんてかけられたら炎上=……?(わかんなかった)
それに……羨ましい=告白に対して?
……
…………
「ふぇっ?」
認識した途端に顔が異常に熱くなる。
彼はウブであった。
まあ、完全に恋愛に無縁で過ごしてきたかー君こと奏陽はこの時初めて他人からの好意を目の当たりにしたのだったから仕方が無いっちゃ仕方がないのかもしれない。
いや、普通は有り得ないけど。
奏陽も高校生、それなりに男の子としての感情が芽生えるはず──
──だった。
お日様の光に当たる事を至高の時間と捉えさえしなければ。
ポカポカ暖かい日差しに包まれ、うとうとしてたらいつの間にか1年が過ぎ、2年目もはや三ヶ月が過ぎた。
そう、かー君には高校生活というものはそのくらいの感覚でしかなかったのだ。
でもそれは今、音を立てて崩れてきて──
「…いぅ……うぇっ…ささささりあっ!!?」
「あ、かー君がショートしてる。」
「チャンス!!」
パシャッ!
「さっ!さり…さりあ!?
さささっきの!さっきのって!!?」
「ん?もちろん告白だけど?
大好きだよ、かー君」
「あたし達のかー様を穢すんじゃない!!
自然体!いや、もはやかー様こそ自然!!全て!!」
「ちょっ!いちごちゃん!貴方がいると告白も薄くなっちゃうから先に行っててくれないかな!!」
「こく……はく……僕に…?」
「嫌よ!!いつなん時チャンスがあるかわからないし貴方が独り占めするのがダメ!!」
「じゃあ、いちごちゃんが独り占めしたいの?」
「……………………えっ?」
「考えたよね?ものすごーく考えたよね?」
「あたしが?……かー様を独り占め?
そ、そんなことが、もし本当にあったら……
そ、そんなの!て、天国ですぅぅうううぅぅん!!」
ビクビクとアレな顔をしながら身体を震えさせる変態。
一体何を考えたのか。恐らくそれは気にしてはいけない。
そして、そのまま彼女は天へと召されていった。
「あの子はもう手遅れね。
私と同類な気がしないでもないけど」
至極冷静で、おかしいのかここにもいるの訳だが。
「とまあ、いちごちゃんが退場したところで……」
「きゅぅ……」
オーバーヒートして、退場しているのは1人では無かったのだが!!
「あー、かー君落ちちゃった。
でもその顔も可愛いなぁ……
食べちゃいたいなぁ…」
愛おしそうな目で奏陽を見つめ……見つめ?
さりあは音を立てない。
ただ、奏陽との頭と頭との距離は徐々に短いものになってゆく──
「私はかー君を逃がさないからね?」
そして──
お読みくださった皆様。お疲れ様でした。
けっして長かった訳では無いと思いますがただ、如何せん文章力が残念な作者ですので;;
これを書いたのは気分転換のつもりだったんですが、結構頑張ってしまったつもりのクロ課長でございます。
初めて日常ラブコメ?というものを書いたのですが、どうだったでしょうか?
面白かった、や、楽しかった。などの好印象であったのならとても嬉しいです。
長々と失礼しました。
それでは、この短編『ひなた王子は今日、恋を知る』を最後までお読みくださってありがとうございました。