3-1 集う胞奇子と調制士
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
アルとリアは前庭に立ち、談笑する胞奇子と調制士たちを眺めていた。訓練を終え、遅めの昼食を食べた後だった。
求法院の敷地は広く、多くのスペースがあった。中でも男性種、女性種それぞれの宿泊棟の前に広がる庭は一際大きく、植栽を幾何学模様にしつらえた庭園となっていた。前庭には中庭のような花壇や池はなく、丸屋根を備え、下にテーブルと椅子が付属した小さな建物が植栽の合間にあった。丸屋根の建物は庭園のそこかしこにある。
求法院は建物の近くに木のない構造をしていた。地面は短く葉を茂らせた植物でできた天然のカーペットだ。二人の眺める胞奇子や調制士たちは地面に腰を下ろして思い思いの格好でくつろぐか、丸屋根の下で椅子に座っていた。今日の日差しは柔らかい。
胞奇子と調制士の集まりは様々だった。ペアが隣り合って円を作っているグループもあれば、同性種同士が多数集まって話をしているグループもある。二組のペアが丸屋根の建物に座っている姿もあった。
不思議なもので、魔王の座をめぐる競争相手であるにもかかわらず争う様子はなかった。一年後には蹴落とし合うことになるのを互いに承知しながら彼らも彼女らも寄り集まっている。人には元々群れを作る習性がある上に、魔王を目指す不安とプレッシャーが仲間を求めさせるのだ。同じ境遇の相手を見出すことでつかの間の平安を得て、試練によってふるい落とされる過酷な現実を忘れる。それは、直視しなければならないものを見ないことでやり過ごすある種の自己欺瞞だ、とリアは思っていた。