3-5 魔族の特徴
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
ギーツという男の雰囲気にリアは戸惑っていた。一言で言って、魔族らしくないのだ。
リアの考える魔族の特徴に、いびつな印象というものがあった。あくまでも個人的な把握の仕方だったが、そう間違ってはいないつもりだ。自らの能力への絶対的なまでの依拠と自負の念は肥大した印象を生み、強大過ぎる精神は世界との出会いの中で何らかの欠落を生じて欠けた印象を生む。ドロスの暴君然とした態度は肥大の実例として分かりやすかったし、リアの知るレガートには肥大と欠落の両方があった。ギーツにはそれらの歪みが感じられなかった。感じられないがゆえに違和感を拭えずにいた。
あたしのパートナーも魔族らしくないのは同じだけど…。
リアは隣に座るアルを流し見た。
「?」
気配に気づいたアルが顔を向けた。リアは取り合わずにギーツに視線を戻した。とりあえず分かったことは、ギーツがアルとドロスとの悶着に居合わせたという事実だ。
「それで? 話がしたかったって言ったわね? どういったご用件?」
リアの口調は変わらず硬い。棘があると言ってよかった。
ギーツが笑った。
「警戒感がバリバリだな。…分かるぜ。確かに用もないのに近づいてくるやつにロクなのはいない」
「自分で言っちゃうんだ?」
「言わないとおまえさんには通じないだろ? 通じたところで、まずはおれのことを知ってくれ」
「こっちは別に知りたくないけど」
「まあ、そう言いなさんな。貴重な時間を睨み合いで潰すよりはいい」