2-9 追い出されたのはいいこと
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
村の人間は、これほどの可能性を秘めた力をただ目につきやすいという理由でかがり火の代わりに使ったのだ。呆れるのと同時にリアは思った。
アルを追い出した村預かりは、この世界に対してはいいことをしたのかもしれない。
村預かりが王選びに送り出したからこそ、アルは今、ここにいるのだ。活かされることなく、辺境で朽ち果てていたかもしれない貴重な才能がリアの手の届くところにあった。
しかし、リアは思いを口にはしなかった。故郷を追われて心に傷を負った者に浴びせるにはあまりに酷な台詞だった。率直なリアにもその程度の配慮はあった。指を立てて片手を挙げると話題を転じた。
「大体のことは分かったわ。もう一つ訊いておきたいのは、森の試練についてよ。アルはどうやって森を抜けたの?」
「自分の周りに光を張り巡らせて駆け抜けたんだ。地面から浮いて移動するから、結構早いよ」
リアは感嘆の声をあげた。素直に感心していた。戦闘においてスピードはメリットだ。
「ルートは?」
「北に上陸して南下したけど?」
「! まさか、軍団殺し!?」
「軍団殺しって?」
「北ルートの別名よ。谷や山がいくつもあったでしょ?」
「う、うん」
リアの勢いに押され、アルは戸惑い気味に頷いた。