2-12 必要なのは自分を信じること
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
「でも、この力って魔族らしくないよね。さっき説明した時は言わなかったけど、村にいた時はよくからかわれたんだ。魔族じゃないって言われたこともある」
リアはアルの反応を理解した。周囲の人間の振る舞いがアルの自信の成長を妨げていた。異物を排除するのは他の生き物だけではない。魔族も同じだ。リアは自信の生育が必要だと思い、アルに真摯な眼差しを向けた。
「アル、あなたはもっと自信を持つ必要があるわ。過剰な自信は傲慢に変わって己を滅ぼす。だけど、自分を信じられない者は同じように己を滅ぼすのよ。今のあなたは後者になりかねない。あなたが魔王になるために最初にやるべきことは自分を信じることよ」
アルが心の葛藤を示すように表情を変えた。
「あなたは自分が持っているものを知らない。表面上の出来事に捉われて本質が見えていない。それはあなたがいた村の人間も同じ。いい? ここにはもうあなたをからかった人間はいない。あなたを追い出したような人間たちなんて忘れてしまいなさい。調制士であるあたしの言葉を聞いていればそれでいい。あたしがあなたの力の本質を示して鍛えてあげる。それがあたしの仕事でもある」
リアは言葉を切るとヴァン・キ・ラーゴに目をやった。