2-11 行き過ぎた配慮は身を滅ぼす
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
「攻撃はしなかったの?」
「そんなことしないよ」
「どうして? 油断すれば魔族といえど命を落とす凶暴な生き物たちよ?」
「傷つけたくなかったんだ。食べるために殺すのは仕方がない。でも、それ以外の殺生はできるだけしたくないから」
吐息を一つして、リアはパートナーの顔を見つめた。
胸の裡で危惧と驚嘆が入り混じった。他者への配慮は余裕のある者にしかできない。魔族といえど好ましい資質でもある。しかし、行き過ぎた配慮は身を滅ぼす。森の生物はまだしも、害意を持って近づく相手を打ち倒さずに前に進めるほど王選びは甘くない。
危惧の思いを抑えることにリアは努めた。アルとの関係はこれからだ。
「凄いわね。あなたが森をどう抜けたのか、見てみたかったわ」
「…そう、かな」
賛嘆への反応は思いのほか鈍かった。
「どうしたの?」
リアが問うとアルが真剣な眼差しを向けた。
「リアは本当にぼくの力を凄いと思う?」
「もちろんよ。単なるお世辞はあたしは言わないわ」
納得したかのように頷くとアルが礼を言った。




