2-5 訓練服
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
「もう、いいよ」
感慨に耽っていると声がかかった。
まるで、子どものようだ。
ほほえましくなって、リアは微笑った。
「待ちくたびれたわよ」
憎まれ口になるのは性分だ。
「だって、初めて着るから何だか硬くって。体にぴったりしてて着づらいし」
「別に責めてるわけじゃないわ。いちいち気にしないで」
アルのあげる不服そうな声を聞きながら、リアはドアを開けて中に入った。
ドアを締めるとすぐに鍵をかけた。進入への警戒ではなく、一応の用心だ。フィールドを展開するまでに相転儀を使うような事態が起こると外部に被害が出る。中では訓練服に着替えたアルが待っていた。
訓練用の服は制服同様、胞奇子一人一人に合わせて仕立てたもので、上下一体になった立ち襟のスーツだった。手と足には密封性の高いグローブとブーツを身につける。色は落ち着いたブルーの生地にオレンジの筋がアクセントとして入っている。両の肩から垂直に降りた二本の太い筋は途中で角度を変えて腹部で交わり、同じ角度で垂直に戻るとボトムの裾まで達していた。特殊な糸を織り込んだ筋によって急所である心臓とみぞおちを守る造りだ。背中と、腕全体の横部分
に同じ要領でアクセントが施してある。求法院で支給される制服は見た目よりもずっと動きやすく、活動的だ。それでもなお、激しい動きとなると訓練服の方がより実際的だった。