3-4 ナヤカ・エジェイル
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
加えて、記憶にギーツの名があった。アルとの儀式が遅れたのは前のペアが血で祭壇を汚したためだった。その際、興味本位で文礼員に尋ねて教えてもらっていた。パートナーの女性種はナヤカ・エジェイルだ。こちらも同じく文礼員に聞かされていた。ナヤカの名を耳にした時、奇妙な違和感を感じたのも覚えている。何かがリアの心を刺激し、落ち着かなくさせた。それは今も同じだった。
右隣にいるナヤカをリアは一瞥した。
ナヤカはアルよりも頭一つ低い背丈をしていた。こちらも求法院の制服を着ているのは同じだ。澄んだ色合いの銀の髪は顔ほどの長さで、先端で縮れて柔らかく頭を包んでいた。額は中央にわずかに隙間があるだけでほとんど隠れている。時折覗く耳には小さな丸い白殻玉のピアスがあった。白色種の肌は滑らかで、こちらも透き通るような白さだ。薄い紫色の瞳には感情の色が無く、そのため、ナヤカには氷かガラスのような無機質な美しさと冷たい近寄りがたさが備わっていた。出合ってからずっとギーツの横に寄り添い、一度も口を開いていない。
「唐突に話しかけて済まない」
ギーツが、アルに視線を振りながら言った。
「どうしても話がしたかったんだ。宣始式の後で声をかけようかとも思ったんだが、二人ばかり先客がいただろ? だから、遠慮した。いわくのある相手のようだったし、疎まれるのは予想できたんでね。間を置かせてもらった」
リアが何も言わずにいるとギーツが言った。
「どうやら、ドロスとは和解したと見受けたが、それでいいのかな?」
「結構よ」
硬い口調をギーツは笑って受け止めた。