2-19 新しい経験
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
「もっと大きくしないとヴァン・キ・ラーゴには通じないわよ」
リアの指摘にアルが困惑顔で振り返った。
「これ以上のは作ったことがないよ。それに、穿刺体とはいえ気が進まない」
「そいつは擬似生命体よ。あたしにダメージが跳ね返るなんてこともないから、遠慮なくおやんなさい」
「でも」
「いいから、やるの!」
「…うん」
ヴァン・キ・ラーゴに目を戻し、アルが剣先を下にして構え直した。かすかな呼気とともに剣が伸び、長剣と呼べる長さになった。
「おめでとう。新しい経験を得たわね。これからどんどん積み重ねてもらうから」
リアの笑みと同時にヴァン・キ・ラーゴが動いた。アルに向かって歩を進める様子をリアは囲いの外から眺めた。
訓練は実戦ではない。だが、模擬戦であろうとも強い相手を倒した経験は自信に変わる。自信が心の産物であり、経験に裏打ちされるものである以上実際にやらせるのが最上だった。
アルが迫るヴァン・キ・ラーゴを見ながら後ずさりしている。叱咤した。
「気合が足りない! 集中しないと怪我するだけじゃ済まないわよっ!」
ヴァン・キ・ラーゴがスピードを上げた。拳を振り上げ、アルに向けて放つ。横滑りして避けたアルは側面からヴァン・キ・ラーゴに剣を振るった。ヴァン・キ・ラーゴは片足を軸にして攻撃を避け、下げた足を戻して蹴りを見舞った。アルは後方にステップして蹴りを回避しながら距離を取った。